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作者: 邑楽

誰も私の気持ちなんてわかってくれない。

だって私は悪者だもの。

何をどうしようが、どう足掻こうが、所詮罠。

悪者として、あなたを苦しめる罠にしかなりえないのよ。




私は、あなたが罠に――、私にかかると笑い、喜ぶわ。

そうせざるをえないから、そうしているまでなの。

だけど…、だから、本当は泣いているのよ。

笑いながら、ずっと泣いてきた。

涙を流してきた。

その涙は地に落ち、水たまりから湖へ、そして、やがては海となって、私はまたあなたを苦しめなくてはいけない。

あなたを苦しめたくはない。

だから私は涙を流す。

いずれ、その涙があなたを苦しめる罠になるとわかっていても。

私は、その涙を止めるすべを知らないから。







はっ、として目が覚める。

はっ、として夢が覚める。

そして、あなたは罠にかかったことを悟ってしまうの。




いつまでも、これが罠だと悟ってほしくなかった。

いつまでも、夢から覚めてほしくなかった。

いつまでも、目を覚ましてほしくなかった――…。

あなたは罠――この私の中で永遠に眠っていればいいの。

なのに、あなたは目を覚まし、私を壊して脱出しようと試みる。

勿論、私があなたに敗けないような強い罠である筈がなく、私の想いとは裏腹に、あなたは私から離れていってしまうの。




本当は、あなたを苦しませたくなくて。

本当は、あなたを癒す宿屋が羨ましくて。

でも、私はやっぱり罠でしかなくて。

あなたを苦しめなくてはならない、罠でしかなくて。

酷い運命ね。

…でも、それはあなたも同じ。

あなたは勇者として褒め称えられるけれど、いつ死ぬかわからないというきわどい日々を強制的に送らされている。

私は悪者としてあなたを苦しめなくてはならないけれど、私が死ぬ時はあなたに壊される時だけ。

いったい、どちらが幸せなのかしらね。




ほら、今日もあなたが罠にかかる。

ほら、今日も私は涙を流す。

このゲームが遊ばれるたびに、それが繰り返される。

そう、私はつくりもの。

そう、あなたもつくりもの。

このゲームの中でしか生きれない。

悲しい悲しいゲームの住人。

あなたはゲームをしたことがありますか?

そして、考えたことがありますか?

ゲームに登場する人の心の中を…。

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― 新着の感想 ―
[一言] 現実的に言ってしまえば元も子もなくなりますが、この考えから行くとマリオは……。
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