第3話 新たな依頼
エリアR42、国家が存在していた時代…旧時代の頃、腐れ者との戦争で負け細々と僅かに生存している人間達が造り上げた町の一つだ、このエリアR42は大規模なスカベンジャーズの施設や傭兵達が数多く居る事で比較的大きな町になっている、つまり町の防衛能力も大きい。
その町の通りを歩く、さっきまで来ていたパイロットスーツは自宅に戻った時に私服に着替え、スーツは自宅に置いてきた。
カーキ色のロングコートを羽織り、かつて存在したイギリス陸軍の帽子を被り、賑やかな通りを歩く。
暫く歩けばBARと書かれたネオン看板が見えてきて、アタシはその店の中に入る。
店の中に入り暫く階段を下れば、ジャズの音楽と男達の下品な笑い声やグラスどうしがぶつかる音が聞こえてきた。
目の前には扉があり、声はその奥から聞こえてくる。
扉を引けばギィと音を立てながら酒場の様子が露になってくる、同時に酒の匂いとタバコの臭いそして男の体臭が混ざった強烈な臭いがアタシの鼻に直撃する。
前までは顔をしかめていたが、もはやこの臭いにもなれBARカウンターまで歩いていく。
此処は日々の疲れを酒で洗い流すために荒くれ者の傭兵達が集うBARで、酒と情報そして暴力が降り注ぐ所だ。
「よぉマスター、何時もの」
カウンター席に着くなり、アタシはマスターにそう言った。
「コロナだな?」
「あぁコロナだ」
マスターは其からかなり古い冷蔵庫から世界で最も上手い飲み物を一本アタシの前に置く。
ビールの栓を素手で抜き、一気に飲み干す…数分も経たずに中身は無くなった。
「相変わらずの馬鹿力と馬鹿見たいな飲み方だな」
其を見ていたマスターが何時ものように呆れた様に言う。
「殆ど機械化してるからな」
機械化をした腕を見ながら言う、腕だけでは無くアタシの身体の殆どが機械になっている。
此れは旧時代の頃、人類が賑やかに腐れ者との戦争をしていた頃ヘマをして、当時乗っていた人型を破壊され命からがら脱出した所を犬型の腐れ者に身体の約半数を喰われた……流石に死んだと思ったが、パターソンに助けられ直ぐ様野戦病院に連れてかれ、其処から更に中央の病院に運ばれ何とか死なずにすんだ。
「そう言えばパターソンの奴はどうした?」
マスターが何時もなら居る筈のパターソンの姿が見えず聞いてくる、アタシはマスターに2本目を頼みながら言った。
「……パターソンはくたばった、大型に下からマリアごとファックされて死んじまったよ」
マリアとはパターソンが乗っていた人型のニックネームだ、彼いわく昔の妻の名前らしい。
「そうか……たくっ…あの喧しいアメリカ人に2度と会えなくなるとはな…」
アタシの前にビールを置きながら寂しそうに呟く。
そんなマスターを見ながら、栓を開け一気に飲もうとしたその矢先。
「バレンシアさんで宜しいですか?」
いつの間にか隣に座っていた男が声を掛けてきた、その男は黒のコートと神父が被る様な帽子を被り……両目が抉り取られた様になっていた。
誰がどうみても異様な男に驚きながら頷く。
「あぁ…確かにアタシがバレンシアだ」
男は空洞になった両目でアタシを見つめながら言った。
「貴女に依頼したい」