23. ガスパール — 閉ざされた席に立つ初の女ボス
「ボス、車列の準備ができました。」
ロッコはロザリアの部屋に入らず、扉の外からそう告げると、そのまま下がった。
今日はロザリアにとって、とても重要で歴史的な日だった。
なぜなら今日、“クローズド・テーブル”が開かれる。ロザリアはそこに出席する初めての女性となるのだ。
出発前、彼女は鏡の前で髪と服装の最後の整えをしていた。
身に着けた白いシャツ。肩はわずかにゆとりがあり、肘のあたりまできっちり二度折り返された袖。その姿はまるで、そのシャツがルカ・バルディーニのものであると主張しているかのようだった。
ハイウエストの淡いベージュのパンツ。ウエストに締めた細いブラウンのベルトは、ドン・バルディーニとシニョーラ・バルディーニの違いを示す、一本の境界線のようにも見えた。
長い裾の先からは、ベージュのポインテッドトゥのヒールがわずかにのぞいている。
ロザリアがいちばん気にしていたのは髪だった。きちんとまとめられたポニーテール。
その髪がほどかれるのは、ただルカ・バルディーニの前だけだった。
鏡に顔を近づけ、最後に目の下の隈を確認する。
あえて化粧はしていない。
その隈は、ルカが不在の間、子どもたちを守るために夜を徹してきた証だった。
ルカ・バルディーニの築いたすべてを守るため、丘の上の家で何時間も働き続けた証でもある。
ロザリアの目の下の隈は、彼女のアイデンティティそのものだった。
だからこそ、化粧で隠すことはしない。
乾いた唇にわずかな色を与えているのは、下唇に残る小さなひび割れからにじんだ、かすかな血の赤みだけ。
身に着けている装飾は、結婚指輪と、腰に差した赤いルビーの短剣以外には何もない。
大きな赤いルビーがはめ込まれた結婚指輪は、たとえルカが隣にいなくとも、彼への揺るがぬ忠誠の証。
そして腰の短剣の赤いルビーは、バルディーニ家に害をなす者に残されるのは、美しい持ち物だけだという暗示だった。
「ガスパル、なぜまだ準備していないの?」
ロザリアは銃を腰に差しながら声をかけた。
「ロッコの代わりに、俺が行くんですか?」
ガスパルは驚いた声で尋ねた。
「無駄口はいいから。すぐスーツに着替えて。」
ロザリアは鏡から目を離さず、振り向きもせずに言った。
イタリアには、バルディーニ家のほかにさらに八つの有力な一族がいる。
九番目の一族、つまりバルディーニ家が、そのすべてを統べていた。
“クローズド・テーブル”とは、その九つの一族による会合だ。
出席する当主は、常に最も信頼する護衛を一人だけ伴う。それはたいてい決まった人物で、変わることはない。
誰もが知っていた。ロッコはルカ・バルディーニの右腕だと。
だがルカは、クローズド・テーブルに護衛ではなく、ロッコを連れて行っていた。
今日はすべてが変わる。
何かが大きく動く日だった。
「準備できました。」
ガスパルはロザリアの部屋に入った。
自分も同行すると告げられたとき、私は驚きと同時に喜びを感じていた。証拠を集め、新たな情報を得る絶好の機会だったからだ。
ロザリアはすでに準備万端だった。
私は彼女を待たせることなく、白いシャツに黒のスーツをまとい、すぐに支度を整えた。
外ではロッコが待っている。
最強のボスたちが集う会合に出席する。
だが今、私を不安にさせているのは、その場よりもロッコの視線だった。
ロッコはルカ・バルディーニの右腕。ルカ不在でも自分のやり方で物事を片づける男だ。多少強引でも、ルカは決して彼を抑えつけず、判断を疑うこともなかった。
その独断的な気質は、今日の私にとって好都合とは言えない。
ロザリアは大きな黒いサングラスをかけ、扉を出た。
私はそのすぐ後ろを歩く。
前庭には三台の車からなる車列が待機していた。
各車のそばには二人ずつ護衛が立っている。
車はすべて丘の上の家の警備によって徹底的に点検されていた。
三台とも同じ型の、黒い四ドアの低い車体。
磨き上げられたボディが光を反射している。
ロッコは黒の洗練されたスーツ姿で、中央の車のボンネットにもたれ、余裕の態度で待っていた。
その自信に満ちた立ち姿だけで、彼がルカの右腕であることがわかる。
「ロッコ、あなたは来ないわ。」
ロザリアは彼の横を通り過ぎながら、顔も向けずに言った。
そのまま車へと向かう。護衛の一人がすぐに後部座席のドアを開けた。
「どういう意味だ?護衛なしで行くつもりか!」
ロッコは鋭い声を上げる。
ロザリアは窓を下ろし、静かだが揺るがぬ口調で返した。
「その通り。でも、あなたは私の護衛じゃない。忘れないで。」
ロッコの目に怒りが宿る。
私は彼の真正面を通り、車に乗り込もうとした。
「気をつけろ。あそこは護衛ごっこをする場所じゃない。ロザリアに何かあれば、俺が直々にお前を殺す。」
ロッコはそう言いながら、ガスパルの目を鋭く射抜いた。そして肩でぶつかるようにして横を通り過ぎ、そのまま立ち去った。




