族を束ねる女虎(めとら)
「んん……ここはどこだ!?」
目が覚めるとそこは俺らの特訓場のいつもの芝生の上だった。
まぶしい。肌を焼くような日差しが体全体を照りつける。
体を起こしてみるとシロノが修行をしていた。
「シロノぉー。俺どんぐらい気絶してた?」
「一時間だ」
一時間か。旅を始めてから自然治癒力は高まったと思うが簡単に気絶するようじゃダメだ。もっと体と心を鍛えねば……
それから俺らは刹那たちが回復するまで修行を続けた。
だが、その修行の間に鬼目をお互い再び発現させることは出来なかった。
刹那が起きた
「大翔……。俺はどんぐらい寝ていた?」
「5日だ。」
そういった瞬間、刹那は悔しそうな顔をした。
「そうだ刹那。シロノが仲間に加わることになった」
「仲間ではない。お前らといると鬼に出会えそうな気がするから付いて行くだけだ。勘違いするな……」
シロノが不機嫌そうに言った。
「おい、大翔……」
刹那が俺に小声で手招きした。
「(お前は正気か?素性も分からない奴と仲良く旅するってのか?考えたほうがいいぞ)」
刹那が俺の耳元で囁いた。
「(いいじゃねえか刹那。この5日間でシロノには悪意はないって俺は感じたんだ。あいつは強えし頼りになる。頼むよせつなぁ一緒に旅していいでしょぉ……)」
おれも囁き返した。
刹那は呆れた感じでもとの体制に戻りこう言った。
「はぁ……勝手にしろ……。ただし何かあっても俺は知らんからな。」
「ナイスぅ刹那!ありがとぅ!」
刹那にハイタッチを求めたが無視され眠ってしまった。
「刹那は明日退院できるらしいから明日に備えて寝るかシロノ!」
「……」
久しぶりに知らない地へ行ける興奮を思い出しなかなか眠れなかった。
コッケコッコーォォォォォォ(鶏)
朝が来た。身支度を済まし、まだ意識の無いフィアとアクトに感謝を告げた。
「刹那、シロノ行くか!蔓延る悪をぶっ壊しに!」
また刹那と旅に出れる事が嬉しくとってもワクワクしている。
しばらく歩いたらセレブ御用達の高級ショッピングモール【プレミアムヒューマンモール】に着いた。見るからに手が込んでいて【志渡網街】の王宮よりもお金がかかっていそうだ。プレミアムヒューマンモールという名に恥じない雰囲気と設計と広大な敷地面積だ。そこにいるすべての人がセレブなんだろう女性は派手なドレスを着ていて、男性は高そうなスーツをきっちり着こなしていた。
「泥棒だぁー!捕まえてくれぇーーー!」
悲鳴混じりの男性の大きな声がプレミアムヒューマンモールに響いた。
なんだなんだ。声のする方向を見てみると20人ぐらいの覆面の人間が装飾品や衣服などを持って走っていた。
強盗か、逃さない!
「刹那!シロノ!捕まえるぞ!」
俺らは一斉に動き出した。
ーーシュッ!シュッ!シュッ!
当然俺らは5分も満たないうちに全員捕まえた。
「おいお前ら!何でこんなことをする!」
俺が聞いたが強盗団はあぐらをかいたまま下を向き俺の問いに答えなかった。
周囲の人たちはさっきの悲鳴混じりの声に驚きどこかへ逃げていった。
無言を貫く強盗団にイライラした俺は守護拳をくらわそうとした。
だが、
「おーほっほっほっ!」
突然女性の甲高い声があたりに響いた。
後ろから声がしたので振り向いたら20代半ばぐらいの派手すぎる格好をした女が立っていた。
その女を見るなり強盗団はさっきの無言が嘘のように叫びだした。
「ホークラウン様!強盗に失敗してこんな若造達に捕まってしまいました!申し訳ございません!」
ホークラウンってこの女の名前か?
「無様ねぇ、かわいい子猫ちゃんたちに大人のオスライオン達が捕まっちゃうなんて……」
かわいい子猫ちゃんって俺らのことか?
(かわいい子猫ちゃんとホークラウン(?)が言った瞬間シロノと刹那は女を睨んだ。)
「てめぇ!この強盗団のボスか?」
刹那が強い口調で言った。
「いかにも、私達は強盗団の【鷹団】のボス、【ホークラウン】よ!でもね坊や、口のくち方には気を付けなさい。女の子に嫌われちゃうわよ」
何だコイツ?女だからって手を出されないと思ってるのか?調子に乗ってるな……
「まぁいいわ」
そうホークラウンは言うと付けていたつけ爪を3個外し俺らの方に放り投げてきた。
なんの真似だ?
ホークラウンはこう呟いた。
「こう言うじゃない……。【能ある"爪"は"鷹"を隠す】ってね……」