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第三話 Be overthrow 魔王軍幹部の直属部下

綺祈君の技は大半が剣と魔力のアシストです。本人は剣だけと思っていますが、魔力も消費しています。常人だと3発目で魔力が枯渇します。

 俺とライアンは王宮に向かって走っていた。

 しかしそんな俺たちに待ったをかける者がいた。


≪まーず様ニ言ワレ、半信半疑デコンナ辺境ニ来てミタガ、マサカ本当ニイルトワナ。≫


 そう言って家の影から現れたのは、真っ赤な色(多分)をした、トロールと思われるもの。

 大きさは、10m近い。武器は持っていないが、かなり太い腕をしている。殴られたらひとたまりもないだろう。


≪俺ノ名前ハ、「だいもす」。魔王いくりぷす様率イル魔王軍、第三幹部ノまーず様ガ主。≫


 マーズにダイモスって。思いっきり太陽系じゃね?俺の記憶が間違ってなければ。どうなんだよ。それ。


「なにっ!?」


「ライアン、どうした?」


「は!?お前、ダイモスを知らないのか!?やつの率いる軍は倒した相手の首を必ずはねる奴らだ!しかも女子どもに容赦しない!」


 ?必ず首をはねると言うことは、瀕死の状態で生き残ることが出来ないと言うことか?必ずとどめを刺しているって事か。


「しかも殲滅した後は、そこの人たちの血で自分の名前を書いていくと聞くほど、残虐な奴らだ。」


 ライアンは少しおびえの入った目でダイモスと名乗ったやつを睨んでいる。

 それはまたえげつないな。


≪ヨク知ッテルジャナイカ、人間≫


 よく見ると、ダイモスの口の周りに火花がちらちらしている。

 なるほど。やつは火属性か。ならば。

 俺は刀を鞘に収め、ダイモスの方を向き、小声で技名をささやく。



「<明鏡止水ノ心。水面ニ映ル、カノものヲ裂ケ>一刀流居合い、『水芭蕉(みずばしょう)』」


 椿のときは戻った刀は、今度は振り抜かれたままである。

 斬撃の通ったライン上に水が生まれ、ダイモスまで届いている。

 その水面に、多くの水芭蕉が咲いた。と思った次の瞬間。全てがはぜた。

 俺はすぐに、肘を曲げ、刀を肩に担いだ。


「<合ワセ技>担ぎ斬り、『寒忍(かんしのぶ)』!」


 一気にはぜた水が凍り、棘状になった。そして一斉にダイモスに襲いかかる。


「最初からクライマックスだぜ!」


「おお。」


 ライアンが感動している。

 どうだ。俺格好いいだろ。


 と、思っていたら。


≪フンッ!!≫


 バシュッ!


 ダイモスに当たる前に全ての氷が水蒸気となった。


「え?」


≪俺ガ火属性ト言ウノモ調ベタコトカ?ダガ、弱点ト言ウものハ最初ニツブスものナノダヨ。≫


 水蒸気で出来た霧の向こうからダイモスの声が聞こえる。

 やばっ!そりゃそうだよな!ミスった!


 急いで体勢を立て直そうとしたら、霧に大きな影が映る。


「マズった!?」


≪フンッ!≫


 体に強烈な衝撃が走った。


 飛行甲板(がんめん)に直撃。そんな。バカな。


 衝撃を減らそうとバックダッシュをかけたが間に合わなかったのか!?いや、リーチの問題か!!



 俺は文字通り殴り飛ばされたようだ。背中に何度も衝撃が走る。壁が視界を高速で横切っていく。

 一際大きな衝撃が走り、俺はなんかの壁に埋まって止まった。


 よく死ななかったな。俺。


「やべっ!刀どっかに落とした。」


 と、思ったら、俺の埋まっていた壁が抜けた。


「うわっ!?」


 もちろん抜けたため俺は後ろに倒れてしまった。


「きゃっ!?」


 女性の声が聞こえたので寝転がったまま周りを見ると、ちょうど女性がオークにいわいる壁ドンをされているところだった。


「た、助けて、下さい?」


 女性は疑問系で俺に助けを求めてきた。

 正直それどころではないが、これも異世界でのリア充ライフのため(まだ諦めていない)!


「お任せを!」


 俺は素早く銃を懐から抜くとオークの頭を撃ち拭いた。


≪グ・・ガガ・・・。≫


 オークは見事に頭を撃ち抜かれ、倒れた。


「あ、ありがとうございます。」


「いやいや。当然のことをしたまでだよ。」


 と言っていると、俺の開けた穴から声が響いた。


≪オオ。死ンデナイトハナ。サスガ勇者ト言ッテオコウカ。≫


 俺は飛び起きて、バク宙をかましながら穴から距離をとった。

 決まった。決まってしまった。俺、格好いい。キリッ


「ぐっ!」


 と思っていたら、穴から(穴の大きさが合わず壁をさらに破壊しながらだが)出て来たのは、右手にライアンを持っているダイモスだった。

 ダイモスの手はライアンの首に入っていてライアンは苦しそうだ。


「ライアン!?」


 俺は急いで銃をダイモスに向け、


「<我ガ思イヲ彼ノ地ニ届ケロ>!銃撃!『躑躅(つつじ)』!」


 俺が引き金を引くと、銃弾が撃ち出された。が、銃弾は物理法則を無視し、曲がってダイモスの手首に吸い込まれた。


≪ムッ!?≫


 ダイモスの手首に入った弾丸は、手首の内側ではぜ、手がはじけ飛んだ。


「ぐっ!・・・かはっ!ハァハァ。」


 それによりライアンが解放され、地面に落ちた。

 ライアンは地面を転がるようにして、ダイモスから距離をとった。

 俺は急いでライアンの隣に行った。


「悪い。大丈夫か?」


「いや。助かった。それと、あまり大丈夫じゃないな。」


 なぜライアンが無事だったのかは分からない。だがとりあえず、無事だったことを喜ぼう。


≪其所ノ人間。貴様、本当ニ人間カ?≫


 そう言って、ライアンを興味深そうに見るダイモス。


「何言ってやがる!俺はれっきとした人間だ!」


 ライアンはそう反発するが、ダイモスは首をひねったままだ。


≪ソレニシテハ、ソノ防御力ハ異常ダナ?≫


 どうやら、ダイモスはライアンの首をつぶそうとしたが、上手くできなかったようだ。

 ライアンの防御力が異常ってどう言うことだ?


「はっ!俺は昔っから防御力だけは自慢でね!残念だったな!」


≪フム。人間ノ防御力ト言ウヨリハ、龍族ノものニ感ジラレタガ。≫


 は!?今こいつなんて言った!?

 ライアンが龍族!?

 何それ超格好いいんですけど!?


「はぁ!?何言ってやがる!俺は人間だぞ!?」


≪ム?マアイイ。今ハ勇者ダ。≫


 ダイモスは、今の優先順位を思い出したのか俺のほうに向き直った。

 えっ!?いいの!?俺めっちゃ気になるんですけど!


 こっちを向いたダイモスは大きく深呼吸をするように息を吸い込んだ。


 それを見た俺の背中には強烈な悪寒が走った。


 これはマズイかもっ!?


 俺が全力で後ろに下がったのと、やつが頭を下ろすのは同時だった。


 ゴウッ!!


 下がった俺に向かって火炎放射が迫る。


「アヤキ!!」


 ライアンの切羽詰まった声が聞こえる。


 ―――左手を前にかざせ。


 突然頭の中に声が響いた。

 必死だった俺は謎の声が言ったとおり左手を前にかざした。すると、体から何かが引きずり出される感覚が体を襲った。

 なんだ!?

 左手から紫色の粒子が放出され、全面に展開されていく。その粒子により、ダイモスの火炎放射は阻まれている。


 ダイモスの火炎放射が終わると、光が弾け、紫色の大盾が俺の手の中に形成されていた。


 ―――まったく、手のかかる。


 ま、まさか。この声。エセ神!?てめぇなんて事してくれやがった!異世界最初の思い出が牢獄って斬新すぎるわ!


 ―――ほう?ワレがいなければ今頃焼き殺されていた存在でよく言うわ。


 うっ。そのことに関しては、感謝するけどよ。


 ―――そもそも貴様がふさわしい態度をとっていれば、このようなことにもならなかったのだがな。


 うぅ。い、今はそんなことよりダイモスだ!


 ―――(やはり助けなくてもよかったか?)


≪ホウ。今ノヲ防グトワナ。≫

「アヤキ!無事だったか!」


 二人が二者二様の様子でこっちを見ている。


≪デハ次ダナ。≫


 ダイモスが左手を振り上げてこちらに殴りかかってきた。


「食らうかよ!」


 確か熊野倒し方は懐に入ること。


 俺はダイモスの拳骨を交わし、懐に入ろうとした。

 しかし、身長差がある。俺は見事に蹴り上げられてしまった。


「うげっ!?」


 体に衝撃が走り、俺は5mほど蹴り上げられた。


 マズイ!?


「アヤキ!?」


 下でライアンが顔を驚愕一色にして見上げている。


「見るからに蹴る準備してるやつの足下に行くとか馬鹿だろ!?」


 へ!?


「気づいていたなら先に言えーーー!」


 マジかよ!全然見えてなかった!


 だが、残念だったな、この位置は、


 ダイモスの頭を狙える!


≪フン!ハタキ落トシテヤル。≫


 なるほど。打ち上げた後地面にたたきつけるって感じの攻撃か。

 しかし振り下ろした手を上げるのが遅すぎるな。


「喰らえ!<我ガ討チ払イシハ闇。全テノ闇ヲ打チ砕ク光ヨ。>咲き誇れ!『鬼百合(おにゆり)』!」


 弾丸はダイモスの眉間に吸い込まれる。


≪ム!?≫


 自分に飛来してきたモノがなにか、ダイモスは見定めようとした。

 しかし、それが何であるか、ダイモスが理解する前に、弾丸はダイモスの頭を貫いた。


≪!?≫


 次の瞬間、ダイモスの頭部から光があふれ出しはじけ飛んだ。光は、大きなユリの形をかたどると、数瞬の後、霧散した。


「よっしゃぁ!」


 俺はそのとき、まだ気づいていなかった。





 自分が空中にいるという事実に。





 あれ?景色が上がっていく?目眩か?やべぇ。疲れたんかな?まずいな。まだゴブリンとかいっぱいいるだろうに。

 視界の端で、首を失ったダイモスの体が、壁に倒れていくのが見える。


 ま、ダイモスは倒したし、少し休ませてm


 ゴシャ!!


「うがおsmdっふぁjかお!!!???」


 背中に激痛がぁ!?

 そうだった!ダイモスに跳ね上げられて宙にいたんだったんだ!


 横を向くと地面が。それと地面に立っているライアンが。

 さっきオークに襲われていた女の子と立っている。


「大丈夫?怪我はないかい?」


「は、はい。大丈夫です。」


 彼らの周りには瓦礫が散乱している。


 なるほど、ダイモスが倒れたときに壁が壊れたのか。んで、その瓦礫から彼女を守ったと。


「よかった。君みたいな可愛い子に怪我が無くて。」


 なんかライアンがイケメンやってる!?


「は、はい。あ、いえ。私別に可愛くなんか・・・。」


 女の子も顔を赤くして、満更でもなさそうだし!

 なんだ、このリア充は!?そして超疎外感!

 邪魔してやる!!


「あー。ライアン?」


 俺は地面に転がったままライアンに呼びかける。

 なんかお花が飛んでる様に見えるが無視無視。後ろには赤い首無しトロールもいることだし。


「あ、そうだった。アヤキ無事か!?」


 何そのとってつけた感。超寂しい。


「これが無事に見えるか?」


「い、いや。悪い。」


 俺の怨嗟、もとい恨みのこもった(あれあまり変わってない?)声で、ライアンにそう言うと、ライアンはすまなさそうにそう言ってきた。


「ま、いいですよーだ。どうせ俺は罪人だし?「ライアン様というお名前なのですね?」男だし?よく分からないやつだから?イケメンでMMKみたいなライアン君とは?そりゃあ格が違いますけど?」


 俺は立ち上がりながら、ライアンにそう言った。なんか途中に入った気がするが気にしない。気にしない。ぜ、全然気になんてなってないんだから!


「わ、悪かったって。ってMMK?」


「モテてモテて困っちゃう。の略。」


「は?なんだそりゃ?」


「そんなことより、まだ敵が全部いなくなった訳でもないだろ?さっさと倒さないと。」


「そ、そうだな。じゃあどこか物陰にでも隠れてて。」


 ライアンは俺の言葉にうなずくと、女の子にそう言うと俺の隣にきた。


 これが格差か・・・。


 冗談はさておき、刀を最小関した俺は、ライアンと並んで王宮へと再び歩き出した。



誤字・脱字などあったらご指摘下さい。

違和感や誤表現などの指摘もして下さると感謝です。m(_ _)m


お気に入り登録して下さった方に心からの感謝を。

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