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第五話 悪魔と宝物庫

ぶれっぶれですが、定まってないですが、右往左往しますが、とても楽しく書いてます(アース自身)



「よし、じゃあとりあえず魔王はぶっ殺す方向で!!!」


にこやかな笑顔で突然そう言い放った優夜


突然の事にクラスメートはおろか、イスタスやフィーニアまで唖然とした表情で固まったまま言葉を紡げないでいる。ガルドだけは面白いものを見つけたような、半ば分かっていたかのような表情で笑っていたが。



「「「「「 いやいやいや、まてまてまて 」」」」」



クラスメート達が口を揃えてストップをかける。その様子に「ん?」と笑顔のまま首を傾ける優夜。


「に、兄さん、いきなりだけどどうゆうこと?」


「そうよ、突然魔王をぶっ殺すとか・・・」


「・・・どうしてなのか、理由を聞きたいです」


朝希や美月、陽菜が一番乗り気じゃないように見えた優夜の回答に対して答えを求める。


フィーニアやイスタスも一先ず喜ぶ前にその理由について聴いておこうと耳を傾ける。


「そりゃそうだろ。だって帰還の目処が立っていない以上、この世界に留まるしか今はない。が、魔族の進行は現在も進んでいて魔族領に近いこの国はいつ攻められてもおかしくはない。じゃあ帰還の目処が立つまでレベル1のまま優雅に王宮生活を送っていればいいのか?その間に魔族が責めてきたら?ガルドにもまるで歯が立たない状況で戦うのは勿論、逃げ延びて生き残るのも厳しいだろう。それにさっきの勇者の話・・・魔族を倒して国が平定した後に光の柱が・・・って事だったが、俺らの天職やスキルを与えているのが神で異世界転移に神の力も関わっているなら、呼ばれた理由を全うしない限り帰れないという可能性もある。だったら生き残る確率を上げるために、自身を鍛えて戦うこと。ついでに魔王とやらをぶっ殺しておく事は間違いじゃないと思うが?」


矢継ぎ早にそう説明する優夜を皆ポカーんと口をあけて見ている。


確かに説明的にはその通りなのだが、ステータスを見る前は「世界を救うなど一介の学生には無理だ」と言ってた優夜の見事な手のひら返し。希望が起きていたら「えええぇ!!?」と素っ頓狂な声を上げていただろう。


「えええぇ!!?」


どうやら起きていたらしい。


「理不尽だ・・・」と嘆いている希望を一瞥すると、優夜はイスタスとフィーニアに向き直り、改めて告げる。


「この世界を救うとか言うつもりはないが、俺達は俺達が生き残る為に魔族を討とうと思う。もちろん帰還の目処が立てばそれに越したことはないが、そう楽観視できるもんでもないだろう?まっ、せいぜい期待して俺らに尽くしてくれよ王様?王女様?」


にこやかな笑顔から一変、最後の方は割と邪悪な笑顔で恐喝?する優夜。


当の王様は「アレ?頼む相手間違えた?」といった様子で、王女様は何故か顔を赤らめて「優夜様・・・」と呟いているが、一応はこの国は救われるらしい。


イスタスは気を取り直して「そうかそうか」と心から安堵するような表情で優夜に感謝を伝えてようとする


「ユウヤ殿・・・心から礼を言おう。この国を代表し「とりあえずそういうのはいいからこの国の宝物庫に案内してもらおうか」


・・・・・・・・・・・・


「「「「「「 え? 」」」」」」」


ちょっと何言ってんの!?という視線がクラスメートだけでなく朝希や美月、陽菜からも優夜に突き刺さる。


「さっき言質は取ったからな。出来る限りの支援をする、装備や衣食住も任せろってな。なぁ?王様?」


先ほどのにこやかな笑顔をまた作り、王様に詰め寄る優夜。


イスタスは冷や汗を掻きながらも


「も、勿論だとも!出来る限り最高の装備を用意させてもらおう!し、しかし、宝物庫には初代やその他先代の国王達が残していったそれこそ国宝級のアーティファクト達が・・・」


その言葉を聴き「へぇ・・・?」と呟きながら更に悪魔の笑みを深める優夜。「し、しまった!」という表情を浮かべるイスタス。「勇者とは?」といった疑問を浮かべるクラスメート。


「ほほ~う、国宝級のアーティファクトねぇ・・・?じゃあさっそく案内してもらおうか」


そういって笑顔のまま王様の肩に手を乗せ「ん?ん?」と先を促す勇者とガラの悪い不良に絡まれる冴えない中年サラリーマンのような表情で歯を食いしばっている王様。


そんな優夜を見てますます頬を赤らめるもうダメかもしれない王女様と、二人を見て「がはははは」と笑う王国戦士長。それでいいのか戦士長。


「確かに歴代の王様たちが残していった品々は大切なんだろうだろう。うんうん。」


分かるわぁ~と良いながらうんうん頷く優夜。それに「分かってくれた!?諦めてくれる!?」と顔を輝かせる王様。しかし・・・


「・・・が、使われもせず保管されているだけの過去の遺物と、自国の民を秤にかける・・・なんて事はないよな~?」


一度は輝いた表情を、まるで優夜に悪魔の耳と翼、そして尻尾が生えているのを幻視しているかのような絶望を浮かべた表情に変える王様。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・し、しないです・・・・・・」


「なんだって?声が小さいなぁー?」


「・・・・・・し、しないですぅぅぅううううううううう!!!!」


「うわぁあん」と崩れ落ちる哀れな王様(中年)。


それを見てニヤリと口元を歪ませる勇者(悪魔?)


優夜の容赦の無さと異様な光景にドン引きしている勇者(仮)


「がはははは」と笑っている王国戦士長。


「止めてあげなよ戦士長・・・」と視線を送る兵士の皆さん。


カオスな空間に取り残された朝希、美月、陽菜とクラスメート。


「うわぁぁああん」と泣き崩れる王様の叫びだけが謁見の間に響いていた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





フィーニア、ガルド、そして優夜たちは王宮の廊下を歩いていた。


王様が正気を取り戻すのに時間が掛かると判断した優夜はフィーニアにお願い(脅して?)して宝物庫への案内をさせていた。


優夜の「おい、王女様・・・俺た「“フィニ”と、気軽にそうお呼び下さい優夜様。」・・・・・・お、おう。フィニ・・・俺達を宝物庫にあ「かしこまりました優夜様」・・・お、おう・・・頼んだ?」


という色々おかしいやり取りがあったが、脅してというのも何か違うかもしれない。


フィーニアは近衛兵や従者にイスタスを任せ、ガルドと共に優夜達を案内している。その間、先ほどのやり取りを見ていた美月が面白くなさそうな表情でツーンとしていたが、優夜は気付いていない。


謁見の間から宝物庫まではそれほど離れていなかったようで、5分ほど歩いてから屈強な兵士立ち並び守る大きな扉の前に一行は到着した。


兵士がフィーニアとガルドに気付くと膝を付き頭を下げ、声をあげた。


「フィーニア様、ガルド様。本日はどのような御用でしょうか」


「お父様からの命で、勇者様たちに宝物庫を案内する事になったの。通してくれるかしら?」


「ははっ!」


兵士達は立ち上がると四人掛かりで大きな扉を開き始めた。フィーニアは扉が開いたのを確認してから兵士の一人に声をかけた。


「それから、幾つか宝物庫からアーティファクトを持ち出すかもしれません。名簿を用意しておいて下さい」


「国宝をですか・・・?よろしいのでしょうか・・・」


「ええ、勿論よ。お父様もそれを望んでおられます。この国を救う勇者・・・優夜様にお力添えできるのです。これ以上の名誉はないでしょう」


そううっとりした表情で話すどこかおかしいフィーニアを見て、開いた扉の前へそれぞれ武器を構えキッと優夜達を睨む兵士達。どうやら、王女に何か洗脳の類の魔法でも使ったのかと疑ったらしい。近からずも遠からず。


優夜は両手を広げて「何もしてないよ~」といった態度だが、兵士達の目は変わらない。そこへガルドが仲裁に入る


「お前達の気持ちも分からんではないが、フィーニア様は操られている訳ではないぞ。いや・・・操られているというべきか?まぁとにかく王女様もお年頃という事だ。害意はないからここは俺を信用して通してくれ」


そう言うと兵士達は「ははっ」と目礼すると左右に分かれて扉の横に並んだ。


「・・・ですから優夜様はこの地に神から使わされた」とうっとりした表情でまだ何か喋っていた王女を置いてガルドは「こっちだ」と皆を誘導して宝物庫に入っていった。



宝物庫の中は絢爛豪華な様相を極めていた。

謁見の間の半分くらいの広さの部屋に黄金で出来た冠やネックレス、腕輪など宝石が散りばめられた装飾品の数々が所狭しと並び、眩く光り輝く剣や鎧、プラチナで出来た盾などこの世界でも元の世界でも、どれほどの価値があるのか検討も付かないような品々が並んでいた。


思わず美月たちも「おぉ~」と感嘆の声をあげる。


「中には呪われた装備や、使い手を選ぶような特殊なアーティファクトもある。気になるものがあったら俺に声をかけてくれ」


そう言うとガルドは扉の前で待機の姿勢を見せた。「好きなだけ見ておいで」という事だと理解した優夜と美月、そしてクラスメート達はニヤリと笑うと一斉に駆け出していった。


朝希と陽菜だけはそんなクラスメートを見た後、顔を見合わせ苦笑いを浮かべ歩いて見て回ることにした。


クラスの男子が「これ、どうよ!?似合ってる!?」とか女子が「こういう宝石の装飾品、憧れてたぁ~!!」と騒ぎ合っている中、優夜は部屋の最奥、壁に掛けられていた杖に目が止まった。


160センチほどもある大きな杖。金属で出来ているのかと見間違うような黒く鈍い輝きを放ち、雷のような形をした杖の先は細剣のように鋭く、先端には血のように真っ赤な大きい宝珠が付いていて絡み付く樹の枝のような細工が宝珠を支えている。目を凝らせば見た事もないような文字が杖全体に描かれているようだ。


「これは・・・?」自分でもどのくらい見ていたのか分からない。何故、刀剣などではなく杖から目が離せなくなったのか・・・そういった考えが浮かぶが、いつの間にかガルドが隣まで来ていて優夜に声を掛けた。


「ほう、これが気になるのか?」


そう言うとガルドは杖よりも興味深そうに優夜を見た。


「ああ、何でだかな。自分でも分からないんだが・・・この杖がどんな物なのか知っているか?」


「勿論知っているとも。と、言うよりか国民全員が知っているだろう。これは魔導騎士パラディンと呼ばれていた初代国王が使っていた杖であり、剣なんだ」


「魔導騎士・・・杖であり、剣?」


「そうだ、初代国王が膨大な魔力の持ち主で異世界召喚を行った事はイスタス様から聞いただろう?初代国王は類稀なる剣の腕だけではなく魔法の才能も秀でていたのだ。彼は命を司る樹神竜イグドラシルからその力を認められ、1本の牙を貰い、その牙で刀を作った」


「それがこれって訳か・・・けど、どう見ても杖なんだが・・・まさか逆さに持ってあの鋭い先で刺せってか?」


優夜が呆れたように尋ねると、ガルドが「いや」と苦笑しながら否定する。


「なんでも、魔力を通すと鍔のない剥き出しの刀身に形が変わるらしい・・・」


「らしい?」優夜が訝しげな表情で問う


「あぁ、これは先に言った主を見定める類のものでな。初代以外にも歴代の国王や戦士長、世界中の騎士達が魔力を通したが選ばれる事はなく変化しなかった・・・そんな伝承は偽りなんじゃないかという声もあるくらいだ」


「ふぅ~ん・・・」優夜が訝しげな表情を杖の方に向けるとその手に取った。


重みが腕全体に伝わってくる。手に持った質感を確認すると金属ではないが、想像を超えるほど限りなく硬質な樹といった印象を受けた。「神樹竜イグドラシルの牙ね・・・」と一人呟くとステータスプレートに流した時のように魔力を杖に流しだした。




ドクン・・・




「―――ッッッ!!!」




まるで杖が息を吹き返したかのように鼓動を一度脈打たせると、優夜の身体から魔力が吸い取られていく。まるで存在そのものを吸い取られているかのような感覚に焦りを浮かべる優夜。


「お、おい!大丈夫か!?」


ガルドも異変に気付いたのか優夜に声を掛ける。が、それを気にする余裕もないようでガルドや部屋にいるクラスメートにまで鼓動が聞こえ始める。



ドクン――――ドクンッ――――――ドクンッッ!!



「っっっっぁぁぁぁああああああッッ!!好きなだけくれてやるちくしょうがぁぁぁぁああああ!!!!」


優夜は吸い取られるような感覚から吸い取られまいと魔力を制御しているのを止め、代わりに自身の魔力を全て杖を流し込む。


バリバリと白いスパークが迸り、杖に刻まれていた文字が白く輝き浮かび上がる。


「っっっらぁぁああああああああ!!」


優夜が残り僅かな魔力の全てを注ぎ込むのと同時に杖に刻まれていた文字が眩い閃光を放ち、召喚されたあの教室の時のように部屋全体を真っ白に包んだ。


優夜やガルド、部屋にいる全員が突然の光に目を眩ませる。


数瞬の後、閃光が徐々に落ち着いていき優夜がうっすらと瞼を開くとその手には幻想的なほど美しい剣が握られていた。


全長は変わらず160センチほど。自身の姿が映るほど磨き上げられ真っ直ぐに伸び銀色に鋭く光る刀身は諸刃の作りで鍔はなく、柄は杖であった頃と同じような質感は樹だが黒かった色合いがまるで生き返った樹木のように深く暗い茶色になっている。先端に付いていた赤い宝珠はなくなり、代わりに刻まれていた文字が魔力の鼓動に合わせて赤く脈打つように浮かび上がる。


「・・・・・・綺麗だ・・・」思わずそう呟いてしまうほど輝く刀身も妖しく浮かび上がる紋様も美しかった。



――――ふふっ、ありがとう。



「・・・・・・・・ッッ!!?」


突然頭の中に響いた声にバッと周りを見渡す優夜。近くには白目を剥き口をあんぐり開けているガルドが居たが、スルーだ。


――――こんなに美味な魔力はいつぶりだろうか。御蔭で枯れ果てていたこの身も蘇る事が出来た。


(ガルドの声じゃない・・・女の声だ。聴いた事もない女の声が頭に響いてくる?まさか・・・)


優夜は手に持つ美しい剣に目を向ける。


――――その礼としてこの力。お主に貸す事にしよう。


頭に響く声がそう告げると、手に持つ剣の重みが嘘のように軽くなった。160センチを超える剣が羽根のような重さに感じる・・・今なら思う存分に振れるだろう。


――――限界近くまで魔力を抜いてしまったが、また魔力が回復したら注いでくれ。いずれこの身を変化させる事も出来るだろう。


(なんだかよく分からないが分かったと言っておこう・・・これからよろしく頼む)


――――フフフ、了解だ。主どの。


優夜が剣をじっと見つめたまま無言だった間に、部屋に突入したきた人物が一人。


「先程の光はなんですか!!?」


閃光が放たれるまで兵士の声も耳に届かず優夜の非道っぷりを語っていたフィーニア。


部屋に入って来て一番に姿を探すのは勿論、優夜。


優夜の手には自身が見た事もない美しい剣が握られている。壁に飾られていた杖が見当たらない。ガルドが白目を剥いて驚いている。先程の光・・・


どうやら事態を理解した王女は凄まじい勢いで優夜に詰め寄る。


「ゆ、優夜様!!!!もしや、そ、その美しい剣は、初代国王の・・・!!!!?」


その様子に思わず笑いが込み上げてきた優夜はにっこり笑うと


「あぁ、今から俺の相棒だ。」


そう告げた。

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