第四話 ステータスプレート
ステータスを考えるのめっちゃ難しい・・・ちょっと適当感溢れますが、訂正するかもしれません。
「(仮)ってなんなんだぁぁぁぁああああああ!!!」
謁見の間に悲しみを多分に含んだ叫び声が響き渡る。
声の主、四鳳希望は地に膝を着き、駄々を捏ねる子供のように地面を叩いていた。
そんな哀れな姿を見て見ぬフリも出来ず、かといって気の利いた言葉も出てこない優夜達は、微妙な表情で苦笑いを浮かべている。
「なんでなんだ!なぜ和泉優夜が勇者でこの俺が勇者(仮)なんだ!百歩譲って和泉朝希は分かる!が、なぜ和泉優夜が!?ないだろう・・・無し寄りの無しだろう!!?」
本気で泣き出しそうな希望を見て朝希がおろおろとしながらも少しだけ近寄り声を掛けようとする。
「し、四鳳くん?確かに(仮)って付いてますけど、ちゃんと勇者な訳ですし、それにきっと・・・」
慎重に言葉を選びながらなんとか宥めて話を先に進めようと朝希が声を掛けるが、どうやら今の希望の耳には届いていないようだ。
「大体、和泉優夜は勇者よりも悪魔だろう!?ブラコンで我侭で理不尽で暴力的で重度のブラコンで空気を読まなくてただのブラコンなのに!!!」
いつの間にか(仮)に対する叫びではなく優夜に対する愚痴に切り替わっている希望の心の叫び。
ブラコンと3回言っているのはきっと大切な事だからだろう。
この叫びを聞いているクラスメートの数人が「分かるわぁ~」と呟いたのを優夜の地獄耳は聞き逃さない。微妙な表情で苦笑いを浮かべたまま額に青筋がピキッと浮かんだ。
「あ、あのー、四鳳くん?それにくらいにしておかないと兄さんが・・・」
「何をするにも弟優先!弟!弟!!弟!!!天職“ブラコン”の間違・・・・・・・・・」
この後の展開が予想できてしまった朝希が躊躇いがちながら制止の声を掛けるが、ヒートアップして何が何だか分からないまま思いの丈を叫んでいた希望が、電池が切れたようにピタリと止まった・・・
まるで謁見の間を満たす全ての空気が凍りついたかのように感じるほどの寒気と重圧が自身の後ろの方から放たれ始めたからだ。
思わずギギギ・・・と壊れかけのロボットのような動きで引き攣った表情で振り返ると、若干俯いて表情が隠れているが只ならぬプレッシャー・・・
怒気を放っている男がいた。
「ひっ・・・!!」
短く悲鳴をあげる希望・・・
その声に若干顔をあげた優夜は・・・頭に青筋を浮かべたまま満面の笑みだった。
「なぁ・・・四鳳。」
コツコツコツ・・・と足音を立て、満面の笑みのまま近づいていく優夜。
希望は思わず尻餅をつき、引き攣った表情のままズリズリと逃げるように後退していく。
「理不尽だと思わないか?望んだ訳でもなく異世界に連れてこられて、望んだ訳でもなく勇者とかいう称号を与えられて、何故か罵される俺を可哀想とは思わないか?そこん所どう思う?んん?」
近づく毎に増していくプレッシャーにガクブルしている希望。目の前に来て覗き込むように顔を近づける優夜にもはや失神寸前といった様子。
異世界に転移して約1時間弱で、何故かすでに絶体絶命の希望にとって、天使のような声が聞こえた。
「もう兄さんってば・・・
四鳳くんが可哀想でしょ?それに・・・僕としてはすっごく嬉しい事を聞けたような気がするんだけど?」
この場にいる全員が凍りつくような重圧にブルブルしている中、特に何も感じていないらしい朝希が笑顔をひょっこり優夜の後ろから顔を覗かせた。
朝希を見た優夜からプレッシャーが弱まったのを感じた美月がそれに追従する
「そ、そうそう!良い事じゃない!ブラコ・・・じゃなくて、優夜が弟を大切に思ってるのは皆知ってるし!少しくらいあたしの事も・・・でもなくて、周りの事も考えてほしい時もあるけど皆理解してるからさ!」
美月がしどろもどろになりながら(若干想いの片鱗を暴露してしまいながら)場を落ち着かせようと声を掛けた。
「わ、わたしも・・・兄弟の仲が良いのはとっても良い事だと思います!と、とても羨ましいです!」
陽菜はまだ若干プルプルして美月の背中に隠れながらも、どうにか声を出していた。
「はぁ~~・・・。」
そんな二人とどこか必死に「うんうん!その通り」と頷くクラスメート、それから隣でニコニコしている朝希。それぞれを見て脱力したのか優夜が大きなため息を吐くと同時にプレッシャーが完全に消えた。
ガクガクしていた希望に「ふん、命拾いしたな。」と言い捨てると元に戻っていく優夜。安堵の余り意識を手放す希望。異世界に渡って早々にゲームオーバーという事態は回避できたようだ。
「そ、それでは皆さん!ステータスプレートを確認させて頂いてもいいでしょうか?」
場の変化に終始付いていけなかった王女様は「ハッ」と気を取り直して問いかける。
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和泉 優夜 17歳 LV.1
天職:勇者
加護:神々の愛し子
体力:350
魔力:250
筋力:300
耐性:180
敏捷:250
知力:200
運 :100
スキル
悪魔の魅了(LV.10)・言語理解(LV.10)・威圧(LV.5)・格闘術(LV.5)・剣術(LV.3)・闇魔法(LV.1)
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和泉 朝希 17歳 LV.1
天職:勇者
加護:神々の愛し子
体力:200
魔力:400
筋力:150
耐性:120
敏捷:200
知力:500
運 :240
スキル
天使の魅了(LV.10)・言語理解(LV.10)・記憶(LV.5)・剣術(LV.2)・光魔法(LV.1)
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瀬良 美月 16歳 LV.1
天職:魔法士
加護:
体力:150
魔力:200
筋力: 80
耐性:120
敏捷:180
知力:150
運 :120
スキル:言語理解(LV.10)・攻撃魔法適正(LV.1)・魔力吸収(LV.1)・杖術(LV.1)
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結城 陽菜 16歳 LV.1
天職:魔獣使い
加護:
体力:100
魔力:150
筋力: 50
耐性:100
敏捷:100
知力:240
運 :150
スキル:言語理解(LV.10)・生物学(LV.4)・念話(LV.1)・従魔召喚(LV.1)・短剣術(LV.1)
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「こ、これは・・・・・・み、皆さんやはり凄いステータスです・・・」
驚いた表情で順々にステータスプレートを見ていくフィーニア。
「そうなのか?よく分からない概念のものが沢山あるんだが、俺達自身のレベルとやらは、たったの1だぞ?」
フィーニアの言葉に訝しむ優夜。他の3人も同じような意見らしい。
「きっと皆さんの世界には“レベル”という概念がなかったのでしょう。それならば16歳、17歳の年齢でレベルが1という事も頷けます。まずは“レベル”と各能力値の数字、それから“スキル”についてご説明しましょう」
そう言うとフィーニアは玉座の左後方で待機している男を呼んだ。その男がフィーニアの隣に並び4人の前に立つと、思わず美月と陽菜が優夜と朝希の後ろに隠れる。朝希もその男の気配に若干の緊張を孕んだ表情をしている。
優夜だけは分析するような視線をこの男に向けていた。
身長は優夜が若干見上げてしまう程で190センチはあるだろうか。筋肉隆々。二の腕は美月のウエストくらいあるかもしれない。腕には古いものから新しいものまで無数の切創。視線は鋭く、纏っている雰囲気も幾つもの死線を潜り抜けてきたのだろう・・・歴戦の戦士そのものだ。
勝てるか・・・勝てないか・・・そんな戦力分析をしている優夜を見て「ほぅ」と関心した表情を見せた男は、途端にニカッと笑顔を浮かべるとここのいるクラス全員に声をかけた。
「ステータスプレートに魔力を流している者達も一度手を止めて聞いてくれ。俺はエルヴィス王国筆頭戦士長ガルド・ローランという。まずはフィーニア様のお言葉通り、レベルやステータスに関する事を説明したいと思う!」
遠巻きに見ていたクラスメートや魔力の操作に苦戦していたクラスメートが熊のような見た目からは想像も出来なかった人懐っこい笑顔を浮かべたガルドの声を聞いて集まってくる。
美月や陽菜もホッとしたような表情で優夜と朝希の後ろから出てくる。優夜だけは未だにガルドを見極めようとする視線を送っている。そんな優夜を見て一瞬苦笑いを浮かべたガルド。しかしすぐ悪戯っぽい顔を浮かべると
「それで・・・この中で唯一この俺を倒そうと終始、策を巡らせているそこの君。勝率はどのくらいだと思う?」
にやっと笑みを浮かべると問いかけた。それを聞いた王女を含めた全員が「何考えてんの!!?」とギョッとした視線を優夜に向ける。朝希だけが「もう、兄さんってば」と呆れたような笑い顔を向ける。
「やっぱバレバレだよな・・・参った。流石は戦士長って所か?勝率はほぼ0・・・あの手この手を使ったとしても・・・いや、使わせてくれたとしても良くて1割って所だな」
優夜が両手を挙げて参ったと手をひらひらさせながら苦笑いを浮かべる。
それを更に驚いた表情で見つめるクラスメート。
“和泉優夜は強い”
それは纏っている雰囲気からしてそうだが、実際に多数の女性から行為を向けられるている優夜は逆恨みを買ってしまいガラの悪い他校の高校生や大学生、更には“ヤ”の付くその筋の方達から目を付けられた挙句、一人の時を狙われ襲われたこともある。
しかしそんな状況でも怪我一つ負わず10人超える相手を余裕の表情(何故か笑っている)でなぎ倒しているのを学校の生徒が目撃し、一気に噂が巡り巡って全校生徒が知っている事である。
そんな和泉優夜が勝てない・・・勝率は0。あらゆる手を使っても良くて1割・・・
優夜ほど実戦に馴れている人間がクラスにはおらず、ガルドの視線や雰囲気に只ならない戦力を感じ取れた者は居なかった。
流石にその体躯だけで弱いという事がないのは分かるが、優夜が絶対に勝てないという言葉をすぐには理解が出来なかったのだ。
しかし、絶対に勝てないと言われたガルドは先ほどよりも更に関心した表情を浮かべて笑った
「がははは・・・いや、流石だな優夜くんと言ったか!俺を前にして怯まない胆力も、即座に策を練る機転の速さも、その的確に相手の戦力を測る観察眼もな。俺も今の君との戦力差ではそのくらいの勝率になるだろうと思っていたよ。が、それはきっと近い内に引っくり返るだろう」
そう言ってガルドは自身のステータスプレートを見せた。
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ガルド・ローラン 41歳 LV.109
職業:重戦士
加護:戦神の加護
称号:エルヴィス王国戦士長
体力:2010
魔力:565
筋力:1038
耐性:977
敏捷:550
知力:300
運 :105
スキル:剣術(Lv.9)・格闘術(Lv.8)・槍術(Lv.8)・弓術(Lv.6)・戦斧術(Lv.6)・投擲術(Lv.5)・威圧(Lv.5)・見切り(Lv.5)・騎乗術(Lv.5)・付与魔法(Lv.5)・生活魔法(Lv.2)・言語理解(Lv.2)
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「「「「「 つよっ・・・ 」」」」」
クラスメートの誰かから思わず漏れでた言葉。優夜も「そりゃ勝てないな」とまたしても苦笑い。
「まぁこれでも戦士長筆頭だからな。しかし、先ほども言った通りこれはそう遠くない内に君達に越されるだろう。見て欲しいのは俺のレベルだ。」
そう言ってガルドは自身のレベル部分を指差す。
「俺はレベルが109。初めてステータスプレートに魔力を流した見習い兵士時代・・・レベルは20程度だったか・・・それでも優夜くん。その時の俺の全てのステータス数値は君のおよそ半分程度だった。」
そう言って笑うガルド。
「レベルは上がる毎にステータス値がランダムで上昇する。俺はとあるきっかけで戦神の加護というものを得てから体力や筋力の数値が通常上昇しやすくなったが、上昇率はそれぞれの性格や加護、得手不得手によって変化する。先ほどフィーニア様が驚かれていたのは君たちのステータス値がレベル1という低さにしては高すぎるからなんだ・・・この世界の者はレベル1だと大体全ての数値が10~20くらいなもんだ」
ガルドがそう言うと4人やプレートに魔力を流せた者達は自身のプレートをもう一度確認する。
優夜は全体のバランスが良くどれも高水準だが体力、筋力が目立って高い為、どちらかと言えば魔法もありの万能近接戦闘タイプか。
朝希も筋力に若干の不安を感じるが、全体的に高水準。魔力と知力がずば抜けて高いため魔法が主体。光魔法を覚えている為、パーティに居れば補助や回復も行う戦闘タイプか。
美月は優夜は朝希には及ばないがやはり高水準で魔力や敏捷が高い。スピードのある魔法士というのはあらゆる戦闘の場面で頼りになるだろう。
陽菜は元の世界での性格や行動がそのまま反映されているのかこちらの世界の人に比べれば充分に高いが、3人に比べると身体的なスペックは皆より低い。が、魔獣使いという天職から考えるに、陽菜自身が戦闘に参加する事は少ないので問題はないであろう。
その他のクラスメート達もそれぞれ違った天職だが、陽菜と同じか美月より若干低いようなステータスらしい。女の子である美月と同じ程度のステータスでちょっぴり自身が情けないといった様子の男子が数名。
皆が自身のプレートを確認しているのを見て、事の成り行きを見守っていたイスタスがもう一度優夜達に問いかける。
「異世界より神が遣わしてくれたそなたらはこの国を救えるだけの力を備えていると我々が保証しよう。もちろん出来る限りの待遇と礼節を持って支援もさせて頂く。装備や衣食住も任せてほしい。どうだろうか・・・この世界の人々の為に力を貸してはくれないだろうか」
そう言って深々と頭を下げるイスタス。それに習ってフィーニアやガルドも頭を下げた。周りを見ると従者や護衛の兵士たちまで膝を着き頭を下げている。
それを見てまた困った顔でお互いを見合う美月や陽菜、そしてクラスの生徒達。
優夜は目を瞑り何かを考えている様子で、朝希もどうしたものかと少し考え「兄さん?」と首を傾ける
優夜は瞼を開けると「一ついいか」とイスタスに話しかける
イスタスは一度顔をあげ真っ直ぐな瞳で優夜を見ると「なんでも聞いてくれ」と返す
「・・・もし俺が・・・俺達が、この話を断ったとして、俺達全員を元の世界へ戻す方法を知っているか?」
優夜は静かに問いかける。
フィーニアは頭を下げたままビクッと身体を震わせ目をギュッと瞑る。
イスタスも罪悪感からか一度瞼を深く閉じ、震えているような深い息を吐いたあと、自分を見つめる優夜に真っ直ぐ目を合わせ答えた
「・・・・・・すまない。伝承にはこの地を平定した勇者も、“魔族を打ち払い初代国王と王妃の建国を見届けたあと光の柱に包まれこの世界を去っていった”とあるが、方法までは載っていなかったのだ。」
そういうとイスタスはその自身の無力さからか、断罪の瞬間を待つ罪人のような、しかし潔く裁かれようとしているかのような表情で瞳を伏せた。フィーニアもそんな父の姿を見て声をあげる
「もし皆様がこの申し出を断ったとしても、必ず!必ず帰還方法を探して元の世界に戻してみせますっ。それは身勝手な希望を望み、抱いて皆様を巻き込んでしまった私達の最低限の責任です・・・」
後半はすでに泣き出してしまいそうな、消え入りそうなか細い声だった。
人々の平和や笑顔を守りたい。しかし、今の国にはその力がない。だからこそ異世界召還の儀を行った。優夜達の力を借りたいが強制できる事ではないし元々は全く無関係の人間を巻き込んでしまった事への無責任さと自責の念に駆られ迷い、不安で押しつぶされそうになっているのが誰の目から見ても分かる。
そんなフィーニアとイスタスの言葉を聞いて帰れないという言葉でショックを受けつつも、今にも消えてしまいそうなフィーニアを見てしまっては行き場のない感情が渦巻き皆一様に目を伏せてしまう。
が、何やら考えながらぶつぶつと独り言を呟いている優夜に気付く。朝希、美月、陽菜の3人が恐る恐る近づき耳を近づけると
「・・・と、なると・・・・・・・・・・・・・・・だよな。しかし・・・・・・・で・・・・・・・・だから。ククク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よしっ」
口から空気を若干吐き出す程度の呟きだった為ほとんど聞き取れないが、ククク・・・と笑う声やニヤリと笑う顔を見て若干表情が引き攣る3人。
優夜は表情を爽やかな笑顔に変えると顔をあげ言った
「よし、じゃあとりあえず魔王はぶっ殺す方向で!!!」




