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エマ・カルディア  作者: マシュマロポテト
第一章 砂の大地の水たまり編
10/27

遭遇のち邂逅(3日め)

宣言していたよりも二日?も遅れて本当に申し訳無いです…


ポケモンの新作をクリアするのに情熱を注ぎ過ぎた……

 熱と砂の大地にぽっかりと広がる空色の鏡面。その比較的浅い所にある大きな中洲、その街はある。

 中洲を取り囲む様に成長の早い壁樹が植えられ、中では小さな家々が立ち並ぶ。

 その中で一際目に付くのが、湖の中央に面する岸に建てられた、一際大きな家。その特徴的な煙突から黒っぽい煙をもうもうと吐き出している。



 水上都市・アースガルズ。水と白亜と強欲の街の、物語が回り出す。



「いぃぃぃぃぃーやゃゃゃぁぁーー」


 小さな家屋が建ち並ぶ裏路地で、目も眩む様な閃光が走り、背の高い少年が絶叫しながら駆け抜ける。


「どぉーこぉーぞぉーこーこー!」


 一歩間違えなくても危ない人確定な叫びをあげつつ、ラサは後ろを振り返る。


(いる!まだ後ろからついて来てやがる。)


 灰色のローブを目深に被り、延々と付け回して来る不審者に気が付いたのは、つい二時ふたときほど前。 

 怪しい人だなぁ、とか思って走って逃げたのがそもそもの失策だったようだ。


 裏路地から大通りへ、また裏路地へを繰り返して撒こうとしたのだが……結果は見ての通り。



「来ーるーなー」

 

 周囲を見回し、人気の無いことを確認してから、取り敢えず蛍玉を後方に放り曲げる。

 衝撃に反応して閃光を撒き散らす蛍玉の威力は先日の雨の日の蟹どもで証明済み。

 ひるんだ隙になんとかしようと考えたのだが、どういう仕掛けかふつーについて来る。


「ありえねぇーぞ。お前はあのでっかい蟹以上か!」


 巨蟹すら一発で気絶させた蛍玉がこうも効かないのはおかしい。


(畜生、今止まったらヤられるよなぁ…俺は戦闘は専門外だっつうの!)


 イーニェイが居てくれればいいのだが、彼女とは目下別行動中だ。

 内心不満タラタラだが今回は真剣に命に関わる。


(仕方ねぇ……でも、もったいねぇ!!)


 

 自分の命と財布の中身を暫し天秤に掛け……決断する。

 ポケットの中から小瓶を取り出し、道に投げつける。

 シュウ!と煙が上がり、薬が地面と、直後に踏み出した追跡者の足を焼く。

 失敗した色薬の剥離や写影機のレンズに着いた指紋なんかの汚れを落とす剥離薬。

 金属には効かないが、人が触れれば肌が爛れること請負だ。


リガャ(なんだ)!」


 さすがにこれは効いたらしく、後ろの追跡者が始めて口を訊く。

 声は男、恐らくラサより少し年上であろう。

 問題があるとすれば、そこではない。

 

 (あれ? なんで分かるんだ?)

 

 今のは王国語ではなかった。

 少なくともラサの知る王国語のどんな訛りにも今ので『なんだ』という意味になるものは無い。

 なのに分かる。王国語でないのに分かってしまう。

 そんな言語は、無学なラサには一つしか無い。

 あっという間に王国語をマスターされたせいで聞かなくなっとは言え、それでも日常の端々ちょくちょく混じっていた彼女の言葉使いはまだ忘れては居ない。


(砂の言葉? 砂の民が俺に何の用がある?)


 湧き出す疑問は取り敢えず後回し、まずはこのめんどくさい追走劇を終わらせる。

 奥の手そのニ!

 こっちはいささか掛けになるが仕方が無い。

 再びポケットから、今度は別の小瓶を取り出し後ろに投げる。


「!!」


 ザッと音がして、追跡者が足を止める。

 それもそのはず、小瓶が炸裂した所は見るも毒々しい、紫と茶色のマダラの水溜りが出来上がっていた。


 飛び越えるため、足を踏み切った所へ蛍玉を投げる。

 空中で不意打ちの閃光を喰らい、バランスを崩して水溜りに墜落するのを尻目に、ラサは急いでその場を離れる。

 後ろで男が体に着いた粘性のある液体を振り落とそうとしているので、これで暫く時間は稼げるだろう。



 因みにあれ、いかにも毒っぽい色合いなだけの、ただの色水だ。

 写真の色づけに使う色薬を水に溶いただけだがハッタリには効果的な様だな、とラサは急いで大通りを抜けていく。

 はじめの蛍玉が効かなかったから、もしかしたら視覚以外の方法で追われているのかもとも思ったが大丈夫だったらしい。



 色薬を使ったハッタリが成功したポイントは二つ。

 一つは直前に使った強酸の小瓶が本物であることを相手に確かめさせること。

 もう一つは……




「バカ! どんな色が出るかは時の運(・・・)とか!どーすんのよ外したら」

「その時は…………諦める?」

「諦めるなぁぁぁーー」


 無事に街の郊外に停泊させた家に戻ってきたラサを出迎えたのは、尋問と説教の嵐だった。


「……さて、気を取り直して、」

「こぬぉ馬鹿! まだ話の途中だー!!」

「………ハイ」


 さっきから説教がどんどんヒートアップしているこの人は、街中で偶然の再開を果たした同郷の友人である。

 さらに言うなら今は割と現在進行形で命の恩人、なんていう付加価値までついている。


 先ほど、日も暮れかかり、夕餉の支度の煙が漂う路地を爆走していたラサ。

 そこに偶然通りかかり、宿に匿ってくれた彼女の名は


「それよりさ、クジャ」

「クジャじゃ無い、クヂャです! だいたいラサ、まだ話は終わってないから腰を折らないで」

「…すいません」


 クヂャ・ド・ノル。

 大商人のひ孫で各地で商売チャンスを探す濃い金髪の少女。

 ク()ャではなくク()ャである事にすごくこだわるところから分かる様に、なかなかめんどくさい人ではある。


そんなこんなで、田舎のかーちゃんもびっくりの無限説教ループからようやく抜け出せた時には、高かった日もすでに暮れかかっていた。

…仕方あるまい。


「なぁクジャ、お前何処の宿に止まってんだ?」

「は…?」


 クヂャはアホ面で聞き返して来るが、至ってまともな質問なのである。

 守銭奴のクジャ。

 そんなあだ名がつけられる様なクジャが泊まる宿ともなれば、ど貧乏なラサでも何とか泊まれるレベルのものだろう。


「へ?そんなの決まってるじゃん」


 だがここで。


「決まってるじゃん。道で寝てるよ」


「は?」


クヂャの答えはラサの予想を大きく上回った。




ちょっとした挑戦をしてみました

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