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暗闘  作者: 伊藤むねお
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坂道

 この花は・・・どなたが?

「坂道あたりですれちがいませんでしたか。登山帽を被って風呂敷包みを抱えていらっしゃいましたが、あの方ですよ」

 あ、お会いしました。そうですか。すると伊能先生では?

「ええ。伊能敬一さんとおっしゃるのですが、あら、やっぱり先生なんですか。わたしどもはなにも存じ上げないのですが、ご存じの方でしたか」

 ええ。兄の恩師で現在は仙台の私大で学長をなさっておられるはずです。

「まあ。大学の学長さん。ちっともそうはみえませんでした」

 ありがたいことです。兄さん、兄さん、よかったね。破門されたっていってたのに、ちゃんとお見舞いに来てくださるんだ。

「あら、涙が。泣いてらっしゃるわ」

 ふくよかな顔の介護士はそういって、横たわる男の目をティッシュで拭いてやった。

 先生は兄にどのようなことを。

「それが、おほほほ。なんだか難しそうな本を広げましてね。それを読みあげながら、なんだか学生さんに教えるように、そう、講義をなさるんですよ。オサム、ここまで理解できたか、どうだ、なんて。何度もそんなことをおっしゃって。いつもちょうど一時間半。終わると、今日はこれまでとか少し威張っておっしゃって、さっとお帰りになるんです。でも、オサムさん、とっても楽しみにしてますよ。わかるんです。それを聴いてる時の目の輝きがちがいますもの」

 そうでしたか。よかったね。ここでまた勉強ができるよね・・・俺の方は万事うまくいってるから。家も会社も・・・そうだ、今度、とても大きな仕事がやれそうなんだ。だから暫くはお見舞いに来れないかもしれない。でも必ず成功させてみせるよ。



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