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プロローグ 始まりの朝

柔らかくも温かな光がカーテンの隙間から差し込み、心地いい小鳥のさえずりが聞こえる。


近所の小学生だろうか、元気な子供の声に「いってらっしゃい」と子供を送り出す母親たちの声も何処からか薄っすらと聞こえる


そんな定番と言えば定番で、どこにでもあるような、静かで平和なありふれた朝の風景



そんな中、主を起こすべくけたたましく鳴り渡る目覚まし時計の音




ジリリリリリリ!



………。



ジリリリリリリリリリリリ!



……………。



ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!



「ぅ……………うっせぇ……」



バキャッッ!!!!



…………………。



「スー………スー………」



時計が与えられた使命(機能)を全うした決死の頑張りも虚しく、再び寝息をたてながら眠りにつくこの部屋の主、和泉優夜いずみゆうや



今日は高校2年の1学期が始まる登校初日。ホームルームが始まる時間はAM8:30で、現在の時刻はAM6:30である。



支度の時間も含めてそろそろ起きなければ遅刻してしまうギリギリの時間



儚く散った時計の頑張りも虚しく、初日から遅刻ルートまっしぐらかと思われたが、トントンと軽やかに階段を上ってくるような足音が聞こえる。



ガチャ


「あー、もう兄さん!起きないと遅刻だよ?って、うわ、また時計を壊しちゃって。」



「ん~……朝希か………?……あと…5分…寝かせて…くれ……」



「ダメだよ?兄さん、そう言って5分で起きた事なんてないじゃない」



そういって兄である優夜の布団をペイっと引き剥がすのは弟の和泉朝希いずみあさき



優夜はベッドの上で丸くなり一度ブルッと身体を震わせると、のそりと身体を起こして「ふわぁぁ??…」と大きなあくびをしながら起床した。



「あ~・・・眠い・・・朝希はいつも早ぇなぁ…」



未だ眠たそうに目をこすりながら言う優夜に



「今週は僕が朝食の当番だし、兄さんを起こすのは僕の日課だからね」



くすりと笑いながら答える朝希。


二人は双子の兄弟であり、見た目がほぼ一緒なのに性格や得意な事が全く違う。


他人に対しておよそ愛想と呼べる物がなく、物事や心の機微を多角的に捉える事が出来るが、あと先や相手の気持ちを考えず発言する性格で、小さい頃からやんちゃでスポーツ全般や武術が得意な兄である和泉優夜。


老若男女誰に対してでも愛想が良く、物事や相手の事をしっかり考え、一度自分の中でまとめてから行動や発言をする性格で、昔からしっかり者で頭の良い弟である和泉朝希。


二人は広々とした4LDKの一軒家に兄弟二人だけで暮らしている。



「俺が当番の時でも俺より起きるの早いだろ。ったく、親父とおふくろは何してんだか」



そう愚痴を溢す優夜の言葉に、朝希は一瞬暗い表情を浮かべる。


それを横目に見た優夜は頭をガシガシ掻きながら



「あーあ、おふくろがいれば週替わりの朝食当番もなくなって、1分1秒も無駄にすることなく睡眠を楽しめるってのに……なぁ?」



と、やれやれといった具合に首を横に振りながら朝希に問いかける



「ふふっ…兄さんは本当に相変わらずだよね。ケータイのアラームを掛ければ寝惚けてケータイ画面を割っちゃうし、目覚まし時計を掛ければ時計を壊しちゃうし、どれだけ寝るのが好きなのさ」



軽く微笑んだ朝希を見て、どこかホッとしたような表情をした優夜はベッドから降りてリビングに用意してるであろう朝食を目指して階段を降りていく。


そんな兄の背中をニコニコしながら追いかけていく朝希。


この先に起こる不思議な冒険のことなど知る由もない、二人きりの和泉家の、いつもの日常。

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