第七章再会
数年後、洋子は子供の大学の卒業式に参列するために上京してきた。
式に参列した翌日、洋子は電車を乗り継ぎわたしに会いにきた。数年ぶりに洋子と過ごした二泊三日の日々はとても幸せな気分だった。箱根に一泊し、あの時と同じようにふたりで宿の温泉に入って、今度は大人になった洋子の背中を流し、洋子ちゃんもわたしの背中を流してくれた。
三月の終わりで天気が悪く富士山が見えないのは残念だったが、三途の川のセットや箱根細工の見学などして、洋子はとても喜んでいた。5月の新緑の頃また来ようと約束した。
それから三年ほど経ったとき、わたしは再び息子と一緒に里帰りした。
洋子ちゃんが自分の家に泊まるように言ってくれたので二晩泊めてもらった。洋子の運転する車の助手席に乗って、南の島の海中公園までドライブし、海の中を泳いでいる魚を遊覧船から間近に見ることができた。
洋子ちゃんの家の庭には春の花が咲き乱れ、お母さんもお元気そうでわたしの来訪を喜んで下さった。でも高齢なのでこの出会いが最後になるのだろうと思いながら別れた。
洋子ちゃんは時々電話をくれる。
わたしが息子と孫に囲まれて何の心配事もなく暮らしているので、洋子はわたしのことを幸せな人だと言う。
あと何年生きれるのか分からないけど、今はまだコーラスの仲間と歌ったり絵手紙を習いに行ったりする体力は残っている。いずれは何らかの形で家族に迷惑をかけて死ぬのだろう。
もう一度洋子ちゃんに会いたいけど、わたしには実家に帰る体力が無くなった。洋子ちゃんの方から会いに来てくれたらいいなと思って待っているのだが。
洋子ちゃんはわたしの妹のようなもの……。幸せに暮らして欲しい。
どんなことがあっても頑張って私よりずっとずっと長く生きてもらいたい。
完