01 彼との遭遇
「これが私の船……」
少女の眼差しが見つめる先にあるのは、実に無骨な軍艦だった。
灰鉄色の鈍い反射は派手さを一切なくしたそれは、雪の妖精と見まごうほどに色白な少女には不似合いすぎた。
だが少女の青い瞳は愛おしそうに、静かな笑みと共に艦に語りかけていた。
「私の花、私の命、私の……生きるべき場所、よろしくね」
闇のシルエットに輝く白銀のユリのマーク、強襲揚陸艦ネージュリスは華やかなリゾート惑星へと続く中継ステーションその港ネティーに巨大な艦体を静かに寄せていたい。
新しい旅だちを待つ新造艦に寄り添う少女が見る世界は、果てしなく広がる宙の海原だった。
西暦1999年、世界は「強制進化」という炎に包まれた。
地球へと迫っていた彗星が、同じく宇宙を流浪していた隕石とぶつかり巨大なエネルギの津波を発生させた。
それは人類がまだ知りえなかった未曾有のエネルギーを地球へと激しく打ち付け、生きるため危機を乗り切るために人類はタブーを撤回し多くの研究に没頭し、荒々しい宇宙新時代のドアは開かれた。
時代は大きく動いたのだ。
電気を知って世界を動かした19世紀から、しばらくの停滞というまどろみにいた人類は新たなエネルギーの到来を前に加速した時代へと突入し戦争と混乱を呼び混迷期へと突入、旧世紀からの世界中に蔓延した蟠りを破壊するように戦火は拡大の一途へ。
活動領域を宇宙へと伸ばした人類は2000年を新宇宙歴元年とし以降200年にわたる戦争に身を焦がす事になる。
新宇宙世紀250年頃。
戦争は最終局面の「集約戦争」へと入り少しずつ平和を欲する側にシフトしていく。
世界の体制は突出した科学を持つ「上位市民」と、従来の生活を尊ぶ「普通市民」という区分けを作りながらも穏やかな時間へと進んで行く。
新宇宙世紀308年。
生存圏内の枠を広げ、広大な領土を持つ事になった人類は新たに手に入った新世界を見てまわるクルーズが大盛況の時代となっていた。
「やい、そこのロリコン野郎!! 正義のスーパーパイロット神原綾人様が成敗してやる!!」
若者は戦隊モノヒーローの登場シーンよろしく雄々しく、しかし足場はゴミ回収ボックスの上という閉まらない形の中で舞い降りていた。
目の前には身の丈2メートルはいくだろう強面、旧世紀のマッチョ俳優アーノルド某のような黒服、その鉄パイプで作ったような指、手が掴んでいるのは色白を通り越し真っ白といって過言でない肌を見せた美少女。
光の使者、天使と言って差し支えない彼女、プラチナブロンドに少しの錆色。
目の玉が氷の上に浮いている、そう思えるほど澄んだ青い瞳。
ほのかに上気した頬で人形でないことがわかる。
そんな少女が荷物ごと掴まれどこかに引きずられていきそうだった場面を見て、宇宙軍航空隊士官候補生でもある神原綾人の魂は燃えていた。
悪と戦わねばっと。
咄嗟にネットで見て学んだ怪しい中国拳法の型をやってしまうほどに
「リゾート地の港だからってやって良い事と悪い事があるだろぅ!! 成人女性のナンパもはばかられるようなゴリマッチョが幼女に手出していいわけねーっしをょ!!」
飛び上がった鶴翼キックは絵的に派手な衝突を起こし、黒服は咄嗟にとった防御姿勢のまま後ろに転がった。
登場は完全に決まっていた、本人的に。
可愛らしい金ラメ入りポーチと少しばかり大きめな旅行鞄を抱えた少女に、キメの笑顔を白い歯光らせてみせつける
「俺が来たからは安心して!! 正義をこよなく愛する俺様ここに見参!!」
「貴様、何をする」
転がされたシュワルツネッガーもどき、こわばった表情はぴくりとも動かさず立ち上がる。
むしろ本当に機械出来ていると勘ぐりたくなる硬い声を聞かせて。
役者としての名声を高めた殺人マシンを素で演じきる黒服相手に、名乗りを上げた綾人も素早く
構える。
「そんなゴツい顔で女の子をさらおうなんて絵に描いたような悪党だぜ!! 燃えるぜ!!」
満点の雰囲気の中、綾人は美少女の手を引く。
戸惑うように彼女は応える
「あの、違うの、ちょっと……待って……」
見知らぬ男に惹かれる困惑の瞳、綾人はリラックスと笑顔を見せる
「大丈夫!! 離さないで、絶対に助けちゃうから!!」
状況を飲み込めていない少女、あっけにとられた顔に軽めのウインク。
立ち上がった大男の動作は鈍いと見て取れた、隙を縫った一撃を鍛えられているだろう腹ではなく、こめかみめがけてぶっぱなした。
「わっはー、圧倒されちゃうね!! 見たことない船がいっぱいだね」
アロハシャツやカンカン帽行き交う表通り、リゾート惑星行きの港に不似合いな軍服を袖捲りした神原綾人は自分の右側をうつむいたまま歩く少女に陽気に声をかけていた。
「それにしてもい硬かったねーあいつ、やっぱり人類じゃなかったのかな?」
黒服のターミネーターは硬かった。
殴った拳がざくろのように砕けたのか、そう思ってしまうほどの激痛で綾人の拳は未だに真っ赤だ。
「だってあれは……サボット(サーバント・ロイド)で」
「心配しないで!! 次にあった時は必ず倒すから!!」
人の話を聞かない男綾人は、少女の単調で低空飛行な声を不安と勘違いして拳を握る。
あれと正面切って戦うのは無理だった。
叩いた拳が粉砕されるような相手と戦い続けるのは不可能、危機から脱出するのが最大の防御と作戦を変更した。
あの後ゴミ回収箱を蹴飛ばし相手の視界を汚物で飾ってから遮断、ダッシュで逃げて今ここにいる二人。
港のメインストリートまでこれば人さらいも大暴れはできないだろうという考えで、ここまでやってきて隣の少女の名前を知った。
「さて雪ちゃん、これからどこに行こうかねぇ、どっか行きたいところとかある?」
「雪ちゃんって……気安く呼ばないでください。あなたは……軍人さん?」
雑踏に消されそうな小さな声は、自己紹介から向こう馴れ馴れしくなった相手を見ようとしなかった。
まっすぐを向いたまま淡々とした様子を晒している。
「俺は軍人だよ、まだ正規兵じゃなくて士官候補生だけど。だから怖くないっしょ」
「変? ……別に怖くはないです」
正規軍の着る濃紺の制服とは違うジャケット、それもパイロットジャンパーにワッペン徽章、確かに制帽までかっちり決まった軍人とは一線を画する軽装だ。
ともすればヘルメット着用の外殻装備を着ている宇宙軍兵士には見えない体格。
雪が興味深そうに見ているのもそのせいだった。
「そうだ雪ちゃん、とりあえず迷子センターに問い合わせとこうよ。時間さえ合わせておけばお父さんお母さんと待ち合わせられるしねっ!!」
「あのですね……私は迷子じゃありません!! 失礼な事言わないでください!!」
控えめにうつむいていた顔が跳ね上がって食ってかかる、飛びかかるような反抗は今まで超がつくほど丁寧に話していた彼女からは想像来なかった綾人を驚かせていた。
思わず両手を前に出して制止のポーズをしてしてまうほどに
「ごめんごめん、そうだよねでも独りでここに来たってわけじゃないでしょ、だから」
「私は一人です、独りでここにいたら悪いのですか」
子供というには幼くない、大人という年にはまだ遠い、15歳に届くか届かないか、小さくて色白の雪は名前に見合った冷たい声で答えた。
「悪くないよ、そんな怒らないで悪いこと聞いたかなぁ、そうだなんか食べる?」
「食べません……だいたい、道に迷っているのは貴方じゃないですか?」
冷静な返答だった。
綾人は泳いでいた自分の目線を見切られた事に驚いた。
実は雪を黒服から助ける前から、この港について最初から道に迷っていた。
だからこそ人気のない裏路地で彼女と遭遇したのだ。
「雪ちゃん……なんで……なんで俺が道に迷っているとわかったの?」
「軍人は道に迷ったりしないし、リゾート地に遊びできたりもしない……軍服のままなら尚更でしょう。余暇という雰囲気でもないのにフラフラしているのは変でしょう」
的確な推理だった。
いくら軍人でも余暇でリゾート地に来るのにわざわざ軍服は着ない、むしろ自分を拘束している軍旗を脱ぎ捨てアロハシャツに短パンで来た方がいいに決まっている。
ここに召集されたからこそ、軍務だからこその軍服だ
「はうぁぁぁぁぁぁぁ、見切られていましたか……」
失態を的確に突かれ酸っぱくなる口、眉間によったシワを撫でなでる綾人に少女の諫言は止まらなかった。
「貴方初めてここに来たのでしょう、早く召集された艦に行った方が良いのでは」
まったく子供らしくない厳しい口調だった。
むしろ軍務を知っているかのような口調を前にして、気の利かない綾人は弱りきっていた。
宇宙軍士官学校のある星系から丸二日かけてここまで来た、その間にスリープ・ラーニングで街の地図を記憶しておけばよかったのだが、初めての土地を歩くという感動の薄まる行為はしたくなかった。
リゾート惑星に近い港というお楽しみ気分が抜けなかったという失態でもある。
同時に同じ任務で移動した仲間に聞くのも嫌だった。
パイロットを目指す士官として、宇宙港とはいえ地面にある道で迷子になり、そこから勤務地を聞くなど恥ずかしいと感じていたからだ。
いろいろな失敗が今更のように顔を赤く染める恥へと昇華する。
「すいませんぅぅん、でもさー、リゾート地に来たら少しは解放的になって、知らない土地を楽しみたいというのもありでしょぉ!!」
「目的地も忘れて遊ぼうなんて間違ってますよ、無駄なことに時間を使うのは人生の無駄遣いですよ。軍人ならば時間の大切さを尚更に自覚するべきですよ」
厳しい、雪の前でスプリングのように身をよじった綾人は実感した。
この少女は厳しすぎると、その幼い容姿に反して大人の世界から飛び出してきたような物言いが引っかかった。
そして勝手に想像した。
きっとこの子は厳しい両親に育てられたのだと、教育熱心も子供が笑顔を失うまで行ってしまったらそれは失敗だと綾人は自分本位に考えていた。
思い立ったら吉日男は身悶えした姿から一転、雪の肩を捕まえ熱苦しい持論をぶちまけた。
「雪ちゃん、ダメだよそんなの絶対にダメだよ。雪ちゃん子供なのに人生の楽しみに対して淡白すぎるよ!! ここはひとつ俺と一緒に冒険するしかないと思う!!」
「淡白? 何ですかそれ?」
熱苦しい男の説法、浅黒く日焼けした顔面が、粉雪のように柔らかく色白の雪に迫る
「淡白、それは薄味ということです」
「薄味? なんの話をしているのですか?」
「君の生き方です!! 雪ちゃん世界は広いんです!! 知らない事が有るとするならそれはもったいないと思わないと!! 知らない街、知らない店、知らない人、出会う全てに楽しみを見出さないと!!」
肩を掴む左手、右手は握りしめた拳、芒然としている雪に熱苦しい笑みが距離を詰める
「今日から始めよう!! 人生は冒険だ!! もっともっと楽しもう!!」
「結構です」
氷の眼差しは見開かれ警戒をあらわにしていた。
自分を説法する綾人を静かに突き放す雪、冷たい手が肩を掴んでいたてを払い務めて冷静さを保ったまま言い返した。
「私には私の生き方がありますから、余計なものを必要としない生き方がありますから、放っておいてください」と。
突き放す声、冷たさを理解しても綾人は引かなかった。
冷めた目線を見せつける雪から決して離れずむしろ前に出ると言い放った
「だったら試そう。とりあえず今日は一緒にラーメン食べよう」
「どうしてそういう話に?……どうしてラーメンなの?」
苦痛、言う事を聞かないこの男の語りに雪の眉は歪みを見せていた。
だが綾人の方はお構いなしだった、むしろ踏ん反り返ってビシっと顔を指す
「君が余分なものはいらないと言ったから、ラーメンが薄味だったらかなーり辛い事を教えてあげたくなった。濃い味噌ラーメン、最初はそこから行こう!!」
「はぁ? ラーメン? どうだっていい事です。そんな事より船に行かなくていいのですか?」
雪は焦っていたが冷静に話題を元の位置へと戻した。
これ以上心をかき乱す話はしたくなかった。この無作法な男が今まで関わった事のないタイプの人間というのは嫌という程わかった。
話題の振り方から喩えまで、聞いたことのない言葉を続けさせないためにも話続けた
「落ち着いてくださいよ、何をするにしてもまずは船の場所も確認した方がいいでしょう」
軍人で道に迷っている綾人の大事な問題に触れた。
そして本気でそれを忘れていた男は目を覚ましたように手を打った
「そうだった、危うく忘れそうだった。艦はどこにあるのかな?」
「新造艦ネージュリスは一般公開しているのだから見学できますよ。大桟橋行きのお客についていくのが一番近道です」
「そうか……お披露目もやっていたんだ。なーんだよかった、問題は解決した。雪ちゃん!! まだ時間あるからラーメン屋行こう!!」
「嫌ですよ」
「味噌は美味しいよ!!」
「そんなことは聞いてません!!」
このしつこさ、雪は思わず顔に嫌悪を晒していた。
綾人という男にはそういう態度を見せないとわからないのだと理解して、しかし効果のほどはしれていた
冷めた目線、幼女に責められることを至上のご褒美とする紳士もいるようだが、まだ16歳の綾人にはそれを理解する思考はなかった。
むしろ自信満々の顎上げスタイルを再び見せて
「大丈夫、心配しないで!! 俺がおごってあげるから!!」
傍迷惑な自己中、有無を言わさぬ態度が雪の手を引いて走っていた。
それがすでに遅れている召集時間をさらに突破する遅刻につながることなるのだが、今この時点で遅刻など吹き飛ぶような出来事が動いていた。
宇宙港に響き渡る警報で。
星の窓口、宇宙港ネティーは母星であるエレオスの美しい景色を見せつける大きなグラスエリアを持っている。
それはちょうど亀の甲羅を模したような分割支柱に支えられた大きなドームのようにも見え、外側のパネルを光らせている。
星の海を行く船乗り達にはクリスタルカットが入った七色の宝石とよばれ知られていた。
星間運輸を受け持つ貨物船に少し小洒落た貨客船、多くの都市国家が繁栄の花形として就航させている豪華客船。
それらが描き出す壮大な景色は本星降下までの時間を楽しむ観光客であふれ、様々な色で飾り付けられた街の賑わいをより一層大きなものとしていた。
惑星エレオスはその名の通り広漠とした辺境宇宙でも珍しい潤いの星だった。
本星を離れ何万宇宙キロを超えた開拓団にとって青い水の満ちたこの星を発見した時の喜びはどんなものだったか、喉を枯らし母星に戻れぬ距離に達してしまった絶望を抱きながらも希望を捨てなかった。
調査にあった座標まで辺境特有の荒れる海を渡ってここに至った時、この星の名前は決まった。
ギリシャ語でエレオス、「慈悲」という名を得た星は今や水を愛する入植者で、少ない陸地と浅い海をつないだ近代型海洋国家として多くの観光客を喜ばせていた。
ついさっきまで、しかし今は違う。
鳴り響く警報に緊張のピアノ線がピンっと張られていた
「第8ドック28錨地の資材搬送用クルーザーが管理センターの指示を離れ逃走、犯行声明上がっています!!」
平穏すぎた港湾センターの焦りは、湾内マイクの切り替えを忘れそのまま街に現在進行している犯罪を放送してしまっていた。
突然の犯罪宣伝に笑顔を見せていた客達は驚きに歩みを止め、エレオスを写していたグラスエリは一変し藍色の空を映し出す。
混乱を助長しないための処置だったが、全てを塗り替えるには少し時間が足らなかった。
宇宙港から伸びた巨大な棒、先の広がった杓文字のような大桟橋にうつる大きな艦影に綾人と雪、二人は声を合わせて叫んでいた。
「「ネージュリスが!!」」
港に詰める連絡艇に貨物船、遊覧用のビッククルーザーをはるかに超える大きさ、軍艦出港を示す電光掲示板と赤と黄色の回転灯に中空に浮く立体指示。
灰鉄色の艦体はゆっくりと、堂々と警報音に驚きザワめていてた旅行者達の前を行く、その大きさに緊急事態を忘れ呆然と立ち尽くす。
焦りを増長させる回転灯に心がダンスしたのは綾人の方だ、出港時間はもちろん知っていた。
だがその時間を上前る船出。
「待って待って待って!!! スーパーパイロットの俺様を置いてどこいくんだよぉ!!」
「……何するのよ……」
慌て同僚に連絡をつけようと阿波踊り状態の綾人の隣で、雪のは怒りに震えていた。
青い瞳の中、黒目を囲む外輪に赤いラインを浮かばせて、明らかに人間離れした怒りを表した目で。
「貴方はなにをやっているのですか!!」
動き出した強襲揚陸艦ネージュリスのブリッジで真壁イザヤ大佐は叫んでいた。
軍服なのにキャリアウーマン顔負けの着こなしタイトスカートも美しく決まった足が、無重力のブリッジを泳ぎ、艦長席であごひげをかく男を怒鳴る
「葛城艦長!!」
「聞こえてますよ大佐、航海士のモーガンくんはまだかな?」
周りは警報を鳴らし、艦体が接岸していたドックと桟橋から離れたことを繰り返しアナウンスしている。
港湾センターの指示は出港に青のOKサインだが、艦に乗り資材の割り振りをしていた部隊員達は大わらわの状態で宇宙遊泳をしている。
やっとで取手に捕まった真壁大佐は目の前に座る艦長に再度聞いた。
統合宇宙海軍の濃紺のスーツをだらしなく着崩した男、葛城金星准将に
「突然なにをしているかと聞いているのです!!」
「いやいや当然の対応ですよ、出港時間ギリギリでしたからちょうど良い。港から逃げる窃盗犯を捕まえるのもこの「複合艦隊」の仕事にふくまれますし」
「そういうのはきちんと手順を踏んでから始めることです!!」
葛城艦長のとぼけた顔に烈火の怒りを示す真壁少佐、そうは言われても艦内は確かな混乱の中にあった。
外殻部のドックにいたことから、最初から宇宙服着用の作業体制。
宇宙に投げ出される者こそいないが、この艦にはまだ積んでいない備品が多すぎた。
「試作戦闘機も積んでないし、なにより「プレスト」の乗艦も確認してない。今のままじゃただの空船なんですよ!!」
「試作戦闘機は欲しくないし、他の備品は衛生ドックのウキで受け取ることもできますよ。それにねプレストはいなくてもいいでしょ、可憐な少女を軍艦の中心に置くのは僕の好みじゃないから。いなくても従来型の軍艦としての機能は十分なのだから問題ナッシングですよ」
まるで投げっぱなし、喧騒と怒りが渦巻く艦内で葛城の態度はユルユルだった。
「早速付属巡洋艦艇に乗っている海洋警察隊を出動させましょう。リゾート地で名を上げるのは悪くないでしょう」
好き勝手にモニターを触りながら指示を出す葛城は、船に対して送られている熱すぎる視線を感じていた。
まるで弓矢で射られるような鋭い視線、大桟橋のコンコースに立つ少女の姿を
「悪いねぇ、やっぱり軍隊に女の子はいけないよ」
自分の存在を理解したうえでの置き去り、それに雪は怒りを燃やしていた。
怒りに沸騰した意識、強くかみ合わせた唇はそう告げていた
「許さない、私の、私の体を勝手につれて行かないでよ!!」と。
いつか見た夢みたいな感じでいいと思う
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こちらに世界観及び設定の走り書きあります。
合わせてみていたければ幸いです