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172 応援到着



 空中で何度もジャンプをして猛攻を続けるアンを見上げ、僕は岩にもたれかかった。

 アンはやっぱり強いや。僕を一方的にいたぶっていた男達を一瞬で倒しちゃった。


(僕なんかよりずっと強い人は……この世界に沢山いる)


 僕がボロボロの状態で立ち上がって油断した人、味方が倒されて激昴した人、転生者だと告げて冷静をかいた人……都合よく三人の動きが単調になってくれたから勝てたけど、あの二人にはまだ僕は勝てなかった。


 まだまだ……僕は弱い。


「アン、大丈夫……?」


 体を引きずりながらアンの近くに近付いてみると、アンの肩は震えていた。

 僕の方に近づいて何も言わずに抱きついてきたアンの頭を撫でた。


「お疲れ様……、昔を思い出させてごめんね」


「いいんです……。でも……すこし、怖かったのもあります」


「ごめんね……ほんとうに」


「ゲホッ、ゴッ、はははっ、ゲホ……は、ははっはははははっはははは!!!」


 既に死んだと思っていたシルクから狂ったような笑い声が聞こえ、僕を守るようにアンは身構えた。

 死にそうな人から出てくる笑い声じゃない……。


「これで終わりじゃねぇよ……! なんのためのこの場所だと思ってんだ。俺や冒険者(あいつら)が死んでも、ここからその体で帰れる訳がねぇ……! 今こっちにお前らを転移させた奴らが向かってる。その状態で勝てるかぁ……!? はははははははっ!!」


 転移させた奴らが来ている……?

 ってことは、上級魔法が使える魔導士(ウィザード)がいるってことか……。


「……おそらく、その心配はない」


「ははははっ……は? なに……っ?」


「……わたしの後ろを離れずに走ってきてた、気配で感じてた。それに、今も」


 離れずに走ってきてた……ってことは……。


「あっ、この魔素……」


「いやぁ、やっと来れましたね」


「お、いたいた」


 声の方に目を向けると、森の奥から出てきたのはナグモさんとケトスだった。

 そして、その二人の横には紐で身動きが取れなくなって……気を失っているように見える20人程の冒険者のような身なりの男達がいた。

 あぁ……そっか、アンの魔素を突然感じれたのは、この場所に結界を張っていた魔導士(ウィザード)が倒されたからか。

 倒してくれたのがアンでないとなると連れてきてくれた人が、ってことになるのか……そこまで頭が回ってなかった。


「ふざけるな……よ……! この計画の失敗は許されないんだ……! 絶対にっ」


「血盟と貴族が繋がってるのを知られるのが、それほど不味いことなのか?」


「……っ」


「頼む、教えてくれ」


「……断る、誰がてめぇなんかに言うかよ……! それに……鳩頭には想像もつかねぇさ……っ、ぐっ……は、はは……っ!! そう遠くない未来、お前らは死ぬぞ! それをこの目で見れないのが残念だ!!!」


「……そうか」


「あるじ……止めを」


 アンが前に出ようとしたのを止めて首を横に振った。

 放っておいても、あれだけの怪我なら死ぬだろうと判断した。


(それに……僕の方もそろそろ限界が来る……)


 頭がぼーっとするし、体がフラフラしだしていた。

 アンが来てくれたし、ナグモさんとケトスの姿を見ると緊張が一気に緩んだから……。


 あ、そうだ。血を止めてるのを早く解除しないと……壊死しちゃうかもしれない。

 だけど、これ以上血を流したら意識が……。その前に、あの二人にも感謝を伝えておきたい。


「ってクラディス!? 酷い怪我だ……。はやく診てもらわないと」


「私達は間に合ってなかったみたいですけど、アンさんがギリギリ間に合ったようですね」


「……なぐもさん、けとす……、ありがと……来てくれて……」


 声が大きくでないから少し近づいて言おうとして、二人の方へ歩いて行くとズキンっと心臓に痛みが走った。

 倒れ込みそうになると二人は支えてくれて、そのままもたれ掛かるように体重を任せた。


「きてくれてありがと……助かったよ。へへ」


 二人の顔を見上げて笑うと、二人は驚いたような顔になった。

 アンもそうだったけど、王国からこの森までの距離は遠い。それを僕のために来てくれたんだ。


(とりあえずは……お礼が言えた、から)


「……クラディス、その目……」


「……? ごめん、ちょっと……もう、意識がもちそうになく……て」


 消えゆく意識。

 その最後にケトスの声が聞こえた気がして、僕も何か答えた気がした。


 その状況で強引に止血していた治癒魔法紛いの魔法を解除すると一気に意識が持っていかれ、そのまま目の前が真っ暗になった。

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