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85 血盟報告会③


ブックマーク登録ありがとうございます!!!! ブクマが一つ増える度に家の中でダンスしてるえっふぇです。そのまま私をダンスの達人にしてください


 あの男以降、特に騒ぐ人が出てくることもなく、報告会は順当に進んでいった。

 血盟の大まかな報告を終え、その集会は最後の項目へと移る。

 正面のモニターがぱっと消え、そこに書かれているのは『血盟順位の推移』の文字。まってました、とばかりに血盟主達は姿勢を正す。


「最後の報告へと移ります。組合が収集した情報を元に、上半期の血盟順位を発表する……」


 と言いかけると、モニターの文字がぱっと消える。 


「――のですが、先にこちらをご確認ください」


 言葉と同時に、モニターの様なモノに細長い血盟の名前が書かれていた長方形の四角が10程並んだ。


 1-【シュテルクト】 

 2-【ハインスト】 

 3-【マナ】 

 4-【ノームコア】 

 5-【フーシェン】 


 6-【アサルトリア】 

 7-【ネム】 

 8-【エヴァーチェ】 

 9-【ティータ】 

 10-【リプロレ】


 血盟主達にとっては、いやという程見た昨年の下半期の血盟順位だ。

 映し出されたのを確認すると、ルースは一呼吸を置き、資料から顔を上げて正面を向いて話す。


「本来なら100位から50位の血盟の推移を先に映すのですが、今回の推移はほとんどと言っていいほど変動していなかった上位10位の血盟が変わりました。ですので、先に連絡をさせてもらいます。それが――こちらです」


 ルースが言うと、並んでいた血盟の順位がブンっと変わった。

 それを見た後部席、側部席はどよめきだし、正面席は声を上げた。


 1-【シュテルクト】 

 2-【ハインスト】 

 3-【マナ】 

 4-【ノームコア】 

 5-【アサルトリア】 


 6-【フーシェン】 

 7-【ティータ】

 7-【エヴァーチェ】  

 8-【ネム】

 10-【リプロレ】

 

 その表示された画面、その文字。その順位推移が出ると同時、


「有り得ないっ!!」


 という声が正面席から上がった。

 その空間にいる者全員がその声の主の方に視線が向くと、男は汗を流しながら握りこぶしを作り、目の前の机を叩いていた。


 黒髪、身長はそれほど高くはないが黒の瞳で目つきが鋭く、首元に大きな傷跡がある男。

 机の前の名札には『ポルタル』と書かれ、血盟名は【フーシェン】とある。

 声主を見たら憤慨している理由も自然と分かる。モニターに映し出された順位と、その血盟名が書かれた札を見れば尚のこと。

 彼は、前年の下半期まで五位という上位血盟の一角にいた大規模血盟の血盟主。そして、たった今、準上位血盟へと降格した血盟主でもある。


 その男を一言で表すと、敏腕。


 ポルタルが【フーシェン】という血盟主になってから血盟は上位4血盟にも匹敵する程の成果を上げ、ARCUS第四地区にある血盟で5位になるまでに急成長をさせたことを血盟主で知らぬ者はいない。

 何年も5位という地位を保ちながらも協会の構成員はほとんど属しておらず、血盟員は三国に渡るほど幅広く展開している血盟で、血盟員が最も多い。

 しかし、その地位が少人数で結成されている【アサルトリア】に抜かれた。

 憤慨するのも、納得してしまう。同情すらも覚える。

 机を叩いた後、すぐ横に座っているマーシャルの方を鋭い目つきで睨んだ。


「マーシャル……!!」


 その視線を流すように手をひらひらとさせた。


「悪いね、もらったわー」


「何をした……?」


「優秀な子達が多くてね、それのおかげじゃないかな? まぁ、ドンマイ」


「くっ……有り得ない……!!」


 マーシャルの馬鹿にしたような態度を受け、ポルタルは通路に出ていく。


「どこ行くんだ?」


「帰る! バカバカしい」


「はいはい」


 ニヤつきながらそういって、マーシャルは小さくガッツポーズ。

 すると、こつん、と後ろからリリーが頭を小突いた。


「痛っ、なんだよ」


「敵を作ってどうする。穏便に行けんのか、お前は」


「吹っ掛けてきたのはあっちだろ。血盟の規模で勝ってんのに、わざわざ喧嘩売ってきやがって。嫌いなんだよ、あいつ」


 ポルタルがいなくなったことを良いことに、言いたい放題。

 それを聞いてリリーは、はぁ、と大きなため息。本心は同じであれ、公に口に出すことはしない。


「めんどくさいことにならないように気を付けるんだな」


「何を今更」


「ただの人数が多いだけの荒くれもの集まりが毎日ギルドの酒場で飲んだくれてるからな。絶対敵に回すとめんどくさいと思っただけだ」


「心配してくれてんの? 7位になった途端、余裕が出てきてみたいだな」


 その言葉を聞いて、顔を歪ませる。


「呆れた。お前が何もされなくても、お前んとこの子らが何かされるのかもしれんのだぞ」


「そしたら私があの血盟の冒険者全員を殺すさ」


 冗談とは思えない表情で言い放つ。それ以上は言うことはないとして、リリーは押し黙ってふかふかな座席に幼い体を沈ませていく。

 ゆっくりと体が椅子に包み込まれていく癖になるような感覚を味わいながら、チラとポルタルの名札を見やった。


(敏腕血盟主だって? あのゴロツキが? そうは思えんな)


 ポルタルの血盟の順位底上げは確かに素晴らしい業績。しかし、その業績の上げ方が未だに分かっていない。

 【フーシェン】は以前、素行の悪い冒険者の集まるただの組織だった。それこそ、冒険者が発足後当時の無頼漢の集まりがそのまま時代を超えてきたような者達ばかり。

 そんな者達が、何故、上位血盟に居続けられた? 血盟の人数の有利不利はもちろんあるとは思う、だがそれでも、犯罪者一歩手前の者達が多いのだ。

 野蛮な血盟に上位血盟の恩恵を与え続ける程、組合側も馬鹿ではないと信じてはいるが……。


(それこそ、先の男のように「ギルドがデータ偽装をしているんだ」と勘繰りたくなるな)


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