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第三十五章 広美、警察学校の生徒を叱る

数日後、非番の広美は、「芳江さん、先日は連絡頂きありがとうございました。おかげで助かったわ。」と御礼した。

芳江は、「週刊誌見たわ。最近発生していた空き巣だったのね。世間を騒がせていた空き巣が逮捕されたと週刊誌だけではなく、新聞やテレビでも報道されているわね。これで私達も安心できるわ。」とさすが京都府警の刑事だと感心していた。

広美は、「芳江さんから連絡がなければ不意をつかれて大恥掻くところだったわ。でもよく気付いたわね。」と感謝していた。

芳江は、「あの時は、広美さんと同じ階に住む友達の所に行こうとして階段で行くと、その事に気付いて慌てて階段室に隠れて電話したのよ。今考えるとエレベーターでなくて良かったわ。エレベーターだったら音がするから犯人に気付かれ襲われていたかもしれないわ。」とその時の事を思い出してゾッとしていた。

    **********

数日後、マンションの理事長が広美を訪ねてきた。

「先日、塩崎芳江さんから怖い思いをしたと連絡頂きました。どういう事なのか塩崎さんから事情を聞いて、理事会で話し合う価値があると判断しました。塩崎さんにも理事会に参加して頂いて話し合いました。その結果、このマンションの警備を厳重にする事で一致しました。その役員を、京都府警の現役刑事である高木さんにお願いしたいのですがどうでしょうか?」と依頼された。

広美は、「私は事件が発生すれば数日家を開ける事もあります。また、実家で母の手伝いもしています。肝心な時に不在の可能性もあります。第一、警備だったら警備会社に依頼すれば問題ないと思いますがどうでしょうか?」と提案した。

理事長は、「経費がかかるでしょう?決まった時間に巡回するだけで違うと思いますよ。」と反論した。

広美は、「制服の警備員が巡回すれば、それだけでここは警備されているとわかり意味はあるでしょうが、私服の住民が回っても散歩だと思われて何もならないわよ。」と消極的でした。

理事長は、「だったら、巡回中と書いた腕章をして巡回すればどうですか?」とあとに引きませんでした。

広美は、「だから、腕章をしても何も変わらないわよ。制服はプロで常駐しているイメージがあり、住民は素人で巡回時だけだとみられるのよ。」と警備は警備会社に任すべきだと主張した。

理事長は、「だから、経費が・・・」と警備はただではないと主張しようとした。

広美は、「だったら、経費がかからないようにすればいいじゃないの。」とそこから離れるように促した。

理事長が、「そんな事できないだろう。人に頼めば人件費が発生するだろう。」と広美の考えている事が理解できない様子でした。

広美は、「私ならできるわよ。いや、多分できると思います。少し時間を下さい。私が役員に推薦されたのだから私が決めてもいいのよね。」と強気にでた。

理事長は、「そうですか。期待しています。」と広美を信じて帰った。

    **********

理事長が帰ったあとで隆は、「話は聞いたぞ。どうするのだ?どこかと契約すれば経費が発生するだろう。」と広美の考えている事が隆も理解できない様子でした。

広美は、「話を聞いていたんじゃないの?プロか素人かではなく、制服かどうかよ。制服を着ていればプロに見えるのよ。」とヒントを与えた。

隆は、「それは、住民にどこかの制服を着用させて巡回するのか?」とまだ理解できていませんでした。

広美は、「そんな事をしたら、住民に負担がかかるでしょう。警察学校と提携して、このマンションで警備実習するのよ。勿論、それだけだと巡回しない日もでてくるから、京都府警の新人警察官の教育にもこのマンションを使うわ。毎日警備しなくても警備している日があれば、このマンションは警備されていると思うでしょう。それで外部から侵入しようとする人は少なくなると思うわよ。」と広美の考えを説明した。

警察学校や京都府警と、以前広美が所属していた下鴨警察署とも打ち合わせした上で、理事会で広美が説明して承認された。

夜間のみ、パーティールームなどの部屋は使用されてない為に、仮眠室として使用する事になり、来月から実施される事になった。

    **********

数ヵ月後、住民から依頼されてマンションのホールで広美が踊りを披露する事になった。

広美は警察学校に連絡して、イベント警備実習の提案をして、「当日、私が部下と警備の様子を見て、現場で役に立つかどうか確認させて下さい。」と依頼した。

警察学校では、夜間で勤務時間外なので強制はできませんでした。

生徒達は、捜査一課の主任刑事に見てもらえると、刑事志望の数名が顔と名前を覚えて貰おうと立候補した。

マンションの警備は警備実習だと住民から漏れて、スリの耳に入った。

そのスリは仲間のスリと、「警備員は警備経験がない実習生だ。警備されているので住民は油断している。チャンスだ。」と当日スリを働く事にした。

当日、警察学校の教官と後藤刑事が出入り口付近で待機して、警察学校の生徒達は、イベント会場で警備していた。

警備実習中、「京都府警捜査一課の主任刑事はどこから監視しているんだ?女性刑事だとの情報があったが、どこにいるんだ?出入り口付近で教官といる女性刑事は主任刑事にしては若いし、どこにもいないな。」と主任刑事を捜していた。

「事件が発生して、若い刑事に任せて今日は来てないんじゃないか。出入り口からだと俺達の背中しか見えない。俺達も芸者の踊りを鑑賞してもばれないだろう。少なくとも、前から監視している人はいないから大丈夫だ。今踊っている芸者は人気No.1の売れ子芸者らしいぞ。」とうかれていた。

広美が踊りを披露中スリに気付いて、袖で口を隠して、袖口に仕込んでいる無線で後藤刑事に説明してスリの身柄確保を指示した。

後藤刑事が無線で、「了解!」と返答している様子を見て教官は、「何かあったのですか?」と心配そうでした。

後藤刑事は、「主任から、スリ発見の連絡がありました。警察学校の生徒さんは、どこを見ていたのかと、使い物にならないと憤慨していたわよ。」と説明した。

    **********

イベント会場から出て行こうとしていた男性に、後藤刑事が警察手帳を提示し、「京都府警の後藤です。ズボンの左ポケットを調べさせて下さい。」と睨んだ。

男が抵抗した為に後藤刑事は、「公務執行妨害の現行犯で逮捕します。」と手錠をかけて、手すりに固定し、教官と協力してズボンの左ポケットから、財布を発見した。

後藤刑事は、広美から聞いた被害者に確認して、被害者の財布である事を確認した。

近くにいた女性が、慌てて逃げ出そうとした為に、後藤刑事が女性の手首を掴み、「逃げられると思ったら大間違いよ。」と睨んだ。

女性は、「スリは捕まったのでしょう?私は関係ないわよ。」と逃げようとしていた。

後藤刑事は、「あなたがスリとって、彼に渡したのでしょう?財布の指紋を調べれば解るわよ。」と後藤刑事から連絡を受けた捜査四課と鑑識に事情を説明して財布を渡した。

    **********

イベント終了後生徒達は、「さすが経験のある刑事ですね。私は被害者のすぐ後ろにいましたが、全く気付きませんでした。」と感動していた。

後藤刑事は、「私の立っていた場所からは見えませんよ。主任からの無線連絡で気付きました。」と自分が気付いたのではないと説明した。

警察学校の生徒たちは小声で、「おい、今日、主任刑事は来ていないと言ったのは誰だ?どこかにいたんじゃないか。」とおろおろしていた。

教官は、「私も電話では話をした事はありますが面識はありません。捜査一課の高木主任は、泣く子も黙る鬼軍曹として犯罪者から恐れられています。どこを見て警備しているのかと憤慨していたらしいので、今年は捜査一課への配属は難しいかもしれません。後藤刑事、高木主任はどこですか?」と配属を依頼しようとして捜していた。

後藤刑事は、「主任に頼んでも無理だと思いますよ。仕事中に芸者に見惚れているようでは使い物にならないと憤慨していましたから。」と教官に諦めるように促した。

教官は、「お前ら、芸者に見惚れていたのか!」と怒りだした。

生徒の上西修司巡査は焦って、「決してそんな事はありません。」とばれるはずはないと思っていた。

そこへ広美がきて、「御苦労さま。皆さんも芸者の踊りには興味があるのですか?私ばかり見ていましたが・・・」と笑っていた。

教官は、「お前ら、やはり芸者に見惚れていたのか!」と怒っていた。

上西巡査は、ばれたのでやけくそになり、「ばれたか。鶴千代さん、タイミングが悪いですよ。芸者の踊りではなく鶴千代さんに見惚れていたのですよ。握手・・・」と喜びながら出した手を、後藤刑事がはたいた。

後藤刑事は、「これ以上、主任を怒らせないで!」と睨んだ。

上西巡査は、「えっ!?主任さんがどこかで見ているのですか?」とキョロキョロしていた。

上西巡査は、「高木主任は女性ですよね?どこにもいないじゃないですか。」と脅かしやがってとホッとして笑顔になった。

広美は、そんな上西巡査を見てプッツンと切れて、「私と握手したいのですか?」と手を出すと、喜びながら手を出した上西巡査を投げて、警察手帳を提示して、「捜査一課の高木です。いったい何考えているの!」と睨んだ。

後藤刑事は、「これ以上、主任を怒らせないでと忠告したでしょう。女性は私以外には芸者しかいないと気付かなかったの?」と呆れていた。

上西巡査は慌てて起き上がり、「申し訳ございませんでした。」と敬礼して謝ったが後の祭りでした。

    **********

広美は、「あなた方のように、仕事中に芸者に見惚れている警察官に仕事は任せられないわね。教官も教官よ。どのような教育をされているのですか?」と教官を睨んで帰った。

後藤刑事も、「人気No.1の売れっ子芸者と、泣く子も黙る鬼軍曹は同一人物です。名誉挽回しないと、このままでは都合が悪いのではないすか。」と忠告して帰った。

教官は去って行く後藤刑事の背後から、「何故都合が悪いのですか?」と確認した。

後藤刑事は、「主任は一課長秘書も兼任しています。一課長に対する発言力は強く、一課長も主任を全面的に信頼しています。今後、捜査一課への配属は無理かもしれませんね。」と説明した。

教官は後藤刑事を追い掛けて、「なんとか主任を説得して頂けませんか?」と依頼した。

後藤刑事は、「捜査一課は主に殺人事件を担当します。芸者でなくても、近くにいる美人女性に見惚れていれば、殺人犯に殺されます。刑事が殺されれば無理な捜査をさせたとして、主任だけではなく一課長の責任問題にも発展します。“仕事中に芸者に見惚れてスリを見落とす警察官なんて冗談じゃないわ。”と憤慨していたわよ。説得するのではなく、仕事上で名誉挽回しないと無理です。これ以上主任を怒らせないで!」と教官を睨んで、帰った。


次回投稿予定日は、10月16日を予定しています。

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