2-6. 次なる大陸を求めて
委員長 To:A4 『ちょっと検証お願いしたいんだけどいいかなー?』
夜、休憩を終えてログインした俺を待っていたのは委員長からのwisだった。
ログインした瞬間に飛んできた辺り、完全に待ち受けていたんだろう。
A4 To:委員長 『まあ内容によるな』
委員長 To:A4 『A4君にも得のある内容だから大丈夫だよ! えっとねー、頼みたいのはクエストが受けられるかどうかと、受けられるなら内容の確認かな?』
A4 To:委員長 『クエ? そんなら明日でもいいか? 今からパーティでレベリングなんだが』
委員長 To:A4 『別にいいけど、結局パーティの皆やることになると思うよ?』
A4 To:委員長 『どういうことだ? そんなにうまいのか、それとも入場系か?』
委員長 To:A4 『ある意味入場系? 別地方に移動できるんだってー』
A4 To:委員長 『別地方? オルタニアでもバーランでもフィカンでもなくて、ってことか』
委員長 To:A4 『そうそう、30になった子が行けるようになったって言っててさあ、私もそのクエ出来るか試したけどダメだったから30レベが条件なのか、それとも他にフラグあるのか判断つかないから30超えてるA4君に声かけた感じだね。どうかな? そろそろこの辺だけじゃ狩場厳しいんじゃない?』
A4 To:委員長 『狩場はまだ大丈夫なんだが……まあでも新しいエリアのほうが稼げる可能性は高いな。わかった、とりあえず今日やることにするから分かってること教えてくれ』
委員長 To:A4 『さっすがA4君! メッセージおくるねー。じゃ頑張って!』
オルタニアから徒歩で移動できるマップ数はそこまで多くないということは暇な連中の調査によって判明していた。
だから他の地方は単に未実装なだけかと思っていたが、どうやら違うらしい。
だとするなら、いかない理由はない。
それに、委員長が把握しているだけでもすでに30に到達してる連中がちらほら出ているってことは俺たちものんびりしてられない。
さっさとそのクエとやらをクリアして、うまい狩場を見つけないとな。
『つーわけで、今日はそのクエをやる。そんで終わり次第新しい狩場を探して見る感じだな』
『あ、それってもしかして飛行船じゃない?』
『ん? カズーよくわかったな。何か気づいてたのか?』
『この前適当に街の中歩いてたら発着場があったんだよね。でもそのときはNPCを調べても何も起きなかったから、なんか条件あるのかなーって』
『そういうことか、まあ行ってみれば分かるだろ。ラフとmoniもそれでいいか?』
『うん、ボクは別に構わないよ』
『私も特に異議はありません。行けるようになったのなら行くべきです』
反対意見は出なかったので、早速クエスト開始場所である飛行船発着場へ移動。
そこにいるNPC[船長ツェペル]に話しかけてみると、情報通りクエストが開始された。
内容はざっくり言ってこうだ。
飛行船のコアパーツが壊れてしまって運行できなくなった。
しかも修理を依頼した工房からも一向に連絡が来ない。
ちょっと調べてきてくれないだろうか。
まあ、よくあるお使いクエってやつだな。
NPCを辿っていって、問題を解決してやればいいだけの簡単なクエストだ。
他の3人も無事受けられたみたいだし、発生条件はキャラレベル30以上とみて間違いないだろう。
『んじゃ工房とやらにとりあえずいってみるか』
『おっけー』
『鍛冶工房でいいのかな?』
『早く終わらせましょう』
予想通り鍛冶工房にいたNPCがクエスト進行フラグを持っていたのだが、パーツの素材となるフロトライト鉱石が発注先である鉱山の村フィカンから届かないらしく、俺達が様子を見に行かなければいけないらしい。
完全にパシリ状態なんだが、なぜNPCは自分で問題を解決しようとしないのか。
愚痴ったところで仕方ないのでターミナル経由でさっさと移動し、適当にフラグを持っていそうなNPCに話しかけていると、鉱山関係者だというNPCから鉱石を採掘できなくなったという話を聞くことに成功。
詳しくは親方に聞いてくれと言われたのでその親方なるNPCを探し、話しかける。
彼の話によると、どうやらフロトライト鉱石が取れる坑道に最近コボルトが住みつき、まともに採掘ができなくなったんだそうだ。
それならどっかに依頼出せよとか、せめて発注元に連絡くらいしろよとか色々と突っ込みたくなるような話ではあるが、まあゲームだからということで許しておこう。
とにかく、これでやるべきことはわかった。
その坑道とやらに向かい、コボルト共を殲滅してくればいいって話だな。
やること自体は簡単だが、しかし戦闘があるタイプのクエなら一応準備が必要かもしれない。
他のパーティがクリアしているんだから難易度はそこまできつくないだろうが、ラフもmoniもまだクラスチェンジしたばかりだからスキルの取得状況にやや不安があるのも事実だ。
俺とカズー、それからうかは少し上げてあるから大丈夫だが……。
『あ』
そこまで考えたところで、すっかり忘れていたことを思い出した。
『どうしたの?』
『いや、すまん……一人忘れてたやつがいたわ……』
『え?』
『A4っち……わざとじゃなかったんだ……』
『私はてっきり予定が合わなくて来れなくなったのかと』
『いや、まじですまん。ちょっとwisするわ』
そう、うかだ。
金曜からずっと一緒にやってきたのに、今の今まですっかり存在を忘れてしまっていた。
朝会ったときに一人で楽しそうに活動してたし、一応最初の約束では20までってことになってたから別に絶対誘ってやらないといけないってわけじゃないんだが、それでもあれだけ一緒に狩りしたのならもう正式にPTメンバーだと言っても別にいいだろう。
ってかいつの間にかPT抜けてた上に時間どおりに来なかったあいつも悪いと言えば悪いんだが。
フレンドリストにはちゃんとログイン状態で表示されてるし、どうせマケでも見てるんだろうな。
A4 To:うか 『すまんお前のこと忘れてたわ』
うか To:A4 『わっ! 急に驚かさんといてーな。忘れてたって一体……ってあぁ!』
この様子だとこいつも集合時間をとっくに過ぎてることに気がついていなかったみたいだな。
時間を気にしないのは商人としてどうなんだ……?
A4 To:うか 『今次の地方に移動するための前提クエやってるんだが、くるか?』
うか To:A4 『ホンマですか!? 行きます行きますすぐに行かせていただきますー!』
A4 To:うか 『んじゃメッセージで手順送るから、追いついてくれ。こっちは準備しながら待っとくから』
うか To:A4 『りょーかいですー!』
よし、うかが忘れていてくれたおかげで俺があいつのことを忘れていた事実をうやむやにできた。
本人が気にしてなければこういうのは何も問題にならないからな。
メッセージを送って、あいつが来るまで適当に時間つぶしてるか。
そんなに長いクエじゃないしすぐ来るだろう。
[委員長メモ]
「マップ情報は探索ガチ勢が嬉々として公開してくれる」




