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ガチ勢乙。ネトゲは遊びじゃねえんだよ  作者: にしだ、やと。
Ep1. 乙に舞い降りたガチ勢
6/50

1-3. チュートリアル 2/2 -戦闘練習はさくさくと-

 道具箱を調べると自動的にアイテムを入手することができた。

 手に入れたのは『ぼろいショートソード』と『ぼろいナイフ』の二種類。

 どちらもチュートリアル用の一番弱い武器だな。

 これはcβTでも同じだったので、とりあえずそのまま始まった装備に関するチュートリアルをスキップする。


 インベントリを開いて、ぼろいショートソードに〈フォーカス〉。

 情報、アイテム化、装備、捨てるなどとメニューが出てくるから、装備を選択。

 これで装備完了だ。

 もちろん全て思念操作でできるから、慣れれば1秒とかからないし、何もないところで手を動かすなんていう傍から見ればお間抜けな姿を晒す心配もない。

 ああ、思念操作が苦手でも設定をいじれば手を動かして操作することも当然可能になるから安心してくれ。


 ここでチュートリアルクエストの2が完了された。

 次のクエストは外に出て周囲を調査するって内容だな。

 具体的には遺跡を見つける、遺跡に入る、遺跡から出るの三つ。


 見つけるも何も外に出てまっすぐ30秒歩いたところにあったから一瞬で完了。

 この出入りのチュートリアル的な意味としては、遺跡の出入りでマップの切り替わりってのを覚えてもらう目的だ。

 VRじゃフルオープンワールドなんて当たり前で、マップの切り替え処理が行われないゲームがかなり多いんだが、乙ではあえてマップの切り替え処理を挟むようにしている。

 これは、特定のインスタンスマップに移動するときだけ切り替え処理を行っていたのでは没入感が損なわれるため、それを避けるため普段から切り替え処理を挟むことでこの世界ではこれが当たり前なのだと理解させる目的なんだと思う。

 慣れてしまえば全く気にならなくなる問題だからな。

 ついでに言えばあまりにもシームレスすぎると現実との区別がつかなくなって、ゲームらしさが失われるから拘っているとも開発者インタビューでは語ってたな。


 おっと、遺跡から出ると4つ目のクエストが発生したようだ。

 さっきまではいなかったモンスターが遺跡の前にうろうろしている。

 こいつを倒すのが次のクエスト。

 要するに戦闘チュートリアルだ。


 戦闘チュートリアルでは先程までのクエストとは違って明確な指示が出される。

 これに逆らうことは不可能、だと思う。

 もしかしたら可能なのかも知れないが、そういう検証は検証好きがやればいい。


 まずは一つ目の指示、モンスターに〈フォーカス〉せよ。

 早速モンスターに〈フォーカス〉――つまり意識を軽く集中して対象を選択する操作――を当てると、モンスターの頭上に赤いカーソルが浮かび上がり、白文字で『ビーニャ』と表示されている。

 発芽した豆のような見た目をしたこいつは、乙のマスコットモンスターとも呼べる存在。

 他のゲームで言えばスライムポジションのモンスターだ。

 サイズは50cm程度と豆にしちゃ随分巨大だが、モンスターとしてはかなり小さい。

 しっかり描かれた顔は何処か間の抜けた表情で……何気に人気のあるモンスターだ。


 さて次の指示は、〈フォーカス〉を維持して攻撃を意識せよ、か。

 というわけで〈フォーカス〉を維持したまま攻撃することを意識する。

 するとどうしたことか、俺は何も身体を動かそうとしていないのに、アバターは勝手にショートソードを鞘から抜いてビーニャに斬りかかり始めた。


 早くもなければ遅くもない、極めて単純な軌道で剣が振り下ろされる。

 自分では操作していないのに、腕を振っている感覚。

 これがこのゲームの特徴の一つ、オートアタックシステムだ。

 どうしても体を動かしての戦闘が苦手すぎる人や、単調作業に疲れた人向けに、システムが自動的に戦闘を行ってくれるシステム。

 設定をいじればスキルの自動発動とかもしてくれるし、モーション値が一定になるし、相手が避けようとしなければ確実に当たる軌道で攻撃してくれるし、最短のスパンで攻撃を繰り返すから、使い方次第では非常に便利なシステム。


 ただしその欠点は……。


 ――ビーニャに13のダメージを与えた

 ――ビーニャに15のダメージを与えた

 ――ビーニャから7ダメージを受けた


 このログを見てもらえば分かる通り、アクションゲームならして当たり前、できて当たり前の回避行動を一切取らないことにある。

 俺のコントロールを離れた俺の身体はしっかりとダメージを稼ぎつつも、極めて遅いビーニャの攻撃をその身で受け続けていた。


 ゲームだから痛みは全くないし、序盤だから死ぬ要素は一切ないが、それでもあのとろい攻撃を無様にも受けている様は見ていられない。

 まあそれも、このチュートリアルが完了するまでの辛抱だ。


 ――経験値7獲得

 ――クラス経験値11獲得


 5発殴ったところで、ビーニャを倒した。

 獲得できたのはたったこれだけの経験値。

 レベルもまだこれだけじゃ上がらない。


 とここで追加ポップ。もちろんまたビーニャだ。

 次の指示は、自分で体を動かしてモンスターを倒せ、だ。


 ようやくここまで来てほんとうの意味で初戦闘になる。

 先程のオートアタックシステムの説明はシステムの説明という意味よりも、このチュートリアルへのつなぎの意味合いが強いのだろう。

 勝手に身体を動かされる経験により、その武器の使い方をレクチャーされるって寸法だ。

 剣なんかはとてもシンプルな操作だけど、弓はちょっとゲーム要素が強くて癖のある攻撃方法になるから、どうしてもこういうのが必要になるのだ。


 ――経験値7獲得

 ――クラス経験値11獲得

 ――クラスレベルが上がりました


 特に語る内容もなく、さくっとビーニャを倒す。

 もちろん無被弾だよ。

 剣でも弾けるんだし、あんなトロイ動き、かするほうがおかしいってもんだ。


 クラスレベルが1になったことで、スキルポイントを獲得。

 そして当然のように出てくるスキルに関するチュートリアルはスキップスキップ。


 このゲームではクラスレベルが上がるとスキルポイントが手に入る。

 そしてクラスごとに取れるスキルというのが決まっていて、ポイントを割り振ると習得可能。

 スキルごとに最大レベルが決まってて、ポイントを追加で振っていけばどんどんそのスキルのレベルが上がって、強くなるって感じ。


 β時代にたっぷり検証したから、どのスキルに何ポイント振ればいいかとかは序盤は全て把握している。

 もちろん修正が入ってるところもあるだろうから、そのへんはやりながら調査が必要だけど、まあ大雑把には同じ方針で問題ないはずだ。


 ソードマンスキルは全部で4種類。

【バッシュ】、【ダブルスラッシュ】、【プロヴォーク】、【ウェポンガード】。

 俺がまず取るのは【バッシュ】だ。

 というか近接物理アタッカーならバッシュさえ5にすればソードマン時代は他はどうでもいい。

 そのくらいバッシュは強い。

 具体的にはSP消費が少なく詠唱時間は0でディレイも0でリキャストタイムも0、そのうえモーションディレイも通常攻撃と同じという、破格の性能を持っている。

 もちろん威力もなかなかに高く、cβT時代と同じ仕様であればLv5時にはスキル倍率300%を誇る。


 強いて言うならそもそもソードマンはSPが少ないからすぐに枯渇するという欠点があるけど、序盤はキャラレベルが良い速度で上がるし、キャラレベルが上がればHPSP全回復なのでSPがあるなら全力で連打したほうがいい。




 さて、チュートリアルもここまでだ。

 他のプレイヤーはきっと前情報に踊らされて今しばらくこのチュートリアルマップというソロ専用フィールドでレベリングに勤しむだろうが……俺達は先に進ませてもらおう。



 ==Status==

 キャラクターレベル:1

 クラス:ソードマン Lv1


 MHP: 120 MSP: 38


 力  : 7

 敏捷 : 30

 器用 : 1

 魔力 : 1

 体力 : 5

 運  : 0

 攻撃 : 21 + 0

 魔攻 : 6 + 0

 防御 : 6 + 4

 魔防 : 3 + 0

 移動 : 3


 CP: 0 / 0


 ■クラスアビリティ:

【剣装備】【盾装備】【ソードマンスキル】


 ■スキル:

【バッシュ】Lv1/5


 ■装備

 右手 : ぼろいショートソード 左手 : なし

 胴 : コットンシャツ

 外套 : なし 頭 : なし

 腕 : なし 脚 : なし

 アクセサリ1 : なし アクセサリ2 : なし

 ==========


[!] TIPS


■ 思念操作


思念接続でのインターフェース。

文字通り考えるだけで必要な操作が全て可能になっている。


意識を軽く集中させて対象を選択する 〈フォーカス〉

実行操作などを宣言する 〈デクレア〉

文字列などを入力する 〈インプット〉

言葉や意思・イメージを送信する 〈テル〉


と言った具合にいくつかのモードがあるが、これらを全て感覚的に理解する必要があるので慣れるまで多少時間が必要。

現在では義務教育課程でこれらの操作を覚えることになるので、現代人であれば誰でもできる。

一方過渡期を過ごした世代は後から覚えることになったので、苦手な人も多い。


苦手な人向けにこれらの操作を仮想空間上のマウスやキーボードで代用する、仮想ハードウェアという技術も用意されている。

尚、Agora内でゲームができるのもこの技術の応用である。


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