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097 偶数の日ってことは……


 夕暮れが建物の間からチラつくの鬱陶しく感じながらの帰路。

 家にお邪魔した時より身軽になった僕は紙袋を抱えつつ家に帰る道を探していた。

 隣を歩いているのは人通りが少ないからと外に出てきたエリル先生。小さな歩幅で長い黒髪を揺らしながら鼻歌を歌っている姿はなんとも可愛らしい。

 そのまま歌っていて欲しいが、エリルとの情報整理はしておきたい。

 

「727番のこと、エリルはどう思う?」


「ふっふふ~ん……ふん?」


 あまり外で転生者、という単語は使いたくないから濁して伝える。

 ピタリと鼻歌を辞め、そうですね~、と腕を組んで数秒黙り込み……。


「分からないです!」


「あら、正直さん」


 そーんな満面の笑みで言われたら突っ込むこともできる訳もなく。


「見てみない分には判断できないもんなあ……そりゃそうだ」


「ですが、ますたーがお話している間、闘技場の事に関して調べてたらそれに似たようなことが分かりましたよ」


「いつの間に……。エリル大先生だ」


「私の仕事なので!!!」


 えっへんと胸を張ったのを見て、おだてるように手をぱちぱちとするとさらに上機嫌になってくれた。

 

「それで、何がわかったの?」


「はい。転生者は殺される……というのはあながち間違いではなかったのですが、そこにどうやら『転生者の可能性がある者』という段階があるみたいなんです」


 ピシッと人差し指を立てて、ズイっと近づいてきた。


「捕まえたからすぐに殺す、とかじゃないってこと?」


「その通りです。どうやら、転生者の判断基準みたいなのがあるようで「あいつ転生者だ! 殺してやる!」と最初からいかないようです」


 なるほど。ワンクッションを置かれるのか。


「その段階は全部で4段階で、『監視』と『奴隷』と『監禁』と『極刑』があるようで、『監禁』というのはほとんど『極刑』待ちの人達ですね。上二つは正直、転生者確定で殺されちゃいます。で、その727番の人は2段階目の『奴隷』ですね」


 ということは、727番の少女というのは『転生者』疑いの人ってことか。

 どういう背景があってされたのか分からないけど、なんらかの『転生者』の事が聞けるかもしれない。

 顎に手を当てて考えているとエリルの言葉は続いた。


「それで気を付けないといけないんですけど、その奴隷の子は次買われないと1つ段階が上がって『監禁』されるみたいなんです」


 まぁ、監禁と言っても死刑の待機列みたいなものですケド。

 エリルが立てた人差し指をへなへなと撓らせるのを見て。


「……なんで?」


「『転生者』として認定されるのか、分からないですけど……噂によると、29連勝をする実力は転生者だから~という噂があるみたいですね」


 予想が的中した。

 やはり普通では考えられないような実力を持っているから、とかそんな感じなのか。


「でも、そんな強い子なら引く手数多(あまた)だと思うんだけど……何か理由があるのかな」


「そういう人の関わりまでは分からないです。でも、この来月末で買われないともう会うことはできないのは確かだと」


「なるほど、月末が勝負か……」


 月末に間に合わなかったら『転生者』と疑われている子が死んでしまう……。

 つまりは……727番が転生者であっても転生者ではなくとも殺されてしまうということだ。


「ほんっと、先輩達いい加減にしてくださいよ……」


 転生者が作り上げてしまった印象のせいで、無実かもしれない人が死んでしまう。

 最悪だ。それだけは絶対に避けなければならない。


「……その子のこと、どうにかして助けられないかな」


「ますたーならそういうと思ってました!」


「ズルとかそういうのじゃなくて、ちゃんとした方法で助けるのってオークションで買うってこと以外にないのかな……?」


「そうですねぇ~……それ以外は無いー……ですかね」


 お金か。それも人身売買をしているようなところにお金を払うのか。

 表情が曇る。裏側の組織にお金を流すなんて、正直――……。

 だけど、これは体裁など考えているような問題ではない。


「そうと決まれば絶対お金が足りないから来月末までの間にお金を稼ぐことに集中しよう」


「へへへ、応援してますからね!!」


 とりあえず、月末までの予定は決まったな。

 貯まったお金で727番を買う。足りなかったら、それを元手にして闘技場で増やす。限られた期間ってことになるから、どうせ元手にして増やすしかないんだろうなぁ。

 月末かぁ…………月末、月末?

 

「……月末って、もしかして訓練日じゃ……?」


「今日が月の真ん中で、今月末が確か30で……15日はなれてるってことは」


 エリルが顎に手をやって、ふぅむと脳内カレンダーをパラパラと捲って。


「明日が訓練で、そのまま14日で偶数の日は……あ、訓練日ですね」


「あー……突然不安になってきた」


 ティナ先生の小悪魔的な笑みが思い出して、ふらふらと壁に体をぶつけた。

 まずはそこから話をしないといけないのかあ……。


「あの鬼教官さんってそういう融通ってきくのかな?」 


 転生者の情報が手に入りそうになって浮かれていたのに、心配事が余計に増えた気がする。

 

「あ、ケトスにも色々話しておかないといけないのか……」


「ますたー大忙しですね!」


「大忙しですよぉ、暇よかいいけど」

 

 どうなることやら。

 まぁ、でも、これが糸口になるんだったら忙しさも大歓迎だ。

 

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