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183 訓練期間終了



 僕とアンが襲われてから、それなりの日数が経過した。

 結構大きな事件だったと思うけど、日常生活にも影響をしたかというとー……してはないかな。

 外出を控えるようにとは言われたけど、それでも家の中でできることをやってたから、変化というほどでもない気がするし。

 家の中でもできることは沢山ある。料理をしたり、掃除したり、それこそ魔導書を読んだり、エトセトラエトセトラ。

 他には……あ! ナグモさんとの訓練中に魔法が使えるようになった。

 転生者だって告白をしてからは、僕の戦闘スタイルの相談や試したいことを色々と挑戦をさせてもらってる。

 ケトスに関してはあれ以降も普通に家に遊びに来るし、なんなら食材を持ち込んできて「料理して!」って言ってくる。

 転生者の話をしてた時に刀に手を当ててた人がねぇー? 調子がいいことを――もちろん冗談だ。


 まぁ、それも今日で一区切り。

 ギルドとムロさん達が契約した「三か月」という期間が本日付けで終了だ。

 


 ◆



 僕達はギルドの応接室に来るように言われた。僕がギルドに入るときに話をした場所だ。

 目の前には制服姿の丸さん、ペルシェトさん、ナグモさん。仕事の合間を縫って話をしに来てくれた様子。

 隣にはアンが座ってて、初めて入った場所だから落ち着かないみたい。置物みたいに背筋をビシィっとしてる。

 かく言う僕も校長室みたいな雰囲気があって苦手なんだよね、ここ。


「とりあえずは勉強期間の終了ということで、三か月の間ご苦労様でした」


 丸さんはこの場にいる全員の顔を見やり、話ができそうな雰囲気になったのを確認すると話を始めた。

 ぺこりと頭を下げたから、僕も遅れて頭を下げる。


「こちらとしても色々なデータが取れたから、ギルドとしても、個人的にもこの期間は仕事が苦じゃなかったわ」

「私的にも楽しかったですが、クラディス様的にはどうでしょうかねぇー?」

「毎日拘束されてるんだから絶対つらかったでしょ。特にナグモさんの訓練は!」

「そうね。勉強会の時にクラディス君がウトウトしてたのも、ナグモが夜遅くまでやっていたせいだと聞いたし」

「ほお? 朝からの勉強会が無ければ、もう少しゆっくりとできていたはずですが」


 バチバチと火花を散らす三人が、ちらとこちらを見てきた。

 ものすごく話しにくいタイミングで投げられてしまったような気がする。

 いや、まぁ、大変ではあった……けど。


「どっちも、楽しかったですよ」


 僕の言葉を聞くと、三人とも鳩が豆鉄砲を食ったような表情になった。

 と思うと、三人が顔を見合わせ、ふっと小さく笑う。

 それにつられ、僕も思わず口角が緩む。

 

 それからは思い出話の時間へと入った。

 始めての一日は訓練があんな内容だとは思ってなかった、という話から始める。僕にとっては重要なことだ。

 筋肉痛とか酷かったんですよ、と不満を言ったら笑われて。最初はボコボコでしたものね、と言われてむっとした。

 勉強会後の三人で食べる昼食が楽しみだった、とか。ナグモさんも一緒に食べたらよかったのに、とか。

 僕が基礎知識を既に持っていたから勉強会の必要性があまりなかったとペルシェトさんが話すと、丸さんが大きく頷く。

 ティナ先生と訓練が始まる前には勉強会も終わってたから、二人は通常の業務へと戻っていたらしい。

 ということは、早めに切り上げてなかったらスキル不使用の訓練+勉強会だったのか。地獄か?


 すると思い出したかのように、最初のクエストで僕が無茶をしたことを掘り返してきた。こればかりは何も言い返せれないから、深々と頭を下げる。

 話を変える為に、アンへとギルドの施設の使用許可も出してくれるとは、って話すと、ギルド長が許可をしたのよって言われた。

 それ以外にも僕やアンがギルドで生活ができるように、色々なことをしてくれていたのだと教えてくれた。

 そんな人に『顔が怖いから』って理由で挨拶をビビりながらやってたのか。


 つくづく……人と環境に恵まれた。

 友達も増えたし、知り合いも増えたし、アンのような仲間も増えた。

 この期間中に死にかけた回数は数えきれない。でも、この期間で培ったモノがあったからこそ、こうやって話ができて笑っていられる。

 この期間も終わってみると、中々充実していた。脳内で勝手に美化されてるけど、絶対に忘れることがない日々だ。

 

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