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ガチ勢乙。ネトゲは遊びじゃねえんだよ  作者: にしだ、やと。
Ep1. 乙に舞い降りたガチ勢
16/50

1-13. とある委員長のお仕事風景

 97……98……99……100っと。

 よーし、これでまずは素手の通常攻撃ダメージのデータは取れたかな。

 次は武器を装備してっと……。


 私の名前は委員長。

 もちろん本名は別にあるけど、この世界……というかネット上ではずっとこの名前で通してる。

 趣味はゲーム全般。特技は強いて言うならプログラミングかな?

 子供の頃から親の影響で機械をいじったりパソコンで遊んだりしてたら、いつのまにか仕事にできるくらいにはそっち方面に強くなった感じ。

 年齢はギリギリまだ20代のイケてるお姉さんだ。


 ここ数年は特にMMORPGっていうジャンルにハマっていて、巷じゃ検証班なんて言われるプレイスタイルを続けている。

 初めてプレイしたタイトルは普通に遊んでいたんだけど、ある出来事がきっかけでそっち方面に目ざめてしまった。

 元々地道な作業は苦に感じなかったし、データ整理も得意な方だったから結構上手くはまって、今じゃ仕事もやめてこれ一本で生計を立てられてる。


 最近のゲームはやたらと高度で複雑になっているし、攻略情報の需要っていうのは日に日に増えていく一方。

 そのくせプログラム本体にかけられた解析対策のプロテクトは年々強化されていくから、古いゲームみたいに、データ吸い出してはい解析終了、みたいなことができないんだよね。

 だから今私がやってるみたいに人力で一つ一つのデータを取得していって、自前のソフトで解析をかけていく必要があるわけ。


 けど張り切りすぎちゃったせいなのかな、同業者を完全に駆逐する形になっちゃってるんだよね。

 似たようなことする人はそれなりにいるんだけど、中途半端な情報しか上げられなくて結局ユーザーは情報量の多い私の方にくることになって、それでもう諦めちゃう。


 まあそんなわけで、私が運営する情報サイトはアクセス数もいっつもすごくて、おかげで投げ銭やら広告収入やらでたんまりと儲けさせていただいてます。

 ぶっちゃけた話、新作でた直後なんかは会社勤めの頃よりも収入が大きくなるんだよね。

 ほんと、ボロい商売ですわあ。



 で、私が今やっているのはO2っていう今日cbtが始まったばっかの新作タイトル。

 当然VRMMOで、ゲーマー界隈じゃ結構話題になってる。

 うーん、なんていうか、大衆に媚びないスタイルっていうのかな?

 そういうのが評判になって、今じゃAgoraでもその話題で持ちきりなんだよね。

 ゲーマー向けに作った結果大衆にまで響く形になった、みたいな?

 こりゃ稼げそうだと私も睨んで、知り合いの廃ゲーマーでO2のcbtに参加してた子何人かに声かけて、一口噛ませていただいた感じです。


 これまで他のタイトルで積み重ねてきた実績もあって、立ち上げた攻略サイトのアクセス数も順調に伸び、ガッポガッポの予感。

 今日中に正式仕様のデータ検証を一通り進めてしまえばますます稼げそうだから頑張ってる感じ。



 まずはダメージ計算式を解析するために、パターンをいくつか変えながらそれぞれ100試行ずつデータをとってるところ。

 O2では便利なことに外部プログラムの利用が制限付きではあるけどサポートされているから、解析用データを入力するのがとてもはかどっている。


 もちろん、標準のメモ用ソフトにデータを入力したところで、それ以上何かが勝手に起こるわけはないんだけど、私の場合は違う。

 VRマシンから別の計算用メインマシンにデータを送れるようにちょこっと工夫しているので、ゲーム内でデータ入力して保存すればあとは現実世界で私の組んだAIちゃんが勝手に解析を進めてくれるようになってるんだよね。


 あ、もちろん利用規約に抵触することは一切やってないよ。

 私は単にデータのバックアップをメインマシンに送ってるだけだし、送ってるデータも私が手動で入力した数値だけだし。

 普通にプレイしていれば入手できるデータを外に持ち出すのはチートでもなんでもないですよね?


 さて、今日中に標準のダメージ計算式の解析と、ソードマンスキル全ての詳細な性能をまとめちゃおうっと。



 ◆ ◆ ◆


 一心不乱にモーション値まわりのデータを取っていたら、wisが飛んできた。

 この名前は……ああ、トンヌラ君だね。

 ゲームを変える度に名前変えてくるからわかりにくいんだよね、あの子。

 しかもその名前がなかなか皮肉が効いてるっていうか。

 嫌いなものを自分の名前にするのってほんと、あの子は捻くれてるよねえ。

 おっと、用事を聞かなくっちゃ。


 ...


 よし、念話終了っと。

 まさかトンヌラ君――この世界じゃA4君か。

 もうキャラレベル10になってるなんてびっくりだよ。

 いくらこっちで多少情報統制してお膳立てしておいたからって、ここまで早いとびっくりしちゃう。

 なんていうか努力の方向性が間違ってるっていうか……そのひたむきさを少しでも他のことに向けたら、リアルでも結構頑張れそうな気がするんだけど、なんでなんだろうなあ。

 ま、ネットでリアルのことを詮索するのは良くないし、面白くもないしお金にもならないから気にしないけどね!

 彼のおかげで最新の情報はすぐ入ってくるし、ほんといいビジネスパートナーだよ。

 そのうちバイト代払ってもいいかもね?


 おっと、別のwisが飛んできたなあ。

 こんどは誰がどんな用事かな?


 ...


 何件か情報提供のwisの応対をした結果、cbt時代との変化点がだいぶまとまってきた。

 うん、もうそろそろ休憩時間はさみたいし、ここまでで確認できた情報は全部wikiにあげちゃおう。

 あ、ついでにAgoraで立ち上げたコミュの方も書き込み巡回しようかな。

 ゲーム内からは書き込めないからそこまでたくさん書き込まれてるとは思わないけど、時々私と直接やりとりしない人がたまたま発見しちゃった新情報とか上がってたりするからね。

 マメなチェックも大事なお仕事!

 あー初日はホント忙しい!


 ...


 よし、リアルでのお仕事完了!

 ご飯はさっとカップ麺とビタミン剤で済ませたし、軽くストレッチもしたからログインの準備もバッチリ。

 あ、そうだ。

 AIちゃんに一個お仕事お願いしとこうかな。

 まだ私がキャッチアップできてないAgora内のつぶやきでO2に関係してそうなのをまとめておいてもらおう。

 他ゲーからの知り合いでO2もガッツリやる人とはもうコネができてるけど、O2で頭角を現してくる人もいるだろうし、そういう人には早めに唾を付けとかないとね。

 そうだなあ、O2は生産系も重要だし、仕様的に商人プレイガッツリやる人も出てきそうだからそのあたりの目星つけときたいかな。

 頼んだよ〜AIちゃん!


 ...


 うわあ、一時間ログアウトしてただけでメッセージが十件以上きてる。

 えーっと、これは単なるストーキング案件で、こっちはフレンド申請?

 そんなの却下却下。

 えーっと、これはクレクレ君か。これも無視しておっけーっと。

 まともなメッセージがきてないなあ。


 フレンド以外からのメッセージ拒否したいんだけど、まだこのゲームにきてから会ってないフレ登録予定の人そこそこいるから、しばらくは拒否設定にできないんだよね。

 全く、有名になるってのも辛いよね。


 あ、このメッセージはちゃんと情報提供だ。

 えーっと? 隠しクエっぽいのを見つけた、か。

 よし、これは詳細を聞いてみよう。

 聞いたこと無い名前だけど、こうして私にわざわざメッセージくれるくらいだしきっと()()()()()人だろうな。


 ふふふ、この情報がお金になりそうならいいけどな〜。


[!] TIPS


■ ゲームデータの解析・外部ツールの利用について


オンラインゲームにおいて、リバースエンジニアリングに当たる行為は規約違反とされている。

リバースエンジニアリングというのはプログラムそのものを解析して、そこから技術的な情報を抜き出す行為のこと。

要するに、プロテクトをかいくぐってデータを抜き出して、ここの計算式はこうなっています!

このモンスターのステータスはこうです!

なんていうのがNGってこと。


では委員長が作中で行っていることがOKかどうか?

答えは多分ギリギリOK、だ。

あくまで委員長はプレイ中に得られる数値から自力で式を逆算してるだけなので、本当にプログラムを解析しているわけではない。

そもそもその解析した結果があたっている保証は何処にもないということもあるだろう。


また、多くの場合ゲームバランスを崩しかねない外部ツールの利用は禁止されていることが多い。

プロテクトの厳しくなった現代ではまず不可能なのだが、自動プレイを可能にするBOTツールや、送受信されるデータを改ざんしてスピードハックするなんてのは当然BAN対象である。


ただし、ゲームバランスに影響しないようなツールの利用に関しては実質グレー扱いとなっているのがほとんどである。

例えば現在プレイ中のキャラクターがどの程度のdpsを出しているのかを表示するツールというものが作られたとして、これを使っているからと行って即刻BANされるということはまずない。

バランスを崩しているわけではなく、単に自力計算すれば出せる程度の情報を自動化してるだけだからだ。

無論、公式にこれ使っていいですか? なんて聞いたらダメと答えられるが。


チートはやめよう、絶対に。

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