村で人助け
あの男は何だったんだ…
そんなことを頭に浮かべながら帰路についた。
刹那がまだ寝ている。もう、遅いし俺も寝るか。
コッケコッコー(鶏)
朝が来た。刹那と俺は同時に起き、しばらく微睡んでから昨日のことを話した。
「カクカクシカジカ…」
刹那が眉をひそめ言った。
「情報が足りなすぎる。いつ会えるかは知らんが、俺らが使い手だということが分かったんだ。そいつの言っていることは嘘ではないだろう。」
確かにどうやって俺らが使い手だということが分かったのだろう。
……。
「まぁ、考え込んでも何も分からないからここから離れてどっか行こうぜ。守護の使い手になれたんだし、悪をぶっつぶそうぜ。」
刹那が真顔で頷いた。
そういえばコイツの笑ったこと顔を見たことないなと思い俺は苦笑いした。
俺らの拠点としていた。林を離れた。旅は始まったばかりなのに色々なことがあったな。
しばらく歩いていると知らない村についた。そこは田んぼが広がっていてどこか懐かしい気分がする。
俺らは悪をぶっこわしに来たので畑仕事をしている村人に困っていることがないかを聞いた。
だが、聞けども聞けども困っていることはないと言われる。
平和だ……
それには安心したがこんな安全な場所にいるとこの世界には困っている人が沢山いると考えてしまい、どこかもどかしい。
安全なことを確認しこの村を出ようとすると後ろから声をかけられた。
「困っていることならあるぞぉぉぉい。」
50代前半ぐらいの白髪混じりのおじさんが話しかけてきた。
「この村、【咲村】は見ての通り老人ばっかじゃ。だから村の活性化が思うように進まないのじゃ。それでだ、若い力があると村は元気を取り戻すと思うんじゃ。」
なるほど、村を俺らの力で活性化させて欲しいのか。これは人助けになるから引き受けよう。ただ具体的には何をすればいいんだ。
おじさんに聞いた。すると、こう答えた。
「まぁ、人手が足りないから畑を耕してそれから野菜や果物を収穫して採れた物を市場へ運んでくれるか?」
俺は胸を張って、もちろん!と答えた。
刹那は、ああ。と答えた。
早速、作業に取り掛かった。困っている人を助けるのは気持ちがいいな。と広大な畑を一時間程度で耕した。
だが、刹那が俺を見下すような顔で不敵な笑みを浮かべながら言った。
「大翔。遅いな。俺はとっくのとうに畑を耕して収穫し、市場へ運んだぜ。二分でな。」
二分だと!?そんなことはあり得ない俺は耕すだけで一時間もかかったんだぞ。しかも市場までの距離は五キロもあるんだぞ!
あっ……
さては、刹那の使い手を使ったな。刹那の使い手……便利だ。
そこへ家で休んでいた、おじさんが
「そろそろ収穫も終わったじゃろ。市場へ売りに行こうか。」
と軽トラックの鍵を持ちながら言ってきた。
すると、綺麗さっぱりした畑を見ておじさんは驚いていた。
「野菜や果物が全部なくなっとる……」
おじさんが泣きそうな顔をしながら小声でつぶやいた。
刹那が口を開いた。
「それは全部市場へ運びましたよ。」
おじさんは信じられないような顔で口をを半開きにしていた。
刹那はそんなおじさんを担いで一瞬で消えた。
あいつ恐らく証明をしに五キロ離れている市場へ行ったな。
てことは、俺置いてかれたな。
刹那とおじさんが居なくなってから十秒ほど過ぎたときに刹那が俺の目の前に現れ、抱きかかえながら市場へ連れて行ってくれた。
野菜や果物は本当に売られていた。
「何をどうしたか知らんがこれはたまげたな。よし、若い力よ。今日はワシの家へ泊まってゆけ。」
おじさんはそこまでおどろいていなかった。刹那は得意げな顔でおれをみつめてきた。
おじさんは泊めてくれるらしい。そういえば俺らは生い茂った芝生で寝ていたな。お布団に寝れると、嬉しくなり泊まらせて!と即答した。
おじさんの家に上がった。そこにはおじさんと同じ年くらいの奥さんがいた。
まず、風呂に入り、パジャマを借りて着替えた。
夕ごはんには新鮮な野菜とフルーツを出してもらった。久しぶりにちゃんとした飯が食えたから俺らは調子に乗りおかわりをしまくった。
ふぅ、食った食った。一息ついてるとおじさんにちょっといいかと言われ縁側に連れてかれた。
「若い力よ。名を何と言う」
守隨大翔でぇす!
林刹那だ。
「大翔と刹那か。いいなまえじゃな。」
おじさん、名前は?俺が聞いた。
「わしか。ワシの名は笹ノ上 剛太郎じゃ。」
ごうたじいさんか。その後も談笑していた。
「もう、遅いし寝るかのう。」
よっしゃ!フカフカの布団で寝れるぜ。すぐに寝室へ行き布団を敷いた。横たわってすぐに眠りについた。
Zzz
朝じゃぞ。起きろ。ごうたじいさんの声がする。
俺は起きた。俺が起きる前に刹那は起きていた。
いつまでもここにとどまっては入られないので家を出る支度をした。
そして準備が終わりとうとう家を出る事になった。
お邪魔しました。そう一言かけて俺らが出て行こうとすると
「まちんしゃい。若き力よ。これを持ってゆけ」
ごうたじいさんから大量の食べ物をもらった。
「今はとにかく食べて食べて体を大きくせい。お前達の力は伊達じゃない。その力でこれからも困っている人を救ってくれるか?」
「あぁ!俺らがこの世界を救ってやるよ!その時は一緒に朝まで叫び続けようぜ!」
刹那は今まで見たことのないような不器用な笑顔をしていた。
「もちろんじゃ!これからも無理をせずに体に気をつけながらたびをするじゃぞ!」
ごうたじいさんと奥さんに見送られながら家を後にした。
その後、咲村では超能力を使う子供がいると話題になりたくさんの人が押し寄せた。もちろん俺達はそこを出ていた。子供がいないと落ち込んでいたが、見物しに来た人達が咲村の良さを知りたくさんの人が移住し、街は活性化したのであった。
刹那の不器用な笑顔というのは、なんか鼻で笑っている感じがしますが、刹那なりに心のそこから笑っています。