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乱入者 将棋部部長一条玲奈

昼休みの教室。

机を挟んでギャルたちが盛り上がっている。

中心には銀香がいた。

「そのスタンプは古くね?」

「は?逆にエモいし!」

銀香も笑っている。

でもどこか上の空だ。

スマホの通知が光る。

返信しなきゃと思いながら、頭の中では別の盤面が浮かぶ。

――あの局面、銀引くより攻め継ぐべきだったかも。

そのとき。

ガラッ。

扉が開く。

視線が一斉に集まる。

背の高い女子生徒が、ズカズカと周りを少しも気にせず教室へ入ってきた。

一斉に視線が集まった。

艶のある黒髪ロング。

姿勢がまっすぐで、歩くだけで空気が締まる。

三年生。

将棋部部長――一条 玲奈。

校内でも知られた存在だ。

成績優秀。将来は日本一の国立大学へ進学すると言われている。

その一条が、まっすぐ銀香のほうへ歩いてくる。

ギャルたちの輪の中に、遠慮なく入った。

「あなたが銀香さん?」

声は落ち着いているが、距離感が妙に近い。

「…はい…」

銀香が警戒する。

「将棋部部長。一条玲奈です。急にごめんね〜」

にこっと笑う。

意外とフランクだ。

「ちょっと話せる?」

ギャルたちがざわつく。

「はっ?なに、突然来て!邪魔すんな!」

歩美が一条に突っかかる。

「将棋部って、あの将棋?」

「え、渋くない?ウケる〜(笑)」

一斉に笑いが起きる。

一条は気にしない。

「高坂先生から聞いたよ。あなた、筋がいいって。」

心臓が跳ねる。

(なに?なんで?今?)

銀香の恥ずかしいという気持ちが頂点になった。

突然の乱入者に今まで自分が積み上げてきたもの、理想の自分が崩されようとしていた。

防衛本能だ。

こいつは敵だ。


「は?意味わかんないし。ウチ、将棋とかやってないし!」

とっさに大きな声で否定する銀香。

ギャル友たちが爆笑する。

「銀香が将棋!?ギャップやば!」

一条は小さく首を傾げる。

「否定しなくていいのに。別に恥ずかしいことじゃない。」

その言葉が、逆に刺さる。

一条は続ける。

「うちの部、強いよ。二年にエースもいるし。環境はかなり整ってる。」

さらっと言うが、自信がある。

「あなたなら伸びる。正直、もったいない。」

周囲の視線がどんどん集まる。

銀香の耳が熱くなる。

「だから違うって言ってるじゃん!」

「違わないでしょ。」

フランクだった口調が、ほんの少しだけ鋭くなる。

「才能があるのに逃げるのは、もったいないよ。」

その“逃げる”という言葉。

銀香の中で何かが切れた。

「うるさい!あんたには関係ない!」

銀香の大きな声なんてクラスの誰もが聞いたことが無かった。もちろん歩美も。

教室が静まり返る。

銀香は立ち上がる。

「アンタはなに?いきなり来て!なにえらそうに!」

声が震えている。 

目が潤んでいる。

「ウチがどんな気持ちでいるか知らないくせに!」

歩美が慌てる。

「どうした銀香、落ち着きなよ。」

一条は一瞬だけ目を細める。

表情が変わる。

冷たいほどに静かな目。

「私は事実を言っただけ。逃げてるよ」

その一言が、さらに火に油を注ぐ。

「勝手に決めんな!」

銀香は叫ぶ。

「ウチのこと、簡単に決めつけんなよ!」

そのまま教室を飛び出す。

廊下に響く足音。

「ちょ!銀香!」

歩美が追いかける。

教室に残された静寂。

一条は少しだけ考え込む。

「……私、なにかまずかったかな。」

さっきまでの冷たい表情が消え、少し困った顔になる。

ギャル友の一人が肩をすくめる。

「さあー。なんか急にキレたよね。」

一条は腕を組む。

(逃げてるわけじゃない。あれは――怖がってる。)

直感だけは働く。

けれど理由はまだわからない。

「……まあ、いいや。」

小さく息を吐く。

「また来るね〜お邪魔しました〜(笑)」

さらっとそういうと一条はギャル友やクラスにいた生徒に手を振りながら微笑みながら教室を出ていく。

残されたギャルたちは顔を見合わせる。

「なにあの人。圧つよ〜」


銀香のなにかが壊れた。




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