日本へ
「待てやコラァ!!」
俺の名前は久我 相馬。
とある国際諜報機関のエージェント、つまりはスパイをやってる。
只今、ベネズエラの裏路地で銃を持った怖いお兄さん達と追いかけっこ中だ。
というのも最近入ってきた新人君がヘマをやらかして、ご自分だけくたばるんなら大いに結構だが、他のスパイの顔と名前をばら撒いて下さった。
そんなわけで、自分の身分を偽りながら任務中だった俺は正体がバレてお命頂戴いたされそう。
さっきから銃弾が頬を掠めていく。
「チッ! しつけーんだよ!」
ホルダーから拳銃を引き抜き、威嚇射撃をする。
流石に危険を感じたのか、男達は遮蔽物に身を隠した。
チャーンス! ここぞとばかりに全力ダッシュで裏路地を駆け抜け、大通りへと飛び出す。
「女房がよ〜…」
右を向くと青果店があり、そこで客のおじさんと店員が話し込んでいた。
おじさんの傍らにはおじさんのと思しきバイクが停めてあった。
咄嗟にそのバイクに飛び乗る。
キーは差しっぱだった。
不用心だぜ〜おっさん。
キーを捻りエンジンをかける。
ようやく気付いたのか、おっさんが驚いた顔をしている。
「悪いね! 空港に置いとくから!」
「ちょっ…待っ…」
おっさんを尻目に俺は全速力で空港へと向かった。
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「こっちです!」
バイクで空港の近くまで行くと、スーツの男が手招きしていた。
誘導に従って、直接滑走路内へと侵入する。
誘導された先には、小型ジェットがあった。
バイクから降り、小型ジェットへと乗り込む。
続いてさっきのスーツ男も乗り込んで来た。
扉が閉まり、小型ジェットが動き出した。
「何処に向かうんだ?」
「日本です。そこで事態が沈静化するまで、身を潜めていただきます」
「日本ねぇ…」
離陸して離れていく空港を眺めながら、俺は溜息をついた。