06 白の部屋②
ここから先は早かった。
気になったステータスやスキルの説明を簡単に受け、自分が欲しいと思ったスキルやステータスを『ボード』と呼ばれる半透明で四角形の物の上で手持ちの数値を振っていった。
思ったよりスキルとかの数値が振れる場所が多かった。
そうしていると視界の端で第四創造神が何か呟いていたので聞き取ろうとしたのだが、急な目眩と意識が引っ張られる感じがして座りなおし、頬をたたいた。
(とりあえず……は、このluckという項目はすごく大事な気がする)
これから知らないところに連れていかれるのだから運は必要だ。運はあっても困らないからな。
(目立つところはここくらい……か? あ、待てよ。『言語理解』は必要だ)
知らない土地に行くのに言語が理解できないと骨が折れる。英語の勉強は大変だったからな。
他にもたくさんあったのだが、いまいちよく分からなかったから後は観測者にお願いした。
オロオロしていた観測者に押し付けるのは悪い気がしたが、見ても分からないし、第四創造神に任せたら変なように振られそうだし……。
真面目そうな方に頼んで間違いはないだろう。
残りのネームとやらも観測者にお任せにした。というかネームに関しては全くわからないからお願いするしかない。
「……選択が完了しました。先に選ばれていた元となる部分は触らず、適性者様がお進みなるであろう道でお役に立ちそうなスキル、ステータスを選んでおきましたので」
「ありがとうございます」
「かなりギリギリだったが、間に合ったな」
ステータスも観測者が決め終えたと報告したところで、第四創造神が椅子から腰を上げた。
すると今までも定期的に感じていた目眩を強く感じた。
「――っ?!」
「……そうですね、適性者と判断された人でさえもこの空間では長時間滞在するのは負担が大きいですから……。適性者様も先ほどからめまいか頭痛がしているのでは?」
観測者が心配そうに話しかけてくれるのを感じながら、僕は頭を抑えながら座り込んだ。
「そういえば観測者君、適性者君の最終的なスキルとステータスは――」
観測者が手に持っているボードのようなものに目を向け、笑った。
「ユーモラスだな。なかなか、これは楽しめそうだ」
その言葉を聞いた観測者の表情が、少し、歪んだ気がした。
いや……これは、視界が……。グラついてるからか。
「では、私は出ていくとしよう。適性者君。僕の作った世界を楽しんでくれ。死なない程度に、な」
第四創造神はそう言うと、この空間から姿を消した。
それを見ていた視界がさらに歪み、白く濁り、心地いい睡魔のような感覚が強く襲ってくる。
第四創造神が消えたのを確認した様子を見せ、座りながらもふらふらしている僕を見て観測者が暗い表情をし、つぶやく。
「また――でした……か」
今度はノイズが走り、上手く言葉が聞き取れなかった。
意識が朦朧とするのを必死に堪えて理由を聞こうとするが、俄然勢いを増すその感覚は止まることはない。
うまく聞き取れなかった言葉に考えを巡らすりも早く、睡魔は体全体に行き届いた。
ばたり。
再び意識はなくなってしまった。
◆◇◆
既に意識がなくなり、体の末端部位から細やかな光に変化していく明人の体。
もう、第四創造神によって創られた世界へと転生し始めている。
その明人の体を観測者は抱え上げ、頭に触れた。
「どうか私を恨まないでください」
観測者はこの空間から消えていく明人の体を最後の一欠片まで大事そうに抱え、完全に転生したことを確認すると、白の空間から姿を消した。