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ガチ勢乙。ネトゲは遊びじゃねえんだよ  作者: にしだ、やと。
Ep1. 乙に舞い降りたガチ勢
4/50

1-1. Oblivion Onlineを起動します

 俺がO2――今じゃ『乙』だなんて呼称が定着してる――と出会ってから早1年。

 あれから俺は無事cβTに当選し、このゲームの素晴らしさを思い知らされた。

 全容を見たわけではないが、このゲームが自由度の高さではなく、ゲームとしての作り込みを徹底することで没入感をもたらそうとしていることがよく伝わってきたし、バランスこそまだ調整の余地はありそうなもののVRネトゲ全盛期の今でもとても満足できそうなシステムに仕上がっていた。


 そして今日、ようやくoβTが始まる。

 oβTはテストなんて名前が付いてるけど要はただの負荷試験に過ぎない。

 大抵のゲームがそうであるように、乙でもoβTで深刻な問題が起きない限りはそのまま本サービス開始という流れになる。


 つまり、今日は俺にとって乙の本当の始まりの日ってわけだ。

 今から約30分後、15時ジャストに戦いは始まる。

 その前に、最終確認だ。


 ---

 :トンヌラ

 @group 全員準備は出来てるか?


 :ラフ

 むしろトンヌラが来てないから寝てるかと思ってたよ


 :カズオ

 今把握漏れがないかラフっちに確認してもらってたとこだよん


 :みおん

 トンヌラさん開始30分前にくるとか重役出勤ですか舐めてるんですか氏んでください


 :トンヌラ

 俺はこの中じゃ一番情報持ってるから実際重役なんだが


 :みおん

 は?


 :ラフ

 ま、ともかく二人とは最終チェックしといたよ。予定に変更はないんだよね?


 :トンヌラ

 ああ。cbtからの変更点は多そうだが初動は予定通りで問題ないはずだ

 開発者インタビューの内容を見る限りはフィールド周りの調整は特になさそうだったしな


 :カズオ

 トンヌラっちさんきゅ!


 :ラフ

 じゃ、まずは予定通りにサクサクボリュームゾーン抜けちゃおうか

 合流はボクにwis飛ばしてもらうって感じで、キャラ名はもちろんいつもどおり「ラフ」だからね

 ---


 これでよし、と。

 Agoraのグループチャットで話していたのは、俺とラフで組んだスタートダッシュPTのメンバーだ。

 カズオは俺の別ゲー時代のフレで、Agoraで乙にoβTから参加するってつぶやきしてたから、なら一緒にやらないかと誘った。

 みおんのほうはラフが連れてきた女だ。別ゲーで知り合ったらしいが、詳しくはよく分からん。

 彼女とは最初一悶着あったが、その話はまたそのうちするとしよう。


 一応今じゃこいつらのゲームへの情熱と実力に関しては信頼している。

 安心してスタダを決めれるって寸法だ。


 よくソロのほうが効率いいんじゃとか言われるけど俺はそうは思わない。

 たしかに、一番最初はPT組むまでもないからソロのほうが気楽ではある。

 しかし後々のことを考えれば、構成をちゃんと考えてあるPTを最初から組んでおいて、ビルドについて都度相談しながら進めたほうが対応力が高くなるし、結果的に差が出やすい中盤で大きなアドバンテージを得やすいからだ。


 おっと、もう5分前か。

 マシンを起動して、PIDと有線接続する。

 フルダイブをする時はPIDで思念接続を有効化して、そのPIDを中継機としてメインの演算機であるフルダイブマシン本体に接続する必要がある。

 PIDとマシン間は無線でも有線でもどっちでもいいが、安定性と速度を考えれば断然有線接続だな。


 これで準備完了。

 使い古したマイベッドに横たわり、ダイブを開始する。


(――ダイブ、イン)



 ◆ ◆ ◆



 仮想空間内で意識を取り戻すと、よく見慣れた部屋に出た。

 リアルの部屋ではない、仮想世界の俺の部屋だ。

 ここからコンソールを起動して、今からプレイするゲーム、Oblivion Onlineを選択する。

 この部屋はさしずめホーム画面ってとこだな。


 視界に表示されている時刻は14:57。

 結構ギリギリだが、パッチのチェックを含めても余裕はあるだろう。


『Oblivion Onlineを起動します.

 クライアントデータ確認...OK.

 アップデートデータ確認...OK.

 アカウント情報確認...OK.

 起動シークエンス完了.

 ゲームを起動します.』


 事務的なログがつらつらと仮想モニタに流れ、再び世界が暗転する。



 ◆ ◆ ◆



 気がつけば今度は空に浮かぶ、小さな島にたっていた。

 広さは10畳くらいとリアルの俺の部屋よりも広い。

 ここはまだゲームの世界じゃない。

 ただのキャラクターセレクト画面だ。


 この画面も実に俺好みだったりする。

 何故か最近のネトゲはやたら高性能なAIをナビにしてログイン画面に置いてたりするんだが、ぶっちゃけあんなのいらん。

 ログイン画面ではキャラが選べればそれでいい。


 目の前に浮かぶ仮想モニタから事前作成しておいたアバター、『A4』を選択する。

 容姿に特に拘りがない俺が作っておいたのは、黒髪黒目の短髪、イケメンでもなければブサイクでもない、かといってネタに走るでもない、という何の特徴もない、とても退屈なアバターだ。


 このゲームはキャラクリエイト時点ですることはアバターの容姿を決めるだけで、面倒な種族決定だのステ振りだのスキル決定だの職業決定だのは一切ない。

 ゲーム内で必要なことはゲーム内で完結している、とてもいい設計じゃないか。

 初心者だってログイン画面でいきなりビルド決めろって言われても困るだろう?


 さて、時刻は15:00ジャスト。

 ゲームスタートといこうか。


[!] TIPS


■ベータテスト


正式版をリリースする前に、ユーザーに試しに使ってもらうこと。


オンラインゲームにおいては無料であるという特性を活かして、宣伝及びバグチェック、バランスの確認などを目的として行われることが多い。

ここではオンラインゲームにおけるベータテストについてに限り説明する。


βテストには二種類ある。


クローズドベータテスト(cβT、cbtともかく)

事前に応募してもらったユーザーの中から抽選を行い、規定の人数までのユーザーに体験してもらうテスト。

基本的には一回あたりのプレイ可能期間が非常に短く、開発段階としてもまだ調整中の事項が多い場合がほとんどである。

複数回実施されるケースもある。


オープンベータテスト(oβT、obtともかく)

期間中であれば誰でも参加可能なテスト。

この段階ではゲーム自体の調整はほとんど終わっており、無料試用期間としての意味合いと、ネットワークにかかる負荷を試験する意味合いが強い。

cbtと違い、obtのデータは本サービスに引き継がれる事が多い。



また、オンラインゲームにおいてはベータテスト参加者には何かしらの特典を付与することが多い。

大々的な宣伝は正式サービス開始時に行われるため、ベータテストから参加しているプレイヤーは特にそのゲームに対する意欲が高いことが多く、いわゆるトップ層と呼ばれる位置づけになりやすい。


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