第四希望 むしろ妹にパシッてもらえるようにお願いする
結局再提出となった書類を俺はカバンに入れた。なぜだ、姉、妹ならたとえ頭の中だけの存在でも人権が認められるはずじゃ・・・
「うーい、お説教は終わったか。」
ぶつぶつ文句を言っていると幸生がにやにやと笑いながら話しかけてきた。
「まあな、結局再提出だよ、まったくいい年して先生は頭が堅いな。あんな暴力的で短気な人間俺は大嫌いだ。」
「もしあんな人が姉だったらさすがにうんざりか?」
「あんな暴力的で短気な姉俺は大好きだ。」
「はあ、お前はどんな人でも姉と妹とって属性がつくだけで大好きな人になるのかよ・・」
「なら聞くがお前は駄々をこねる子供は見ていて微笑ましいが駄々をこねる大人はうざいとか思ったことはないのか?どちらも違いは子供か大人かだけだぞ。」
「いや、それはちょっと違うだろ・・」
やれやれと幸生は頭を抱えた。幸生を論破し、次の授業の準備も済ませ時計を見るとまだ少し時間があるため俺はこの前買った『思春期を迎えた妹に対しての接し方』をカバンから取り出し時間をつぶすことにした。妹いないのに何読んでんだよ・・とぼそりとつぶやいた幸生には無言でシャーペンが入ったケースを床にたたきつけてやった。
「ちょっと、萩村君!いい加減にお姉さんたち関連で先生を困らせるのはやめなさいよ!」
幸生が涙目になり床でケースを抱えているとわがクラスの委員長が近づいてきた。
「しかしだな、姉は社会人となりまだ慣れない環境にも頑張りながらせっせと働き妹はお兄ちゃんと同じ学校行くんだ。とまだ春だというのに受験勉強を開始している。こんなにもがんばってる二人をいない者としていいのだろうか、いやいいはずがない!」
がたっと立ち上がりこぶしを震わせ俺は涙を流した。
「えーっと、野崎君ホント萩村君には姉も妹もいないんだよね?」
「ああ、すべて奴の妄想だ。」
あまりの現実的な陽平の設定に委員長はたじろいだ。その後すぐにドアのほうから委員長をほかの女子が呼ぶ声が聞こえたためもう迷惑かけちゃだめだよと言葉を残し教室から姿を消した。
「まったく、委員長というやつはどうしてどいつもこいつも口うるさいんだ委員長になるやつはろくな奴じゃないな。」
「お前の妹が委員長になったって言ったらどうするのさ。」
「委員長になるやつはクラスで一番人間ができていてすぐれている奴と相場が決まっているさすがはわが妹だな。」
やれやれと幸生はまた頭を抱えた。何度も言うようだが、この男萩村洋平には姉も妹もいないすべては妄想である。