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【HIDE LEVELING】転生者は咎人だと言われました〜転生者ってバレたら殺されるらしいので、実力を隠しながらレベルアップしていきます〜  作者: 久遠ノト
2−3 少年立志編──大人たちは机で語る

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094 抽選会


 それから僕とエリルは商店街を歩き回った。

 色んなお店を覗いていると、なんとなく品物の価格が分かったり、人と会話して今何がホットニュースなのかを聞いて行った。

 だけど、相変わらず転生者の情報は一抹もない。

 

「ますたー、持てますか?」


「ん……ちょっときついかも」


 聞き込み調査をする際に立ち話をしていると、この世界のサービス精神の多さに触れた。

「そこの少年、ちゃんと食べてるかぁ!? これ、やるよ!」と言って商品をくれた精肉店のおじさん。

「お遣いができてえらいねぇ、応援してるからねぇ」と野菜のおばさん。

 お店を覗く度に、ほとんどの店の売り込みの人から形が少し崩れたもの、普通の品物をいくつも貰った。もう僕の両手は品物でいっぱいだ。


「でも、エリルが持ったら宙に袋が浮くから、僕がなんとかがんばらないとね……」


「少し支えるくらいならできますが……」


「じゃあ、不思議がられない程度にお願いするよ」

 

 底から支えてもらい、二人でよいしょよいしょと商店街を突っ切っていく。


 もっと色んなところを覗いて色んな人の話を聞こうと思っていたのだけど……角底袋(かみぶくろ)が重なって前がほとんだ見えない。

 重たい……。

 少しでもバランスを崩したら貰ったのがゴロゴロと転げてどこかに行きそうだ。

 商品をくれる時に毎回言われるのが「おつかいえらいねぇ」って言葉。いっその事子どもらしく甘えてみた方がいいんだろうか? 大人びた子どもって腹立つだけだしな。

 なーんて思いながら、ふと周りを見てみる。


「……これは、そろそろ切り上げかな」


 時間はお昼程、人がだんだんと多くなってきたのを感じる。

 一旦、この店が終わったら家に帰ってこの紙袋たちを家に置きに行こうか。


「皆さま、今日はこの商店街で2000ウォル以上お買い上げのお客様に限り、1度限りの抽選会を致します~!!」


 お店に入ろうとしたら、横にあったテントみたいな場所から元気そうな男性の声が聞こえてきた。

 テントに立っているのは2人の猫獣人(キャットピープル)、エプロンのような服を着ている。


「抽選会……?」


「そのようですね」


「そんな現代チックな……」

 

 転生者が持ち込んだマーケット方法か何か?

 服とか文化とか、アジアや欧州の時代が混ざりに混ざっているこの世界じゃ一々突っ込むのも野暮になるか。

 おっと、現代チックって言葉も外来語か。控えておこう。


「ちょっとやってみたいけど、これ全部貰い物だしなぁ……」


「ふふ、傍から見たらたくさんお買い物をした子どもですよ」


 エリルの言葉にアハハと笑うと、抽選会の呼び込みをしている男性の言葉は続いた。


「1等賞は王都の有名な宿泊所の2泊3日の宿泊券! 2等は価値がおよそ25万ウォルの槍! ドワーフが何人も時間を費やして作った一品です! 3等賞は~」


 宿泊券、槍、まぁ、僕には必要のないモノか。

 少し興味があったけど、必要のないモノのためにお金を使うのもダメだな。

 抽選会場を後にして、隣の店を覗こうとすると。


「――そして、4等賞は来月末にある闘技場の入場チケットでございます! 今回は! あの! 現在連勝記録を更新中の『()()()』と噂が立っている奴隷番号727番が参加します! 見た目からは考えられない一撃が~」

と、声が聞こえ、僕は足を止めて振り返った。


「いま、あの人」


 『転生者』って言ったか? 

 『転生者』が、闘技場に出る……? 

 なんで、え、『転生者』って全員殺されるとか何とかって……。


 頭が混乱していた僕だったが、足は抽選会場の方に向かっていこうとしていた。


「ちょ!! ますたー!!」


「え、うわっ、あぶないよエリル」


「もしかして、あの抽選をしようとしてるんじゃないですか?!」


「そ、そうだよ。だって……情報が」


「待ってください! ますたー、ダメですよ、そんな卑怯(ひきょー)なこと! 確かにすごい買い物をしているように見えますけど、実際は2000ウォルも払ってないんですからね!」


 エリルが両手でばってんを作り、制してくる。


「で、でも、今日の本来の目的は情報収集だし……」


「だからといって、ちゃんとした手続きというかですか……、えっと、でも……そうなんですけど……。ど、どうしましょうかね」


 一応お金は持ってきているけど、クエストを受けて貯まったお金っていうのは微々たるものだ。

 ケトスとパーティーを作っているから、報酬も2分の1(実際はもっと階級によって偏っているとは思うが)になっているので2000ウォルをポンッと出せるほど、今の僕は裕福ではない。

 元来ケチケチしてた性格だから仕方ないっていうのもあるんだけど、それにしても高価なモノだ。

 二人でウンウンと悩んでいたら、カランカランと小鐘の音が鳴った。


「おめでとうございマース! 4等賞の闘技場チケットでございます! 3人で見に行けますのでどなたかと一緒にどうぞ!」


「お、ホントですか」


「仕事をサボったっていうのに運がありますね」


「こんな所で運を使いたくなかったですけどね」


 その声を聞いて振りかえってみると、買い物袋を下げた見覚えのある姿が見えた。

 二つ結いの黒髪で、高身長の男性(イケメン)、黒瞳で紳士のような見た目。 

 茶色髪がうねって肩上まで伸びていて、可愛らしい猫耳が付いていて、青瞳の……。


「ナグモさんとペルシェトさん……?」


「ん?」


「え?」


 そこまで大きい声ではなかったはずなのだが、2人もこちらを見て驚いた声を出した。


「「クラディス君 (様)?」」

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