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134 闘技場広すぎ!




「ここが闘技場……広い……っ!!」


 西部ギルドから遠く離れたその場所は僕が想像していた闘技場で、コロシアムのような外装をしていた。

 ナグモさんがここまでの道案内をしてくれて、ペルシェトさんは現地集合という形の予定なのだが……まだ姿が見えない。


「おーい! こっちこっちー!」


「あ、ペルシェトさーん!」


「2日ぶりだね~悪い子くん」


「いやぁ……お世話になったようで、すみません」


 2日前、ティナ先生がやった訓練の仕上げテストが無事終わったようで――途中からはよく覚えてないのだが――大事にならないように治療を施してくれたらしい。

 目が覚めた時に紫の目が見られそうになって思わず布団を頭から被ろうとして、左腕がとても痛んだのを覚えてる。

 左腕は固定して包帯を巻いてから首から布を下げて安定させているけど、かなり酷い状態のだったようで「しばらくは安静にしてくれ」とペルシェトさんの注意、もといドクターストップを受けた。


「骨折の方はどう? 治そうと思ったら全部治せるけどやっぱりダメなんだよね?」


「ティナちゃんが残しとけって言ったので先生の言う通りにお願いします」


「あー……了解です。まぁ少ししたら治ると思うから良いけど、痛むようだったら言ってね」


「すみません」


「クラディス君が謝ることじゃないよ~。ほらいこいこ、チケットは私がまとめて持ってるから」


 そういうペルシェトさんに背中を押されて受付を済まし、僕達三人は階段を上がって自分たちの席に座った。





 内装は野球場とかサッカー場とかの形に似ていてドーム状だった。

 中央には人が戦う場所のような広い場所が地面から少し出て見える。あとで聞いた話によると闘技台と言うらしい。


「結構人もいるみたいですね~……」


「私もこんなに人気だとは思わなかったよ、でも向こうの方はお金持ちっぽい人が固まってるからやっぱり貴族ってこういうの好きなのかなぁ」


「人同士がスキルと武器を使って殺し合うのを見る、っていう良い趣味を持ってる人が多いですからね」


「えっ、これって人が死ぬんですか……!?」


「もちろん。ここは法が適応されませんから、それ目的で来る人もいるんですよ」


「「うわぁ……」」


 人が殺し合うのを見るのが趣味って、どんな生活してたらそうなるんだ? 

 そういうのが趣味な人とは友達にはなれないな……若干引いてしまう。


『お集まりの皆様、お越しいただいて誠に感謝致します!! 今回は今までよりも熱い戦いが繰り広げられる気がしてなりません!! 今回の下位の名簿はお手元の端末に表示させている通りになっております!! そして、通例で闘技場終了後はオークションとなっておりますので、皆様よろしくお願いしまぁ〜っす!! では、早速行きましょうっ! 戦士たちの入場だぁ!』

 

 アナウンスの声が終わると短い拍手がされて、ギィィっと闘技場内の4つの扉が開かれた。ゾロゾロと入ってくる参加者の顔は自信が溢れているような気がした。だけど、僕はそれより気になるのがあった。

 端末って……これだよな?

 アナウンスの人の声の通りに自分の前を見てみると、自分の席の前にカーナビくらいの大きさの物が出てきている。

 

「見るのは初めてですか?」


「初めて、です」


「難しく考えなくても大丈夫ですよ。それで闘技場出場者の名前と情報を確認して掛け方を決めるモノらしいです」


「これに出てくるんですか?」


「魔法の一種らしいのですが……斬新なデザインだと思いますね。まぁ、資金力はある所なのでそれなりにいい技術者でも囲っているのでしょう」


 いや、これ絶対タブレットというかそういうのから着想を得てるよな? 偶然ってことあるのか?

 端末に表示されてるのは人の顔と登録名、それと何に属してるかがあまり詳細ではないが表示されていて、その横とかに賭け方が上位3人、上位1人、上位3連、上位3単……と、見える範囲で書かれている。


「掛け方はコレのことかな」


「ですね。ちょっと分かりにくいですけど、上位3人は最後の3人を予想する掛け方で、上位1人は勝つ人を予想、3連っていうのは順番に1位から3位を予想して、3単は上位3人に入りそうな人を予想するってやつです」


「なるほど」


 ナグモさんの言うことを聞きながら、端末とにらめっこをして縦にスクロールして名簿を確認していると、拡声器のキィーンという音が聞こえてきた。


『では、掛け金を締め切ります! さっそく本日最初の下位部門にいきましょうか!』


「えっ! まだ何も賭けてなかったのに」


「やっちゃいましたね」


「あれ、クラディス君は賭け事に興味あるの?」


「少しやってみたいかな~……なんて。えへへ、ちょっとだけ思ってました」


「勉強とかばっかりかと思ってたけど、意外なところもあるんだねぇ」


「まぁ、あと2回ありますし、賭け方も分かったので時間さえ気を付けたら大丈夫ですよ」


「次、頑張ります」


「買ったらクラディス様のおごりで何か食べますかぁ」


「私は最近オープンした氷菓子さんの食べたい~」


「では、私は食堂の大盛りでもお願いしましょうかね」


「あはは……」


 僕が持ってるお金は何度も賭けれる程多くはない。できて一回だ。慎重に行かないとチャンスを逃してしまう。

 727番って人を買うってなると、今ある資金では到底足りない。だから賭けて勝たないといけないっていうのに……せっかくの一回を失ってしまったのは大きい。


 端末の部門ごとの名簿を開いて奴隷番号727番を探した。

 ……727番は三回目の『上位部門』っていうのに出るのか。


 ナグモさんから前聞いた話によるとこれから行われる『下位部門』っていう一回目の戦いは、450よりレベルが低い人達が出場するらしい。次の『中位部門』はレベルが450以上の人達が出て、そこに3回出ると4回目からは『上位部門』に繰り上げされるのだという。


 そこで注意したいのが、727番さん達のような戦闘奴隷はレベル規定に該当せず、闘技場側が決めた部門にレベルが離れていたとしても出されるという話だ。

 そうでもしないと戦闘奴隷のオークションの見せ場が作れない……とかそんな感じだと思う。


「クラディス様、始まりますよ」


 端末から目を離して、中央に目を向けると50余ほどの人が空間に立っていてピリピリとした殺気を飛ばしあっているのが見える。


 それを見て、頭の中でエリルに事前に話をしていたことを再度確認をした。


(エリル、大丈夫? できそう?)


(もちろんです! 魔素をいつもより多めに使わせてもらうのと、時間がちょっとかかってしまいそうですが、それでもいいですか?)


(全然いいよ。今日の目的はソレだし、しばらく訓練はお休みみたいだから心配しなくても大丈夫)


(わかりました! では、少し頑張らせてもらいますね!)


 エリルと話していたのは『鑑定』で戦闘奴隷の人の魔素を見てもらって、称号Ⅰがあるかどうかを確認するというものだった。

 僕ではまだ称号Ⅰの有無を見ることすらできないけど、エリルであるなら称号Ⅰのうちのどれがあるかは分からないまでも、存在の有無は確認できるらしい。


 戦闘奴隷や一般の奴隷は隷属状態という状態異常のようなことになっていて、その時は魔素や無意識化でプロテクトされているのが弱まる。抵抗力が弱まるので、レベル差があったとしても見ることが可能なんだと。

 

『さぁ! 闘技場参加者の諸君! 準備はよろしいか!? もうそろそろ試合の鐘が鳴るぞぉ! 武器を構えろぉっ!』


 実況席の男の声が響き、闘技台の中に意識を向けると戦士の中に感じたことがある魔素を発する人がいることに気付いた。


(……? あの魔素ってどこかで……)


 ――ゴオォオオオオンッ!!!


『鳴り響いたァァ!! 戦闘開始です!!』

 

 大きな鐘の音闘技場全体に響き、戦士達は一斉に動き始めた。

 鐘の音に驚いて闘技台へと目を戻したのだが、端末に書かれていたフードの人の情報はとても少なく、魔素や雰囲気に見覚えがあったのだけど僕が思っている本人かどうかは分からなかった。


「けど、あれってエルシアさん……?」


 参加番号112番:登録名:エルシー

 職業:冒険者――無形者(ローグ)


 エリルが戦闘奴隷たちの鑑定をしてくれている時間でその参加者を見ることにした。

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