093 商店街
僕たちが住まわせてもらっている建物から少し離れたところにある商店街に着いた。
『商店街』と言っても日本のような屋根はなく、ただただまっすぐの道にお店が並んでいる感じだ。昔ならではというか、ここに来たら何でも揃えれそうな気がする。
チラっと見える様子では、果物、精肉、鮮魚など、売っている商品は色々ある。
「いいなぁ、こういうの」
欧州の街並みで店が並ぶ、昔テレビで見たような感じでワクワクする。
しばらくウロウロしていると、果物を売ってるお店の前でおばさんが客の呼び込みをしていた。
わあ強そうなおばさんだ、とか思いながらその前を通り過ぎようとしたら、果物もなんだか見たことがあるようなモノばかり。
みかん、みかんの大きい奴、ちっさいやつ……キウイみたいなのもある!
と見ていると、パシッとギラギラとしているおばさんの手が僕の肩に置かれた。
「そこの坊や! 果実が安いよ!! どう?? 買ってかないかい!」
「うわっ、え、なっ。」
「これとかどうだい? お得な値段にしてるからさ!」
「うわっ」と言ってしまった僕のことを、何も気にしてない様子で商品を手に取ってオススメをしてくる。
ゴリゴリ接客をしてくるおばさんが指した商品の方を見ると、リンゴのような果実のところに130ウォルと書かれていた。
それを見て、なんでも知ってる博識なエリル先生に相談することにした。
(130ウォルってどう? 安い?)
(はい! この果物は相場は150ウォルくらいなので。20ウォル安いという感じです!)
(そうか、安いのか。高いから呼び込みをしてるのかと思ったけども……)
リンゴみたいな果実とオバさんを見ていると、オバさんがとても温かみのある笑みを向けてきた。
あはは……買わない訳にはいかないな。
「でしたら、一つ買わせてもらいます」
「毎度あり! じゃあおまけで、これを2つ入れとくね! 受け取りな!」
少し形が崩れている、でも、売り物になる範囲のモノを2つ袋に入れて渡してきた。
紙袋に入れられたそれらを見て、ぱちくりと瞬きをして、ぴたりと動きを止めた。
一個買ったはずなのに、二個増えた。さぁ、何個だ。算数の計算でもこんな適当な話はしないだろう。
「お、おまけって……そんな、悪いですよ。受け取れません」
「若い子は遠慮したらダメ!! はい! また今度来て買ってくれたらいいから! それに坊やを見た感じお遣いでしょう? ママにでもプレゼントしたら喜んでくれるから!」
グイグイと言ってくるオバさんの圧力に負けて受け取ってしまった。
「ありがとうございます……」
「良いってこと! またね!」
(ますたー運がいいですね!)
(運がいいというか……なんというか)
この世界では僕は子どもだからこういう扱いをされても仕方ないのか。
……冒険者に見えないかな、僕ってそんなに弱そうに見える?
「ふんぅ」
袋で塞がっていない方の手を見て、力こぶをつくってみる。
うん、確かに弱そうだ。さっきのおばさんの方が強そう。
そうするとフワッとエリルが出てきて、力こぶをつついて見上げてきた。
「僕ってそんなに弱そうに見える?」
「……そうですね……んーー、成長段階!」
「オブラートに包んでくれてどうもありがと」
筋肉とかはあまり関係ないような気がする。
ナグモ先生やティナ先生にあまり筋肉がないことを見ると、比例している訳ではなさそうだ。
だったら見た目で判断なんてつかないんじゃないのか!? どうなんだよ!
「僕が、あなた冒険者? って言われる日はくるのでしょうか」
「でしたら、服とか自己主張じゃないですか? もっとオラオラしたり、その買ってもらった服の上に装備を付けてみたり、武器を持ち歩いてみたり!」
「……なるほど、持ち歩くのはいい案だな……」
服もそうだけど、単純にオーラとかが無いんだろうなぁ。
眉間にしわを寄せてみるか? ふんっ……って、話聞くの忘れてた。
くるりと反転して、先ほどのおばさんの元へ。
「あの、ちょっといいですか?」
「ん? どうしたんだい?」
「最近なにか変なこととか、話題になってることって何かありますか?」
「話題……? 特には聞かないけどねぇ」
「些細なことでもいいので、何か、噂話とかそういうの……」
「噂話……も、あまり最近は聞かないねぇ~」
「そうですか……、ありがとうございます」
話し終えるとお得意さんのような人と会話を再開した。少しお邪魔をしてしまっていたようだ。
聞くタイミングを完全に間違えちゃったな。今度は買い物をした時に自然な形で聞いてみよう。それと会話してるのを、盗み聞きするのもいいかもしれないな。




