病院での出来事
「大翔君、君は5日間眠っていたよ」
「あなたは誰ですか?」
「私はこの病院の代表取締役、ドクター高助だよ」
病院か。
なんでこんな所にいるんだ?あっ!
「刹那はどこですか!?いや、金髪の頭した俺ぐらいの歳の少年!!」
「その子なら君をここに運んでどこかへ行ってしまったよ。心配するな一日おきに君の様子を見に来ておる」
どこかってどこかだ、もしかして修行か!?
刹那には負けてられない。今すぐにでもこの病院を出よう!
ーーガサッ!
うわ、いってえ。体が悲鳴を上げてる。
ドクター高助が言う
「君はまだ治っておらん。ほれこれ見てみろ」
というとレントゲンの写真を取り出した
「なんでそんなことになったかは知らんが体の骨という骨はほとんど折れていておまけに出血もひどかったぞ。生きているだけで奇跡じゃ。いや、奇跡を超えとるぞ」
レントゲンの写真は人の体ではないような形をしていた。これほんとに俺なのか。ひっどいなこれ治るの?
「僕の体って元通りに治りますか?」
ドクター高助が鼻をフンっと鳴らし
「わしを誰だと思っとる。ドクター高助やぞ」
治るのか良かった。
「ところで君はなんでこんな怪我をしていたんだ?怪我というか死ぬところだったけど」
「士渡網街でロスと戦ってこんなになっちゃいました」
ドクター高助が驚いたような顔で言う
「士渡網街とロスってあの氷漬けにされた街とロス・カルヴァレットという少年のことか!?」
なんで知ってるんだ?
「なんでって、それ四六時中ニュースで流れているんやぞ。ほれ見てみろ」
氷が溶け元の姿に戻った士渡網街、親子ともに嬉しそうな顔をして再会している姿、奴隷を雇っていた罪で貴族の逮捕、
ロスの指名手配がテレビに映しだされていた。
怒りがこみ上げてきた
なぜだ?ロスは貴族に奴隷をさせられていた被害者だ。それを見てみぬふりをしていた奴はどうなんだ?!
街の人のインタビュー
「こわいです。一刻も早く捕まえて欲しいです」
「子供をさらうなんて信じられない。はやく警察何とかして」
こいつらぁ……
こんな意見も
「彼は士渡網街に加害された被害者なんです。わしらたちがしっかりしてればこんなことにはならんかった……」
この前、道で出会った老人だった。
(ロス。辛いだろうが今は辛抱してくれ。こうやって信じてくれている人だっているんだ。だから、人を信じ、自分に負けるな)
ドクター高助の存在を忘れていたがドクター高助が口を開いた
「わしはなこのロスという少年は悪くないと思うんじゃ。どちらかというと街人の方が悪いと思うんじゃよな。なんとなくなぁ」
「どちらが悪いかなんて押しつけ合いをしてたら良い方向には進まない。どちらも自分が悪い、と言えば悪いことというのは等分されていくんだ。一人で抱え込む必要なんてない皆で分け合おう。それが人間ってもんだろ」
「たしかにそうじゃな」
さあっ!とドクター高助が手を叩きながら言った
「君も意識を取り戻したところだし一気に治療を進めていくぞ!」
治療を始めて早3日。俺はみるみるうちに回復していった。
「君の回復速度には驚いたがわしの治療技術のおかげじゃろ」
陽気な声でドクター高助が言う
「君も今日で退院じゃ。平和活動頑張れよ。ほれこれやる」
何かの薬をもらった。危ない薬?
「これは超痛み止めじゃ。どんな痛みでも感覚をなくすことができるただ、これは痛みを感じなくなるだけで怪我は治らないからな。平和活動をするなら無理しなきゃいけない時だってあるさ、そういうときこれを飲んでくれ。本当は医者がこの薬をすすめるのはだめなんじゃが君は特別じゃ。でもひどい怪我をした時はまたこの病院に来ておくれ。では、頑張ってくれよ」
超痛み止めかぁ。いいものもらった。
「ドクター高助、世話になったぜ!次会うときには世界を救った英雄になってるからな!」
「英雄か、その時まで待ってるぞぃ」
ドクター高助が小声で呟いた。
病院の個室から出て廊下を歩いている時にふと思った
(そういえば倒れてから刹那を一回も見てないな。どこ行っちゃったんだろ)
そう思いながら病院を出た。
そこには壁により掛かり腕を組み目を閉じ偉そうにしている少年がいた。
刹那だ。
「せーつーなー!会いたかったよー!」
久しぶりに会え嬉しくて刹那に抱きつこうとしたがぶん殴られた。
「病人だぞ、もっと優しく扱え!」
「くだらん。そんなことしている暇があったらササッと行くぞ」
(相変わらず刹那は変わらないな)
「そうだな。世に蔓延る悪をぶっこわしにな!」