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エマ・カルディア  作者: マシュマロポテト
プロローグ・物語は、ここから始まる
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自己紹介のち居眠り

久しぶりの投稿です。


「ラサ、なぜココにいる?」


 ………はい?



 訳が分からん質問が唐突に来た。

 俺が風に吹かれて流されて、こんなところまで飛ばされたことは前にも何回か話している。

 賢いイーニェイのことだ、話の内容も理解しているはずなのだが……


「あの~、イーニェイ?俺なんか悪いことしたか?」


「??」


 いや、可愛く首傾げられても……


「イヤ?」


 ………っく、可愛いじゃねえか! ってそうじゃなくて!!


「……さっきの質問、どう言うこと?」


「だから、ラサはなぜココにいる?」


  ダメだ、お互い言いたいことが噛み合って無い。

 イーニェイの王国語はまだ分かりにくいし、俺はイーニェイ達の言葉サッパリ使えないし、コミニケーションは今だ難しい。


 だが待て、俺が風に飛ばされてきた事はイーニェイも知っている。それに今は怒ってる訳でも無い。

 となると、彼女の聞きたい“ここに居る理由"とは


1、イーニェイが突然記憶喪失。

2、俺が流された云々を忘れた。

3、風で飛ばされることになった理由を聞いている。


 2はまず無い、彼女記憶力はすごい。聞いただけの王国語を覚えてるし…

 そもそもそんな簡単に忘れられても困る。

 1では無い事を祈りたい。となると……3か?

 言われてみれば、確かに今まで俺が “何処の誰なのか” については「平原からから来た」としか教えてない気もする。


「なぁ、お前が聞きたいのって“俺が此処に来るまで何をしていたか”って事でいいのか?」


「うん、聞いたことナイ」


 そう言うことなら、いくらでも話して聞かせましょう。…大した話でも無いけれど。


「んーと、一言で言うなら『写真家』って仕事をしてたんだが………って言っても分からんよな」


「わかんない」


 デスよね~。


「 写真家ってのは文字通り“写真を撮る”事を生業とする人のことなんだ。

  んで、写真ってのはあれだ。あの壁に掛かってるでっかい絵みたいなヤツ。

 風景や動物なんかをこの 写影機 ってカラクリで写すだろ、そしたら中で小さな絵が出来る。

 その絵を色薬やら固定液やらで大きな布に移して完成。

 綺麗な写真は貴族やらが高く買い取ってくれる。上手くいけばぼろ儲け。っとまぁ写真家ってのはそんなもんだ。

 だから珍しい風景求めて砂漠風すれすれまで近寄ったら巻き込まれました、というわけさ」


 いい写真を作るには色薬も高いの使うし、辺境の珍しい物を撮るために金が掛かる掛かる。

 お陰で俺みたいに遭難する奴続出って訳。

 ハイリスクでリターンはそこそこ。なる奴は少ないし成功する奴はもっと少ない職業だ。


  ちなみに、壁に掛かってる写真は俺の撮った初めの一枚だ。

 

「なんの変哲も無い日の出のだけど綺麗だろ。」

 

 王国の中心、王都の朝焼けを撮った写真。

 まぁピンぼけも酷くて売り物にはならなかったんだがな。


「シャエイキ? 見せて」


 …無視っすか。 


「写影機な、いいよ。ついでだ写真撮ってやるよ」


 ……大丈夫、単に写影機の方に興味があるだけだろう。


 腰に巻いた鞄からレンズと写影機を取り出し組み立てる。

 物珍し気に覗き込んでいるイーニェイを窓際に立たせ、フィルタに目を落とす。

 うん、いい絵だ。奮発して蛍玉を使おうか、と思っていたのだが逆光の中で微かに微笑むイーニェイはそれだけで絵になる。


「いくよ」


 と声をかけ、写し窓の横のつまみを押す。

 カチッと小さく音がして写せたことを知らせてくれる。これでおしまい。


「…終わり?」


 何処か釈然としない顔で首を傾げるイーニェイ。

 なんかもっと派手なものを期待していたのかもしれない。

 そういう派手なのもあるにはあるが……なにぶん金がかかる仕掛けなので出来れば使いたくない。

 残念そうなイーニェイに終わりだと告げ、写影機のレンズを外す。


「ラサ、次はどうするのだ?イログスリとかコテーエキとかは?」


 物足りなそうに催促してくるイーニェイ。

 これだから素人は・・・。

 俺も初めて見たときは同じ様な反応をしたのだから、人のことは言えないが。


「いいか、絵を写真に仕上げるには余計な光や色が混ざらないことが大切なんだ。だから」


 だから今夜、舟を降ろしたら星明かりも入らないように窓を閉め切って徹夜で仕上げる。

 こっちだってイーニェイの写真楽しみなんだから。



 さて、そんな訳でいつもより少し早く舟を降ろし飯の支度をすることになった俺たち。

 イーニェイの狩りに参加できない俺は、おとなしく俺はスープの準備をしておく。

 これだってなかなか大事な仕事で、前にこっそりイーニェイに着いて行こうとしたときは、鳥に晩飯を盗まれる、事件が起きた。

 あのときは怒ったイーニェイが斧を振り回して大変だったのだ。


 雲の中でを飛んで集めた水と昨日作った干し肉、それに俺の持ってきた干し野菜を鍋にいれ、ぴっちりと蓋をする。

 これを昼間の熱の遺る砂に埋めれば、薪いらずで料理が出来る。初めて見たときは感動したものだ。 

 あとは、イーニェイが戻ってくるまでコソ泥の見張りをしながら煮えるのを待つだけ・・・・




「ただいまラサ」


 …………いけねぇ、寝てた。


「お、おお。おかえり」


 なんだかいつにも増して声の冷たいイーニェイ。

 この感じ、まさかまたやらかしてしまったか!!

 しかも今度は正真正銘俺が目の前に居るときに。

 ビビっているのを隠しつつ、イーニェイが後ろを向いて獲物を解体しているのを確かめ、鍋を調べる。

 よし! 無事だ。


「ラサ、起きてなきゃダメ。ゴハン、鷹に取られかけてた」


「すいませんでした!!」


何はともあれ、飯食ったらいよいよ“仕事”だ。

話の本筋もようやく纏まったので、此処から本当の始動です。




まぁ、更新のペースは変わらず週に一、二度ですが……ゴメンなさい。


2013/2/9 改訂しました

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