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ガチ勢乙。ネトゲは遊びじゃねえんだよ  作者: にしだ、やと。
Ep1. 乙に舞い降りたガチ勢
14/50

1-11. 効率の足しにもならないイベントムービーなんて

 やはりマジシャンでは火力があまり出せないのが物足りないですね。

 もっといい装備を手に入れて、もっと上位のクラスにチェンジしてバシバシ高火力を出してmobを焼き払っていきたいです。

 さきほどのような失敗……、いえ、倒せたから別に失敗というわけではないですね。

 けれどやはりメインDD(ダメージディーラー)を張る身としてはLA(ラストアタック)は譲りたくないです。


 スタッフが出なかったのは残念ですが……まあいいでしょう。

 12になるまではこのIDを周回するようなので、それまでにきっと出るでしょう。出します。出しなさい。


 さて、気を取り直して次の周に行きたいところですがラフさんが言うにはこの遺跡にはまだいける場所があるみたいです。

 確かに自動退出処理が走りませんし、どういうことなんでしょうかね。


 私達はラフさんに導かれるまま、出口と思しき通路へ向かいました。

 この通路は先が真っ暗で見えませんが、マップが切り替わる部分は基本的にこんな感じなので歩いていけば別のマップに飛ばされるのでしょう。

 さて、ラフさんのいうお楽しみとは一体なんなのでしょうか。

 少し楽しみです。



 通路を抜けると、転移時特有の感覚が私の中を抜け、気がついたときには遺跡の中にあると思われる、小部屋に立っていました。

 そう判断したのは壁や床の素材が遺跡と同じだったからです。

 お楽しみと言うからにはもしかしたら綺麗な景色でも見られるのかと考えましたがどうやら違うみたいですね。

 こんな無骨な内装の部屋をみて感動する人間がいるとは思えません。


 それにしてもこのマップはソロ用マップなんですね。

 周りに私以外誰もいませんし、いくらA4さんといえどもPTメンバーである私を置いて何処かに行くなんてことは考えられませんから。

 もちろん、ラフさんやカズーさんのように優しい方々がメンバーを置き去りにする訳ありませんしね。

 それに、PTチャットが一時利用不可となっているのも判断材料となりました。

 基本的にどこにいてもPTチャットは利用できるはずで、それができないのはイベントで使われるマップくらいです。

 つまり、ここでは何かしらイベントが起きるということ。


 ……ああ、そういうことですか。

 これから起こることに察しがつきました。

 ではどういう演出が起こるのか、楽しみにしておきましょう。



 部屋の中央にはこいつを調べてくれと言わんばかりに1mほどの高さの台座が置かれていて、その上には手のひらサイズの球体が置いてあります。

 球体からは不規則に光が漏れ出していて、いかにも力の源っていう感じがしますね。予想通りであれば、これはクラスオーブでしょう。

 チュートリアルマップでみたオーブは特に光ってなかったと思うので、きっと未使用のオーブだけが光るということなんでしょう。


 では、演出に期待してオーブを調べてみることにします。


 期待に胸を膨らませて、光を放つクラスオーブに手を伸ばしました。

 その指先が触れるか触れないかくらいのタイミングで、オーブの光がより一層強くなり、思わず目を瞑ってしまいました。


 その瞬間。


 私は目を閉じているはずなのに、目の前に不思議な光景が繰り広げられました。

 誰かがその身に秘めた強大な力を振るう姿です。



 ある者はその大きな盾を駆使して敵の攻撃から味方を守り続け。


 ある者は冷気を自在に操り周囲に溢れる異形のものたちを凍りつかせ。


 ある者は鍛え上げた肉体をもって襲いかかる敵を次々に屠り続け。


 ある者は強大な力を込めた矢を敵陣に放ちその衝撃だけで壊滅させ。


 ある者は神聖な光を発して傷ついた仲間たちを癒やし。



 次々に切り替わっていく誰かたちの勇姿に目を奪われているうちに、私の内側に不思議な感覚が走りました。


 力が、溢れてくる。


 そうとしか形容できないはじめての感覚に私は、ああ、これがクラスの力なんだと心の底から納得させられました。


 そして最後に見せられた光景。

 それはこの浮遊大陸にあるとは思えない絶景でした。

 確かのこの世界はゲームらしく、ファンタジーっぽい綺麗な風景がたくさんあります。

 けれどそれらは手放しに美しいとは言い切れない、どことなく寂寥感の漂うものばかりです。

 グラフィック一つで感情を揺り動かすなんてこのゲームのアートディレクターは本当にすごいなと思いますが……。

 とにかく何がいいたいかと言えば、いま私が見せられている風景は、明るく、希望に満ちたものだということです。

 本当に美しく、これを見られただけでもO2を始めた甲斐があったというものです。


 もしかしたら、今見せられたのはこの世界の過去の映像なのかも知れませんね。

 ゲームを進めていけばいつかこういったシナリオに秘められた謎も解き明かせるんでしょうか。

 楽しみです。


 おっと、こんなことを言ったらきっとあのA4さんに笑われますね。

 あの人のことだから、効率の足しにもならないイベントムービーなんてスキップすればいいとか言ってきそうです。

 その意見ももちろんわかりますが、ゲームなんですからこういうのを楽しむのもたまにはいいと思いますね、私は。


 ガチでプレイするのは好きですが、それはこのゲームが好きになれそうだと思ったからでしか無いです。


 面白くもないゲームをガチでやったって楽しくないじゃないですか?




 さて、そろそろイベントも終わりです。

 光が収まってきたので、直に遺跡の外に放り出されるでしょう。


 いっぱい周回して、早く強くなりたいですね。


[!] TIPS


■ DD


ダメージディーラーの略称。アタッカーの別表現。

単にディーラーということも。

ゲームによってこの辺の表現は変わってくるので、その人が初めてプレイしたゲームで大体使う言葉が決まってくるだろう。


■ LA


ラストアタックの略。mobを倒した最後の一撃のこと。

ゲームによってはLAにボーナスが付くことがある。


O2においても複数PTで挑むボス戦では意味が出てくるが、単一PTで討伐する場合は全く意味はない。

moniが気にしているのは気持ちの問題である。



■ イベントムービー


VRMMOではイベントムービーが使われることは稀である。

なぜならフルダイブして自分で体を動かしている以上、勝手に体を動かされるという状況に拒否感を示す人が多いだろうと予想されているからである。

かといって自分が含まれないムービーを目の前で流したところで、没入感は得られないし、それならそんな無駄なものに割くリソースを他のことに割り当ててしまえ、と考えるのが妥当なところだろう。

せいぜい空中に映像を投影して動画を流すとか、その程度である。


ところが、O2ではその逆をあえていっている。

演出を工夫することでイベントムービーに代わるものを生み出し、念話技術を応用することでゲーム内のプレイヤーキャラクターのモノローグを表現するなどの挑戦を行っている。

オートアタックシステムも導入していることで、ある程度自動で体を動かされることに耐性ができるというのも、これらを可能にしていると言えるだろう。


これはVR世代にとってはかなり斬新な表現方法であり、本職のクリエイター界隈でも話題になっているらしい。


ちなみにイベントシーンはスキップ可能である。

それも含めてO2らしいと言えるだろう。


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