第1話―2
「ハロ〜」
目の前に現れた人は、背中にコウモリのような黒い翼を生やす、のほほんとした女の人だった。
「おおっ、悪魔!?」
暁は驚きの声を上げる。
言い忘れたが鬼も悪魔も神も皆、人型をしている。
「いや〜君たちもう始業式始まってるよ〜」
その女の人は、マイペースながらすごい事をさらっと言った。
「えっ」
「えっ」
「えっ」
三人の声が揃う。
「始業式が始まってるってまだ他にも歩いている人いますよ。」
そう、まだ周りには歩いている新入生が沢山居るのだ。
「ああ〜そうだよ〜高等部は、中等部みたいに真面目に始業式!はやらないよ〜簡単に生徒会長と挨拶するだけなんだよ〜」
「へ?そうなんだ〜教えてくれてありがとう。」
萌香は、先輩に対してタメ口だった。
先輩なんだからしっかり敬語使えよな。よし、ここはひとつ俺がビシッと注意してやる。
「萌香、先輩なんだから…」
「とりあえず行こうぜ。大抵は体育館に居るだろ。さっさと行って済まそうぜ。なぁ、狂夜、萌香。」
「あ…暁…う、うん…行こう…」
「そうね、早く見てみたいもんね♪」
暁の言葉が入り俺の注意が終わった…
はぁ、何でこうなるんだろう。
「じゃあ体育館まで案内するよ〜」
のほほんとした先輩は、翼を使い飛びながら移動する。
俺達は先輩について歩いて行く。
「着いたよ〜」
歩いて1分もなかった。校門入って右にある建物だった。
ん?ここって、中等部の時に使ってた…っていうか翼使った意味あるの!?
「入り口入るとすぐわかるよ〜私は他の生徒を誘導しなきゃいけないから〜」
先輩は「じゃね♪」と手を振って飛んで行った。
「すぐわかる…か」
それだけ他の人と違うって事か。
俺達は、体育館に入った。体育館は大きくて広く日差しのよく当たる所だった。入るとすぐに女の人の姿が見えた。というより、誰も居ない体育館の中央に一人いるだけだった。
俺達は、その生徒会長らしき人の所に足を運んだ。
「あなたが生徒会長ですか?」
俺がとりあえず尋ねてみた。
「そうだよ。私はイカロス学園高等部生徒会長、霧崎ミストだ!」
ミスト…変わった名だな〜ん?よく見ると生徒会長の背中には小さく畳んであるが、龍が持つような赤い翼が生えていた。
とりあえず、自己紹介をした方がいいな。
「俺は…」
「私は、服部萌香です。よろしくお願いします。」
あ〜またとばされた…
あれ?萌香、今、敬語使ったよな。さっきの先輩の時とは大違いだ!やっぱり、生徒会長だけあって魅力的なのか…まぁ、俺や暁でもそうなんだからそうだよな。
「よろしく。」
生徒会長は萌香に手を差し出した。
「えっと…」
「シーナに言われなかったのか?生徒会長との挨拶=握手なんだと言うことを…」
「シーナ?」
萌香は知らない名なのか首を傾げる。
「君たちを案内した奴のはずだが」
「えっ、シーナって言うんですか…生徒会長に言われて初めて知りました。」
「あいつ…名乗るを忘れるなってあれほど言ったのに…」
生徒会長の声は小さくてよく聞き取れなかった。
「何か言いました?」
「いや…それではよろしく萌香。」
「こちらこそ。」
二人は握手する。
「次は俺な。俺は、日野暁よろしく。」
「暁か…よろしく。」
暁も握手する。
二人共、軽く済ませていた。俺も軽く言うか。
「最後は俺ですね。俺は、伊神狂夜です。よろしく。」
俺も生徒会長と握手を交わした…
(こいつは…!)
「じゃ、そろそろ教室行きます。」
俺達が体育館入り口入って左にある渡り廊下の方に行こうとすると生徒会長に呼び止められた。
「ちょっと待て!」
「な、何ですか?」
咄嗟に俺が応える。
「狂夜…君は残れ!それ以外の萌香と暁は行っていいぞ」
えっ…俺だけ?
「早く来い!!」
「はっはい。」
俺は生徒会長に連れられ、体育館を出る。
「あ…行っちゃった…」
「俺達は教室に行こうぜ。大丈夫、授業が始まるまでにはくるさ。」
「そうだね…」
「じゃ行くぞ。」
暁は先に歩いて行った…
萌香は狂夜が行った方を見つめて誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。
「狂夜…」
ここは、生徒会役員室。
連れて来られた狂夜は、そこで辺りを見渡していた。部屋にある棚の上には、刀や銃などが置いてあった…「武器に興味があるのか?」
「何で俺だけ呼んだんですか。」
俺は、生徒会長の質問を無視して真剣な顔で尋ねた。「フッ…そんなに慌てるな。今、説明しよう。」
生徒会長は、息を整えてから話始めた。
「狂夜…お前は、最近よく夢を見るか?」
「夢ですか…確かに見ます。暗闇の中で縛られた男の神を数人の…神が殺す!!そういう夢です…」
俺が哀しそうに話すと生徒会長は腕を組み呟いた。
「やはり…」
「えっ…」
やはりってどういう事だ?「それは、前世の記憶だ…」
「前世?」
「そうだ…神が神を殺す時は大抵は重罪を犯した時だ…」
「そういえば、人をかばったって言ってました…」
「人を…重罪だな…」
「そんなに非道い事ですか!神が人を助けるって…」「かなりの重罪だ…普通、神は神同士でしか助け合わない。神は、それ以外の種族とは馴れ合いをしない。」
「何故!!」
「何故か?知らないな…私が、昔の神の事など知るわけがない。」
「じゃあ何でそこまで知ってるんですか!」
「それは…」
生徒会長は再び息を整えた。
「それは、私が『神』だからだ…」