異世界くそくらえ
初回の手続きに際して、自分の書く小説のジャンル、カテゴリ、タグ、などなど設定せねばならぬ段階に入ったあたりで、まず私は唖然とした。
「異世界」「ハイファンタジー」などと、私には見当もつかないジャンルであふれている。一体どういうことなんだと、他者の作品をいくつか拝見した。
一作目「学校でいつも通りの日常を送っていた僕だけど、ある日突然異世界にホニャララ」・・・ふむ。
二作目「俺最強ものが書きたかったのでホニャララ」・・・ほう。
・・・なんということだ!
私は怒りに打ち震えた。
どの作品を見ても、大概が訳もわからず異世界へ行き、その異世界で仲間を作ってえっちらおっちら。みたいな作品しかないではないか。しまいには主人公は特殊な力があったり、最強であったりが当たり前で、苦難といえばくだらん恋愛のあれやそれくらいなものである。
書いてるやつらも、きっとアニメが好きで、じめっぽく、思いつきで己が妄想を書いたに違いなく、1番の問題はそれがウケてしまっていることである。
私のような凡庸な人間は主人公になることも叶わず、まして私のような凡庸な生活では、物語にすることなど笑止千万な風潮である。
これは由々しき事態である。
主人公が異世界へ行かなければ、楽しい小説が書けない。読者も面白いと思えない。こんなことがあっていいはずがないのである。
我々は夢想の中に生きるのでなく、現実を生きなければならんのだ。
私はこの世界の中に身を投じ、何としても普通の小説を書き、皆の目を覚まさせてやらねばならぬと、決意をより強固なものした。
誰の目にもくやしいので自分の小説のタグにも異世界、をつけることにし、私は諸手続きを終えたのである。