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141 上位部門 選手入場



 僕たちは簡単に昼飯をすまして席に座って話しているとお昼の休憩時間も終わったようで、観客席が徐々に埋まっていった。


(そういえば中位部門に転生者はいたの?)


 次の試合が始まる前にエリルへの確認をしておこう。


(いえ、そのような反応は無かったです)


(そっか……そんな沢山いる訳でもないか)


 奴隷の名簿にはチラホラと『転生者』と疑われていると記述がある人がいた。その人たちが全員白ということだ。

 やっぱりこの世界は現時点で転生者かそうでないかの判断ができないのかもしれない。『疑いがある』と濁す辺りによくそれが表れてるし……。


(それで.......、ますたー。お金の方はどうなりましたか……?)


(あぁ、うん。なんとかマーシャルさんが勝ってくれたおかげでね。足りるかは……分からないけど、一応は確保出来たと思う)


(ってことは賭け事に勝ったわけですね! やはり神運は伊達じゃないと)


(あ、やっぱりそれ関係ある……?)


(あると思いますよ! まぁ、運も実力の内ってことで!)


 恩恵を感じることがそこまでなかったが、神運……か。

 感謝しないとな。どこまで運が絡んでるのかは分からないけど。


(では、私は引き続き鑑定を続けますね)


(うん、任せたよ)


 エリルとの会話が終わると、ふぅーと長い息を吐いた。


 現状は、転生者だと断定ができないから怪しい人をとりあえず引っ捕まえてる感じか。

 なんというか、そんなので勘違いされて人生が終わるのは酷い話だな。

 それも全部、僕達のせいってことなんだよな。気が重い……。


(鑑定士の数が少ないのか……)


 さすがに冤罪で殺すってことはしないだろう。殺す前に鑑定は通すハズだ。

 だとしても……。


(……ぼくらのせいで、ごめんなさい)


 誰にも届かない謝罪をしておいた。

 転生者だとバレたら殺される世界は、転生者以外の人にも良い影響は与えていない。

 ……ちぐはぐな世界だ。


『では皆様掛け金!! お昼休みが終わりましたがお腹は膨れましたか? この上位部門は見るだけで胃もたれをしてしまうかもしれませんのでどうかお気をつけてください!! まずは掛け金の準備を!』


 あれこれと考えているとアナウンスが響いた。


(まぁ……今考えることではない、か)


 僕は727番を見つけようと端末に目を走らせて、少し下に行ったところに見つけた。


 戦闘奴隷727番

 出自:ロベル王国近郊の農村地

 レベル:およそ100

 闘技場連勝回数/出場回数

 下位部門:1/1回

 中位部門:1/1回

 上位部門:27/27回(通算29連勝中)

 備考:転生者の疑いがかけられている


「出ている試合は全部勝って通算29連勝……。レベル100…………はっ!?? えっ!?」


 ざっと目を通しているとレベルの欄に目が止まり、思わず大きな声を出してしまった。

 それと同時に会場のモニターに掛け金の順位が表示された。


『おおぉっと!! やはり賭け金1位は727番だー!!!! 幼い体で大きい体を力任せに倒していく姿はまるで鬼!! 今まで彼女が出場した試合は全戦全勝! 無敗の727番です! 賭け金2位大きく差を広げて堂々たる1位です!』


「わぁお、やっぱり凄いですね」


「みんな727番が勝つと思ってるみたいな盛り上がり方……」


『――はい、それでは選手入場といきましょう!!』


「で、でもレベル100って、え……?」


「まぁまぁ、クラディス様。見てたら分かりますよ」


 アナウンス後に1つの入場口からゾロゾロと闘技台の中央へと出てきた戦士達。


「ふぇ〜! さっきより人が少ないんですねー!」


「普通ならもっと多いはずなのですが……727番が影響しているんですかね。」


 参加者が入ってくるのを目で追っていると、一人だけ遅れて場内に姿を現した人がいた。

 拳殻と言われる武器を両手に装備し、ぼろぼろな服を着てガスマスクのようなモノを付けている少女。

 一目で「あの人が727番だ」と分かった。


 腰辺りまで伸びている真っ黒い髪の毛、褐色肌で耳が人間より長く、エルフより短いように思える。

 目の色は黒く、服から見える肌には古傷のようなモノも見え、彼女がどれだけ戦いの場に身を置いているのかが想像できる。

 その体は周りの屈強な戦士と比較するには可哀想なほど、あまりにも小さかった。


「……あの目……」


 その少女が浮べる目の色を見ていると、どこか悲しい気持ちにさせられた。

 黒い瞳、だが他の戦闘奴隷が浮かべていた色よりも深く、重い感情が奥底にあるような気がする。


 僕がその少女のことを見ていると、観客から凄まじい歓声が727番へと向けられ、その歓声を聞いた他の選手は怪訝な顔になった。


 そして、歓声が一向に落ち着かず、場内の緊張が高まった瞬間。


 ――ゴォォォォン。


『鐘が鳴りました!! 戦闘開始です!!』


 闘技場上位部門、本日の最後の試合が始まった。



 

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