20. ガスパール — パスティーナの前に潜む静かな危険
最近、小さなバルディーニ一味がやけに俺につきまとっていた。
エリオ、ドメニコ、そしてジョヴァンニは、ここ数日風邪で寝込んでいる。
ロザリアは赤ん坊にうつらないよう、部屋を分けていた。
小さな連中は俺の部屋の隣で過ごしている。
いちばんの問題児はジョヴァンニだ。父親を恋しがっているせいか、いつも以上に手がかかる。
夜勤のあと、眠れるのはせいぜい数時間。なのにジョヴァンニは待ち伏せでもしているかのように、俺が部屋に入るとすぐ後を追ってくる。寝る前になると質問攻めだ。答えるのに疲れると、目を閉じて寝たふりをする。するとしばらく俺の顔をじっと見つめ、本当に眠ったのか確かめようとする。そして最後には諦めて、俺に抱きついたまま眠りに落ちる。
あいつが俺の顔に向かって何度もくしゃみをしたせいで、とうとう風邪は俺にも移った。
子どもたちの看病のため、ロザリアはここ数日ずっと外出していない。
今日はみんな少し良くなっていた。昼どきだ。家の周囲を確認し、ついでに空気を吸おうと庭を歩いた。中に戻ると、漂ってきた料理の匂いに思わず口元が緩む。
「パスティーナのスープか?」
ガスパルはかすかな笑みを浮かべ、キッチンに入った。
ロザリアは、まるで典型的なイタリアの母親のように、子どもたちのための“薬のスープ”を作っていた。
「ええ。もうすぐできるわ……好き?」
味を確かめながらロザリアが聞く。
「いや、あまり。」
ガスパルは椅子を引いて座った。
子どもの頃、病気になると母はストーブの前に立ち、あっという間にこのスープを作った。熱があると食欲はなくなる。少し腹が減る頃には、決まって旨いものが食べたくなるのに、食べさせてもらえない。治るにはまずこのスープを飲まなければならなかったからだ。水の中に浮かぶ小さな星形パスタの間に混じった鶏肉だけが、ささやかな慰めだった。
子どもたちがキッチンにいるのに、今日は騒がしくない。
エリオとドメニコはスープを待ちながら、行儀よく絵を描いている。
「ガスパル、誰かが君を呼んでたよ……キッチンにいるって言ったけど、聞こえなかったみたい!」
ジョヴァンニが黒い何かを手に、息を切らして飛び込んできた。
静かな理由は、さっきまでジョヴァンニが自分の部屋にいたからだ。
彼は何か叫びながら俺のほうへ駆けてきて、テーブルを回り込み、俺の前に立つ。
「はい。」
両手で抱えた黒い物を差し出した。
それが盗聴器だと分かった瞬間、考えるより先に俺はそれをひったくった。同時にロザリアへ目をやる。見られたか確かめようと、視線を外さぬまま素早く電源を切り、ポケットに押し込んだ。
ロザリアは棚から皿を取り出していた。見ていない。
ジョヴァンニが見つけたのだ。本当は不思議でもない。ベッド脇の引き出しに隠していたからだ。
中身は分からなかったらしい。誤ってスイッチを押し、音が出たのを電話だと思ったのだ。
「怒った?……ごめんね、ガスパル。」
ジョヴァンニが見上げ、悲しそうな目を向ける。
ロザリアに気づかれたか考えているうちに、どれだけ強く取り上げたか気づかなかった。
「怒ってない。おいで。」
ガスパルは軽く笑い、両手でそっと抱き上げ、椅子に座らせた。
怒ってはいない。だがもっと用心しなければならない。この子は母親よりも厄介だ。
(馬鹿か、ガスパル……家に子どもが溢れてるのに、あんな物をどうして放っておく?)
ガスパルは不安げにロザリアを見つめた。
ロザリアはスープに集中している。早く仕上げて子どもたちに食べさせたいのだ。
「ごはんよ。」
トレーの器を一つずつ子どもたちの前に置いていく。
トレーには四つの椀があった。四つ目は自分の分だと思ったが、ロザリアは最後の一つを取り、俺の前に置いた。
「さあ、ガスパル……まずあなたから。子どもたちのお手本になって。」
腕を胸の前で組み、俺たちを見下ろす。
子どもたちもこのスープは好きではない。だが気持ちは痛いほど分かる。
「まったく……俺はこのパスティーナとどんな因縁があるんだ?」
ガスパルは小さくため息をつき、何も言わずにスプーンを手に取った。ロザリアの目をまっすぐ見つめながら、スープを口に運んだ。




