103 子どもながらの奴
(ブックマークありがとうございます、嬉しくて昼食をコンビニ弁当からお弁当屋さんのお弁当に変えました)
「よし、魔導の方も応用可能になってきたな」
さっきの場所の置換は火穹窿の座標指定の応用だ。コレ、まだまだ色々と応用ができそう。
今の勉強具合だったらまだまだ時間がかかるし、魔導も完璧に理解している訳ではないから足が遅かったり止まっている魔物にしか使えないけど、そのうち高速に動いたり体が小さいのにも使えるようになれると思う。
(それに、出せる本数が増えた……!)
成長を感じてニヤニヤしていたら『魔素感知』に引っかかっていた他三体のオークが森の奥から凄まじい勢いで近づいているのが分かった。
「……ちゃんと2体倒したから、そろそろ一緒に倒さない?」
「えー。クラディスの勇姿もっと見たい~」
「分かる」
「ケトスはいっつも見てるでしょ」
「ははは」
「笑ってごまかさないで」
「クラディス戦って~!」
「……ぁー、じゃあさ、誰がオークを一番に倒せるかを競走するっていうのは? 僕はイブの戦い方を見たいし、ケトスの戦い方も見たいでしょ?」
ごねる2人に僕らしくない提案をしてみた。これ以上戦闘を見られるのは小恥ずかしい。
僕の提案を受けるか否か悩んでいた様子だったが、渋々承諾をしてくれて僕の横に並んだ。
「一番に倒せた人には何か特典みたいなのってあるの?」
「……他の2人から褒められる……とか?」
「えぇー」
「クラディスのご飯を食べれる! とかは?」
「それ僕が勝ったらどうなるの?」
「どうなるの……?」
「え、ボクの料理とか? 包丁の握り方も分からないけど」
「……まぁ、後々考えたらいいよ」
これから魔物と戦う冒険者というより、学校の帰り道でのかけっこ勝負をする子どものような緊張感がまるで感じられない会話をしていると、足音がこちら側まで聞こえてきた。
「じゃあ行くよ、5、4、3、2、1……」
ヌッと森の奥から顔を覗かせたオークに対して僕はカウントダウンを始め、魔物の討伐を競うっていう命知らずなことを始めた。
開始秒が短くなると、僕は小刀を構え、ケトスは剣を抜き、イブは手をプラプラとした。
「――開始!!!」
◇◇◇
僕が提案した魔物を倒す速度の競争っていう、普通の人はしないような恐ろしいことを二人は承諾してくれて、実際オークに対して行ったのだが……。
その競争は一瞬で終わり、直ぐにドベが決まった。
「僕が早かったかなー?」
「いや、ボクだね」
「……僕は1番遅かったですよ。」
オークの死体の上に腰掛けている2人はハハハと笑った。
僕はそれを見て、改めてこの場に普通の人間はいないのではないか? と思った。
それに、戦い方を見たけど2人は戦闘能力がとても高い。自信をもって僕より強いって言える。
イブの戦闘はまだ未知数な部分が多いけど、足元からオークの全長より2倍くらい高い水の槍を発動させ、一撃で倒していた。
ケトスはシンプル。あの細長い剣を真っ直ぐ振り下ろしてオークの体を上から下まで真っ二つ。
なんで2人の戦いが見えてるのかって? 開始の合図を言い終えたのと同時に目の前で起きたから。僕はまだ距離を詰めてる途中だったのに、もう二人の戦闘は終わってたんだもの。見る余裕というか、視界に入ったという方が近い。
「この調子なら上位個体も大丈夫だね」
「あぁ……うん、そうだね」
「何落ち込んでるのさー」
「クラディスしょぼくれモードだ」
「おぉ……しょぼくれないでー」
「あー、怒りそう」
「僕とイブさんのどっちが勝ったか分からないから、どうする?」
「……いいよ、2人にご飯作るよ」
「「おぉ!」」
「その代わり! 材料代はそっちが負担してよ!」
「それはもちろん!」
オークの死体はイブが回収をしてくれて、僕達はさらに奥へと入って行った。




