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125 エリルからの暴露




 『身体強化』まで使って全力で走ったが、案の定遅刻したのでティナ先生に謝ると「遅刻するとはいい度胸じゃの~」と笑ってフランスパンで叩かれた。

 それ以外は特にお咎めが無く、流れるように普段の訓練が始まった。

 訓練の方はかなり慣れてきたと思う、ケトスとイブとやっていたクエストで中々強力な魔物(モンスター)との戦いで実力的にも成長してきたのが大きい。

 なにより訓練後に意識を失って倒れるってことはなくなったのは成長した証だ。

 『魔素感知』を使わないように訓練をしているから、今は気配を感じて魔物(モンスター)の位置を把握している。


「手が止まっとるぞ~、動け動け~」


「しんど……っ、い……」


 日が暮れるまで休憩なしの泥にまみれながらの戦闘。こうもずっとやってると、向かってくる魔物(モンスター)の顔に見飽きてきた。


 その訓練を終えて家に帰ると昨日までいたイブの姿は当然なく、再び一人だけの空間が広がる。

 服を機械に投げ入れて、小刀に着いた血と油を丁寧に拭いているとやっぱり声が聞こえないから寂しい感じがする。


「……エリル、いる?」


(いませーん)


「いるじゃん。ちょっと寂しくなったから何か話さない? 一気に人がいなくなったからいつもよく広く感じるし」


(……へぇー。ますたーも可愛いところがあるんですね、人らしいところというかなんというか)


 ちょっと不機嫌な様子のエリルは僕の目の前に、ちょこんっとでてきた。


「人らしくっていうか、まぁ人なんだけどね」


「といいますけど、すごい生活をしながら人探しをしたり、休日返上して戦闘奴隷の子を買おうとお金を貯めるって、普通の人が出来ることじゃないです」


「自分がしたいように生きるって決めたからね、無理だと思ったら逃げ出すさ」


 血と油で切れ味が落ちた小刀にナグモさんから借りた砥石をサッと滑らして、元の状態に戻して鞘に収めてベッド横の台に眼帯と一緒に置いた。


「……もう、この世界に順応しましたね」


「ヒソト草ならもう集めれれる程度にはね。僕もあの時と比べて強くなったし、勉強もさせてもらった。もう、ある程度のことならできる気がするな」


「ランクアップもしましたし、お仲間さんも増えました! すごく順調ですね!」


 ちょっと最後の部分が嫌味っぽく聞こえたけど、特に気にせずに話を続ける。


「ケトスとイブはお仲間……というより、友達って感じかな。二人とも属してる所があるし、僕とずっと居てくれる訳じゃないからね。頼れる人達ではあるんだけど」


「友達ですか? んむ、仲間と友達の違いが私にはわからないですケド」


「じゃあ、僕のエリルの関係は?」


「私とますたー……? 恋人ですかね! キャアー!」


「ハズレって言いにくいことを言わないで……。僕とエリルは多分、仲間かな。ずっと一緒にいるからもっと違う言い方があるかもしれない」


夫婦(ふーふ)とかですか?」


「ふーふ……?」


「はいっ! 私、ますたーと話してない間は基本お勉強をしてますよね! 地球のこととか、この世界のこととか。その中で最近知ったのですが、男女で一緒にいる人のことを夫婦(ふーふ)って言うんですよね!」


 目をキラキラさせているけど、その夫婦って言うことに対して大きな誤解をしている気がする。


「……いい、エリル。夫婦っていうのは、愛し合ってて結婚をしている男女のこと! 僕とエリルはそういう関係じゃないでしょ」


「私はますたーのこと愛してますよ!」


「いや、だから……。え、どうしたの? なんか積極的なアプローチしてくるけど何かあった?」


 嫌味っぽく言ってきたり、そうかと思ったら突然夫婦だと言い出したり、今日のエリルはどこか変だ。


「何かあった、ですか? へー! ご存知でないんですね!」


「ご存知でない……です」


「私は! ヤキモチをやいてるんですよ!!」


「ヤキモチって……誰にさ」


「最近構ってくれなかったと思ったら、昨日の夜にあんなことされちゃって……ますたーのバカ!! もー!!」


 グイグイと詰め寄ってくるエリルの肩に手を置いてなだめると、しかめっ面で僕の隣に移動して僕の顔を見上げた。


「昨日の夜! あの青髪の少女はますたーにチューしたんですよ!」


「へ……?」


「分かりませんか!? 接吻です! キスです! 口付けです!!!」


「ちょ、ちょっと! 僕そんなことされてないって!!」


「ますたーが寝たあとにされてました!!」


「は!? いや! え!?」


「しっっかりとされてました! 私の目でしっかりと見てました!! 私のますたーの上に乗って熱いベーゼをして、青髪の少女は恍惚の表情を浮かべて……!!」


 熱がこもった言葉をぶつけてきて僕の膝をパシパシと叩いてくる。


「う、うそだ。イブがそんなことをするわけ……。したとしてなんでそんな……」


「知りませんよ! ご自分で考えてください! ふーんだ!」


 最後に重たい一撃を横腹に入れられて、頬を膨らませたエリルは僕の体内に入っていった。

 エリルが消えたら一層静かに感じて、頭が働かないままでベッドに仰向けで横になる。自分の右手で自分の口に手を当てて、段々と恥ずかしくなってきて枕に顔を埋めて唸った。


「ぅぅぅぅ……」


 イブが僕にキスを? どうして……?

 イブの意図を探したり、事前にそんな様子を見せなかったことを思い返して頭を悩ませていると気がつくと寝ていた。


 そんなことがあったから、ティナ先生に「女の人ってよくわからないです」と相談をしたら、「ワタシもよく知らん」と言われさらに頭を悩ました。

 元の世界とこの世界でも女の人の考えることは僕にはわからない……。


(ぼくとイブは友達じゃないの……?)

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