第1話―4(終)
「あれは、非道い。一応注意しなければ。」
俺が近付こうとすると、一年生は急に呻き出した。
「やめろ…来るな…やめろ…俺に…俺の中に…俺の中に入って来るな」
一年生は、右目を抑え地面に経たり混む。
一年の体が徐々に変化していく。
「あががぁぁ…うぐぐぐ…あっあぁぁぁ…」
一年の体はだんだん大きくゴツくなって頭からは、角が二本生えてきた。
「鬼!暴れていたのはあいつの事だったのか。」
それにしても、大きいな…こんな剣で何とかなるのか?
「うわあぁぁぁ…何故この姿に…俺は望んでない…」鬼は自分の姿に驚いて声を上げる。
「お前か…お前が!」
ギロリと俺を睨む鬼。
気づかれた!
「うはぁぉあ!」
鬼は俺の方へすさまじい速さで走って来る。
「ち、近い!」
一瞬で間合いを詰められ鬼は俺の目の前に立ちはだかった。
「お前が!」
鬼は右手で右目を抑えたまま左手で俺を殴ってきた。「うおっ」
俺は殴られるギリギリの所で攻撃を避けた。
あ…あぶねぇぇ…
鬼の攻撃は空振りに終わった。
「逃がすかぁぁぁぁぁぁ」鬼の声はドスの効いた低くダークな声になっていた。再び鬼は俺に向けてパンチしてきた。
よ、避けきれねぇかも…
見事にヒット!鬼のパンチは俺の胸部をえぐった。
バキバキバキバキ
「かはあぁぁ!!」
口から血が大量にこぼれ、数メートル飛んだ。
学園の鉄柱にぶち当たる。「ぶぶふうぅぅぅぅぅ…」口から真っ赤な血が更に飛び出た。
あ…あばらが2、3本折れてる…
俺は自分の胸部を撫で確かめる。
「どこに行った!ああぁぁぁ…目が…目が…!」
鬼の右目はだんだん赤く充血し右目を中心に根のような赤い筋が入り出した。
「きばきゅばあばきなかあたはやまかぬすさあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!」
鬼は最後には何を話しているのか分からないようになっていた。
「くう…どうしたら…」
今の俺じゃ動くのがやっとかもしれない…どうしたら…どうしたらいいんだ…
「夜…狂夜…狂夜…」
聞き慣れた声だった。力強い女性の…
生徒会長?一体どこから?見える範囲で見渡すが近くには誰もいない。
「ここだ。鞘の裏だ。」
声は確かに剣が納められている鞘から聞こえた。
鞘の裏を見ると、無線機のような小型の機械が付けられていた。
「生徒…会長…俺、どうすれば…」
「お前の信じる道を進め」は?
「と言うかっこいい言葉は言えないから心して聞け!」
「は…はぁ…」
こんなときに冗談か…
「あの鬼は…何かに取り付かれている。それも、強力な何かに…」
「な…何かって?」
「それはわからない…怨霊なのかそれとも…」
「うぎゅうぎゃがばぎばがががががががががががが」鬼の声が大きくひどい声に変わっていく。
「会長…どうすれば?」
「うーん…私の能力でなんとかしよう。」
「能力?」
「私は仮にも神だ…能力ぐらいある。そうだな…私の声に続いて呪文を唱えてくれ。」
「呪文…ですか…」
「なーに簡単だ。そんなに長くない。ただし、私の声の届く範囲でなければ意味がない。大体…距離10センチ。」
は?冗談?
「嘘だ。」
やっぱり…
「本当は?」
「ここからでも届く。今から始めるぞ。もう冗談は抜きだ。」
いや…冗談を始めたのは生徒会長じゃ…
「いきなりいくぞ。」
すぅーと生徒会長の呼吸が聞こえる。
「我、聖域を護りし者。我命ずる、聖域を犯せし者よ我の命ずるままに…解き放て…」
会長の声が聞こえるとなにやら涼しげなオーラが辺りに立ち込めた。
よし…俺も…
「我、聖域を護りし者。我命ずる、聖域を犯せし者よ我の命ずるままに…解き放て…」
涼しげなオーラは数メートル離れた鬼に届いたように見えた。
「うぐうぐギギギ…う、ううっ…あっあああ…」
オーラが鬼を包み込む。
すると、鬼はだんだん元の一年の姿に戻り出した。
「あっあああ…」
声と共に一年は、仰向けで倒れた。
「おおっ…元に戻った…」これで今回の件は終わり…「安心するのはまだ早い!取り付いていたのが出て来るぞ」
えっ…
俺は急いで一年の方を見る。
一年の右目の赤い筋が塊となって…飛び出した!
「あれが、男子生徒をおかしくさせていた者だ。」
塊は中に上がり俺を見下すように見ている。
俺は塊に近づく。
突然、塊は話し出した。
「よくも…邪魔したな…許さんぞ!!」
すると、塊は急に膨らみ弾けた。
中から、真っ赤に染まった悪魔のような鬼のような不気味な生命体が現れた。
「お前は…」
「人間…許さんぞ!!」
シュ
怪物(不気味な生命体)はそう話すと姿が無くなった。消えた!
「どこを見ている?」
後ろから怪物の声が…
俺が振り向く前に怪物は俺の左腰を殴った。
メリメリピシ…
「ぐっぐは…」
また血を吐いた。
骨が…
俺は腰を抑え呻いた。
「人間…殺す前に訊きたい事がある…あの呪文は誰からの教えだ?」
教えだと…
「言え!言わなければ殺す!」
怪物は俺に拳を振りかざす。
「私だ!」
怪物が俺を殴ろうとする直前に声がかかった。
「か…会長…」
無線から声を出していたはずの生徒会長が俺の目の前に…
「お前か…お前があの呪文…を………お前、智天使か?」
怪物は会長を睨み付けていたがだんだん用心深く顔を見つめだした。
「智天使?私は智天使ではない。…私は神だ!!」
驚いたかと言わんばかりのドヤ顔。
「何を言っている、智天使。智天使とはお前の肩書き…神の肩書きではないか。」
「何?」
「そんな事も忘れたか…人型になると記憶も鈍るらしいな…」
「何だと!?」
「まぁ、そんな事はどうでもいい。智天使…お前は俺を裏切った。その代償は貴様の命で償ってもらうぞ」「裏切るだと!!」
「まさか、俺まで忘れたのか!?情けないな…俺はバーサーク。思い出したか?」「思い出すわけないだろうが!!」
「ふん…死ね!」
次の瞬間、バーサークは消え一瞬にして会長の目の前に行った。
「くらえ…『バーサークイグニション!!』」
右拳を掲げると右拳に灼熱の炎が宿った。
「消えろ、裏切り者。」
拳を思い切り振りかざした。
「な…やめろ〜!」
俺は立ち上がりバーサークに向かって走る。
俺はバーサークに突進した。
「フ…」
バーサークは読んでいたように振りかざすのを止め、俺を避けた。
「邪魔をするならお前から殺す!『バーサークイグニション!!』」
バーサークは再び右拳に灼熱の炎を宿した。
「くらえ!」
右拳が当たる直前俺は思った。
俺…死ぬのか…こんな所で…まだ、前世の記憶の事聞いてないのにな…くそ、俺はまだ死にたくねぇ!死ぬ訳にはいかねぇんだ!!…何だ…体が熱い…
右拳は俺の腹に向かって…パシッ
拳が止まった。
「何?」
俺は咄嗟にバーサークの拳を止めていた。
熱い…熱い…当たり前か…灼熱の炎を触っているのだからな…いや、違う。この体がよじれる熱さは…あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「何をしている…離せ!人間!!」
拳を動かして捕まれた拳を外そうとする。
「人間?ハハハッ何を言ってるんだ。俺は神だ。」
「何をほざいている。お前は人間だ…」
「それはさっきまでの話しだ。今の俺は神だ。」
「意味のわからん事をほざくな!」
「神の力を見せてやろう。」
「何だと〜?」
拳を放してやるとすぐに二歩下がって距離をとるバーサーク。
「嘗めてくれるな…俺をこけにした事後悔させてやる。」
バーサークは手を伸ばし、俺に向けて拳を振った。
「遅い…『神刺し』」
俺はバーサークの拳が当たる前にバーサークのみぞうちを右拳で打った。
「ぐぼっ…」
今度はバーサークが血を吐き半歩後退した。
「な…何をした!」
「神速でパンチしただけだ…神だけに…」
「何!!ふざけるなこれで終わりにしてやる…」
バーサークは後ろに下がって距離をとり、助走をつけて拳を構えた。
「『バーサークインパクト』」
「だから…遅いって…」
バーサークがインパクトを決める前に心臓目掛けて神速でパンチした。
「『神刺し』」
「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」バーサークの心臓に穴が空いた…
心臓に穴が空き体が崩壊を始める…
「まさか、俺が人間ごときに…」
「だから、人間じゃない。神だ。」
「元が人間なのに神に成れるわけ…輪廻天象でもしたというのか。確かさっき神刺しとか言う技を使っていたな…あれは確か…最強の神…ライゼアルが使っていた技……………ぐ…ぐはっ…限界がきたようだ…俺も輪廻天象した…か……っ…」
声がだんだん薄れ体も透明になってやがてバーサークは消えた…
「輪廻天象だと…ううっぐはっ…」
俺は血を吐きその場に倒れた。
朦朧とする意識の中で会長の声が聞こえた気がした……