175 アンの告白
こうしてケトスとナグモさんと別れた後、アンと一緒に自分の部屋に戻ってゆっくりすることにした。
ぼふっと布団にダイブし、死んだように横になる。
(あぁ、やっぱり自分の部屋……落ち着く……)
枕に顔を擦りつけ、体から力を抜くとかなりの時間寝ていたはずなのに、まだ睡魔が襲ってきそうになる。
三日間寝てたばかりで、休みすぎな気がするけど……体が体を動かすのを拒んでいる。
久々の脱力君と無気力君だ。
(クラディス凹みモードならぬ、お休みモード~……なんちゃって。面白くはないな)
ごそっ、ごそっ。
とまぁ、今にも眠りにつきそうだったけど……僕の真横にずっと密着してきている子がいるから寝ようにも寝れない。
「……アン? どうしたの?」
「あるじを……その、補給してるのです」
「……? 僕は何かした方がいい?」
「居てくれるだけで満足です……それ以上は、まだ、許容が……」
「そう……、なら僕ももう少しこうしてるから」
寝起きで眠たくて動きが鈍っている頭で適当に返事すると、僕の腕を両腕でがっちり捕まえているのが見えた。
「っ……ぅ」
普段は真面目でかっこいいアンの顔が真っ赤になって、耳がぴょこぴょこと動いてるのを見て眠気が吹き飛んで行った。
「アン」
「は、はい!?」
「あ、そんな身構えることじゃないんだけど……」
なんて言ったらいいんだろうか。
僕は、まだ、アンにちゃんと話をしてなかった気がした。
「今更かもしれないんだけど……。僕たち転生者のせいで辛い思いをさせてごめんね」
アンは転生者じゃない。それはエリルの鑑定で明らかになったことだ。
前に話した時は自分が転生者だと話をしていなかったから、その事実を踏まえてちゃんと話をしないと、って思った。
「えっ」
「えっ?」
「え……いやっ、あのぉ……ですね。わたし……は」
もぞもぞと俯いて、話をしづらそうに。
その反応って……とても意味がありげなんだけど。
横にいるアンの方を向くように体勢を変えると、冷や汗をかきながらオロオロとしている。
「……アンは転生者じゃないんだよね?」
エリルが鑑定をしてみた結果は「アンは称号Ⅰを持っていない」という話だった。
その話を信じて、アンには直接聞いてはいなかった。聞けるわけもないし。
どっちみちアンが転生者ではなくとも助けるつもりだったから、そこまで深く考えては無かった。
アンは言葉を発さずに、僕の腕を握る力だけが強まっていく。
「転生者……ではないですけど……その、驚いたりしませんか……?」
「う、うん。大丈夫だと思う」
すると、僕の胸元に顔を隠して、小さく呟いた。
「私は……転生者の……子どもなんです」
「え」
飛び込んできた言葉に目を見開き、言葉の意味を探ろうと深く考え込む。
「え……っと……え?」
いや、言葉そのものの意味は分かる。子どもだ。うん。でも違う、そうじゃない。
転生者の子ども……の意味をちゃんと理解しようとするが、もう頭がオーバーヒート。
「転生者の……子ども?」
混乱しながらも、アンに詳しく話を聞くことにした。




