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【HIDE LEVELING】転生者は咎人だと言われました〜転生者ってバレたら殺されるらしいので、実力を隠しながらレベルアップしていきます〜  作者: 久遠ノト
1-4 世界把握編──小さき転生者、ギルド暮らしをする

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46 透明人間エリル


「『体の魔素を感じる訓練』。それが終わったら『魔素を練り上げる訓練』……で、練り上げるとは、体の中心にある核のようなものを沸騰させるように……? んんむ?」


 練る、ねる、寝る?

 あっ、なんか昔お菓子でなんかあった気がする。食べたことは無いけど、美味しそうではあったよなあ。


「つまりは……なんだ。練ってどうする? あ、スキルの威力が上がるのか?」


 沸騰させるようにって……。ぐつぐつ……か。

 自分の胸に手を当て、イメージしやすいように目を閉じてみるが『沸騰させるように』っていう書き方が全くイメージが湧かない。

 なるほどなるほど、と納得したように呟き、パタリと読んでいた魔導書を閉じた。


「……すー……ふぅー……。「わけわかめ」ってこういう時に使うんだろうなぁ」

 

 魔導書に書かれている序盤のページだと言うのに早くも躓いてしまっていることを受け止め、魔導書をそっと床に置いた。




 レヴィさんから魔導書をもらったのが昨日の出来事。

 それで一度仮眠をして夜にまた寝るまでの間、魔導書をじっくり見ていたのだ。

 ある程度は読み進め、今は魔法の元にもなる『魔素』という項目のページを読んでいる。

 すると急に「練り上げる」って言ったり、「沸騰させる」とか書いてあって頭が混乱しているところだ。


 イメージしやすいようにって書いてくれたんだろうけど、逆効果な気がする。


 んむ……ぅ、鬼門だ。


「ますたー何してるんですか? 心配で出てきたんですけど、朝の勉強会はしなくてもいいんですか?」


 ふぁさっと長い髪の毛をなびかせ、エリルのご登場。

 本とにらめっこをしていることに疑問を抱いて外に出てきてくれたようだ。


「ギルドが今日と明日が忙しいみたいで、訓練も勉強会もないみたいから暇なんだよ」


「ふ~ん、そうなんですか……。そういえば、ますたーって暇な時間って何をしてたんですか?」


「暇な時間……? ん~っとね、勉強とか、体動かしたりしてて」


「えっ、そうではなくて、趣味とか! なにかないんですか? どこかに行きたいーとか!」


「えぇ……っと、そういう感じだと、この国をもっと見て回りたい……とか、落ち着いて勉強してみたいとか、魔物(モンスター)と戦ってみたい……とかかな」


魔物(モンスター)と戦う! いいですね!」


 明らかに、楽しそうな表情になった。この子は戦闘狂かな……?


「色々したいことはあるんだけど……今日は、とりあえず魔法の勉強をしたいかな」 


 ウキウキしている様子のところに、魔導書を重たく持ち上げてみせてみた。


「魔導書……ってことは、ますたーもとうとう魔法の勉強をするようになったんですね!」


「『魔法』って言葉の響きを聞いたらやりたくなっちゃった」


「それは良きことです! 魔法が使えるようになれば、私も使えるようになるので早く使えるようになってくださいね!」


「……? ワタシモツカエルヨウニナル??」


 一気に会話につまり、顎に手をやってエリルのキラキラ輝いている表情について考えた。

 エリルが魔法を使えるようになるのは、僕次第ってこと?

 さっきまで悩んでたことより、さらに分からないのが出てきたぞ。

 言われた言葉に思考を巡らすが、よくよく考えると、エリルのことについて知らないことが多いことに気づいた。

 

 ――とりあえず、エリルについて一旦まとめておこう。


 エリルは今期の転生者から派遣されるサポーターで、多分僕よりすっごく年上だけど、おっちょこちょいで……可愛い? 可愛らしい女の子だな。

 僕より身長が低くて、僕の体の中にいるっていうよく分からない状態になれるびっくり人間、いや人間ではないか。神様的な存在、またはそれに準ずる者。

 あとは……イタズラが好きな気がする。で、他の人には姿が見えないということ。


 まとめてもよく分からないままだったので音を上げて質問をすることにした。


「その、「私も使えるようになる」っていうのは体内に消えるびっくり技みたいな感じのやつ?」


「びっくり技~……ではないですね。あれ、お伝えしてなかったですっけ……? 魔素が共有云々って」


「魔素を共有してるから魔法が使える?」


「です」


「はぇ~。つまりはどういうことかわからないけど使えるんだ」


「魔素っていうのは、万象の源。万象を記録するモノです。魔素が分かればすなわちその人のことを完璧に理解できると同義! 魔素ってのを共有してるということは知識を共有しているってのと一緒なんです」


「じゃあ、エリルと一緒に魔法を打てるってこと?」


「はい!」


「最強じゃん」


「いえ、最弱です」


「ずっとそれイジるのやめて!!」


 と叫ぶと、少しだけ開けていた訓練場の扉がギギギと音を立てて開かれた。

 

「お、あれ、なんか声するって思ってたけど……」


「あ、す、すみません。ここ、使う予定でも」


「ん、いやいや。ただ通りかかっただけなんだけど……」


 そう言いながらスタッフさんは訓練場内を見回し、僕の顔を不思議そうに見つめた。


「大丈夫?」


 ん、大丈夫とは……?


「なにが……ですか?」


「いや、さっきから()()()言ってたから……」


「……? あ、あぁ……そうですね。すみません。独り言言わないと、集中できなくて」


 そうか。エリルは他の人には見えないから……くそぅ、変な言い訳しちゃったじゃないか。

 ちらと横にいるエリルと目があった。にやりと笑われた。


(何笑ってんのさ!)


 すると、トトトっとそのスタッフさんのところまで駆け寄っていき、胸を張った。ぴょんぴょんと視界に映ろうと跳ねて、こちらを振り返りピースサイン。


(見えないからってしていいこととしちゃ悪いことがあるよ)


「へっへー! わたし、透明人間なり!」


「なにかあったら相談してくれていいからね?」


「は、はい」


「この人よりも私に相談してくださいね! このっ、完璧なサポーターにっ!」


 ぼくのことを心配そうにしていたスタッフさんが出ていったのに手を振るエリルは、またドヤ顔にも見える顔をこちらに向けてきた。


「透明人間になったらますたーはなにがやりたいです?」


「お金かけて隠れんぼしたい」


「わぁ……」


 エリルとの話が落ち着いたので、魔導書を読むのを再開した。

 集中力なんか既に切れちゃったよ、もぉ……。

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