連続金髪殺人事件②
神候補と初遭遇する瑠々。運命が動き始める。
2,連続金髪殺人事件②
「小学生を食って霊格をあげようなどと、下級貴族が考えそうなことだな」
物怖じしない、澄んだ声。力強く、雄々しい。
「ぐぁあああああっ!」痛みに、男は悶えていた。
「痛いか? そうだろうそうだろう。片腕がもげたんだからな。安心しろ、すぐに僕が楽にしてやる」
その声の方をみる。
美しかった。その身体はうっすらと光り輝き、ゆるやかな雰囲気に包まれている。
小柄だったのは、女性だったから。だが顔つきは男のように凛々しい。
そして、3メートルはあろうかという、あまりにも巨大な槍。それを軽々と担いでいる。
「ヴァルハラへ帰れ。キサマは北欧貴族の恥だ!」
と同時に、槍がまばゆい光を放つ。槍を担いだ左腕が、静かに弧を描く。
次の瞬間、男の身体の中央には、大きな穿穴が空いていた。大量の血液がでるのと時を同じくして、その身体は次々と灰になっていった。
「すごい……」
瑠々は言葉を失っていた。
「自らの身体をあえて危険に晒すのは、感心しないな、女傑よ……」
「にょけつ? 私、そんなにイカツクないわ」
「君の内魂は立派な戦士だ」
「ないこん? なにそれ?」
「ふふ、頑張って勉強したまえ……、ではな」立ち去ろうとしている。瑠々は敏感にそれを感じ取った。
瑠々はすかさずその袖をとっていた。
「あなたは何者なの?」
「おおこれはこれは、物怖じしないお嬢さんだ」
「答えて! 焦らされるのは好きじゃないの」
「ははは……。生き急ぐのは感心しないねぇ」
『……』瑠々は半ば睨むようになって、目の前の人物を見つめていた。目の前であっさりと人を消したが、悪い人物のようには思えなかったのだ。
「ふふ、そら、君のお友達をほったらかしにしてはいけないよ。あの子は魂が磨かれていて、いい魔力触媒になる。これからも危険にさらされるかもしれないねぇ」
「大丈夫よ。私が守ってあげるから。ね、弥美……」
弥美は気を失って、眠っているようだった。
「なに寝てんのよ……ったく」
「いやぁ、あんなひどいことをされたんだ。ちょっと記憶が鮮明なままじゃ、内魂が奥に引っ込んでしまいそうだからねえ。ちょっと眠ってもらったんだよ。明日の朝起きたら、今しがたの記憶はうまくぼやけているだろう」
「……。やっぱり、貴方良い人ね」
「ははは……。ただの『人殺し』さ。君等にとっては。ではごきげんよう。くれぐれも地球からの授かりものを大事にしたまえ……。あ、その子のおうちの人にはうまいこと言っといてね。では……」
気づくとその人物は何の前触れもなく消えていた。
ーーあ。
心にぽっかりと穴があいたような喪失感。言いようのない恋しさのようなものを感じていた。
「ふん、また情報を集めまくって探してやるんだから!」




