#002「八月十三日土曜日」
――昨夜のペルセウス座流星群は、綺麗だったなぁ。
メダリストの陰に、妻の愛か。一昔前でいうところの、内助の功かな。
複数の異性から同時にアプローチされたり、ストーカーされたり、そうかと思えば、三年もしないうちに忘れられたり。芸能人も大変だなぁ。
ヘェ。芸能人の兄弟姉妹も、いろいろと個性的な活動をしてるんだ。
汗染みは、洗剤と漂白剤を入れた鍋で煮込むと落ちるんだ。制服のワイ・シャツで試してみよう。
*
「お疲れ、土屋」
「お疲れさま、垣内くん。メンソーレおじさんは来た?」
「今日はまだ来てない。漫画の疫病神は来た」
「あの、雑誌の扱いに五月蝿いオタクだね」
「あの燐寸棒め。コミケで圧死されてしまえ」
「抑えて、抑えて。それにしても、中高年って、何であんなに態度がデカイんだろうね」
「若かりし日を美化するし、今の便利さに対する負け惜しみをばら撒くし、碌なことをしないよな」
「あぁなりたくはないものだね」
「それで、今朝のトピックは?」
「一つは五輪について。会場のカメラは、日本の二大メーカーで占められてるって知ってた?」
「知らなかった。そうなんだ。やっぱり日本製は、出来が違うんだな」
「技術力の高さは世界トップ・クラスだからね。特に、精密機器に強い」
「日本人は、几帳面で凝り性だもんな」
「時として、木を見て森を見ずに陥ることもあるけどね」
「必要以上に商品価値を高めてしまって、どこにも売れなくなるんだよな。他には?」
「ニシオンデンザメという鮫が、四百歳近く生きているという事実が、研究によって判明したよ」
「四百年前というと、十七世紀初頭か。何があった時代だっけ?」
「オランダで東インド会社が設立されたり、江戸幕府が成立したり、フランスがカナダのケベック植民地を形成したり、対馬の宗氏と李氏朝鮮とで己酉約条が結ばれたりした頃だよ」
「よくわからないが、すごく昔から生きてるんだな、その、オデン鮫は」
「ニシオンデンザメだよ。おなかが空いてるなら、売り上げに貢献してよ。店長が仕入れすぎたフルーツ系アイスが、まだケースいっぱいに売れ残ってるよ?」
「ここでバイト代を使いたくないって。土屋だって、そうだろう?」
「まぁね。話を戻すけど、理論上は鮫より長生きする生き物がいるんだ。何だと思う?」
「アメーバとか、ミドリムシとかか?」
「もっと大きな生き物だよ。答えは、ロブスター」
「ロブスターって、あの巨大化したザリガニみたいな奴か?」
「そうそう。オマール海老とも言われてる高級食材だよ」
「たしかに大きいが、それほど長生きしてるとは思わなかったな」
「外的要因が無い限り、半永久に生き続けることが出来るんだけど、成長するほど脱皮に時間が掛かるようになるから、天敵に襲われやすくなるんだ」
「おまけに、人間に食べられるもんな」
「災難だよね。あ! メンソーレおじさんだ」
「そろそろレジに入るか」




