188 うわ、あの狼人だ
指定された場所は、毎度お馴染み王国近郊の森林。
聞いた話だと『イニシアの森』っていうちゃんとした名前があるらしい。
そこには既にざっと100人くらいの冒険者が見える。みんな若くて、僕と同じ身長かそれよりも低い子ばかり。
「――で、なんでここに居るのさ。こういうの好きじゃないでしょ」
「やぁ〜、呼ばれちゃったもんは仕方ないよね」
ウロウロしていると、暇そうに大きな石に腰掛けていたケトスがいた。
あの一件以降、ケトスとの関係が崩れる事も無く、むしろ前より雑な言葉遣いが増えるくらいの仲になった。
ケトスは下位一階の冒険者になって、近々、金等級への昇給審査があるらしい。
「誰かとパーティー組むの? 組まないなら一緒にやらない?」
「だね、一緒に組もう」
ケトスとの会話の様子を嫌そうに見ていたアン。
うわ、顔、すごいことになってる。
「……まだケトスのこと嫌い?」
「嫌いではありません」
「お」
「ですが好きでもない。実力は認めていますが、たまに何を考えているのか分からない時があるので」
「手厳しい……」
「おい、邪魔だぞ。突っ立ってんじゃねぇ」
立ち話をしていると、二度と会いたくないと思っていた冒険者パーティがぞろぞろと歩いてきた。
げっ……この狼人。
「って、あん時のガキじゃねぇか……まだ生きてたのか。チッ」
あぁ、相変わらず嫌い。すごく嫌い。
狼人まで呼ばれてるのかよ。お手本の冒険者として呼ばれたのは分かるけど……んん。
「あぁ? んで、ガキとケトスが一緒にいんだよ……」
「……? 誰?」
心底嫌そうな顔を浮かべる狼人。ケトスは本当に知らなそうな声を出した。
それが気にくわなかったのだろう。そのまま歩いて通り過ぎずに、ぴたりと足を止めた。
「てめぇ、俺らを知らねぇのか?」
「うん。ごめんね、他の冒険者ってそんなに興味ないんだ」
うわ、天然。
こればかりは同情する。彼らだって、下位ダンジョンを最速でクリアした冒険者だ。
デュアラル王国の同年代の人らだったら、多分、一、二を争うくらいには有名……なんだと思う。僕はそんなには知らないけど。
僕やケトス、多分アンもだけど、世間の事柄に疎いから威張れど威張れど効果が薄い。
「変人には、世間のことが分からねぇか。ずっと森にこもってるんだから無理もねぇ。魔物が友達のてめぇには、な」
「言われてみると、確かにそうだね。友達かぁ、そう思われてるんだ」
無敵か。ケトスは。
「グッ……でけぇ血盟に入っただけの奴が、調子づいてんじゃねぇぞ!」
「あー……えーと、妬み? ごめんね?」
「……てめぇ!」
「スケア、もういいだろ」
殴りかかろうとしてきた狼人を蜥蜴人が止めた。
「変人ばかりのパーティーが。変人と、出来損ない混血種の森護黒半人と、弱っちぃクソガキのな」
「もう喋るな。体裁すら保てんのか」
汚い言葉を最後に締めたのは森護人。ちらとアンの方を見ると、そのパーティーは向こうの方に歩いていった。
ケトスが変人だと言われる所以の一端を見た気がする。話す話題とか、ケトスが興味ないことを話す時ってこんな感じなんだ。
向こうに行った六人の方をジーっとみて、小首を傾げた。
「誰だったんだろ」
「まぁ、知らなくてもいいよ。多分、そんな関わることもないし。アンは大丈夫だった?」
「問題ありません。わたしより弱い者がどれだけ吠えてもいつでも殺せますので。それに、ああいう類は殴るだけの価値もありません」
後ろに腕を組み、背筋を正したまま時間の無駄と言わんばかりに言い放った。
確かに、ああいう人とは会話もろくに成り立たないからなぁ。
ほんと嫌い、僕の嫌いな人を具現化しました! ってみんなに紹介してもいいくらいだ。
「――なぁ、あんたら。もしよかったらパーティー組まないか?」
今度は誰だ……。
多くの冒険者がいる場所だから、いろんな人が声をかけてくるのは仕方ない。だけど、先程の場面を見ていたのならそっとしておいて欲しい。
「……あなた達は?」
「俺達は同郷の奴らで組んだパーティーさ。そっちは見る感じ剣2と拳殻1だからバランス悪いなぁと思ってさ!」
「そうそう! 私達も銅等級と銀等級のパーティーなんだけど、治癒士と魔導士と剣闘士の3人だからバランスいいし」
「どう、悪い話じゃないと思うけど」
この3人は……えっと、僕らが森に入る所から一緒に入る冒険者達だったっけ。
ギルドが言った"先輩冒険者"に該当する冒険者数が少ないから、一定間隔を開けて配置して、そこ付近に駆け出し冒険者を偏りなく置く。
その時に軽く教えられた僕らがサポートする人達だ、多分。記憶に間違いなければ。
冒険者内で有名なケトスのことも知らないみたいだし、本当に駆け出し冒険者みたい。
だけど、パーティーを組むのは趣旨と異なる。
僕らは補助役として呼ばれているのだ、しかも内緒に。
「パーティーはいいや。足引っ張っちゃうかもしれないし」
「そんなことねぇって! 俺がこうやって――フンっ! へへ、この剣で倒してやっからさ!」
「それはすごく頼もしいんだけどー……」
チラッとケトスとアンにヘルプを出すと、コクリと頷いてくれた。
「ごめんねー。本当に弱いから迷惑かけちゃうよ。せっかくお金稼げる機会だから、僕らに構わずに頑張ってね」
「そうだな。ある――クラディスさ、んは違いますが、この白髪メガネは迷惑をかける。やめておいた方が賢明だ」
「このアンって女の子が一番弱いから、ごめんね。本当は組みたいんだけど」
「そうか? そういうことならいいんだけどよ。まぁ、お互い頑張ろうぜ」
「うん、声かけてくれたのにごめんね」
少年少女が手を振って少し離れていくのを笑顔で見送ると、アンとケトスが互いの両手を持って啀み合ってた。
何だかんだ仲良いからな、二人は。
ブックマークが三桁になったって言うのに、レヴィ――じゃない、レビューがゼロって才能だと思うんです(自虐)




