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11. ガスパール — ルカ・バルディーニのための静かな裏切り

今夜、バルディーニ家の騒がしい屋敷は静まり返っていた。

その静けさは、小さなバルディーニたちが乳母と庭に出ているせいではなかった。


「ロッコ、ローマ浴場のカジノは閉鎖すべきよ!」— ロザリアは立ったまま言った。


「冗談だろ?」— ロッコは手にしていたグラスを乱暴にテーブルへ叩きつけ、立ち上がった。


ロッコがロザリアと話している間、執務室の両開きの扉の片方は開いたままだった。

ロザリアは腕を胸の前で組み、無意識のうちに長い黒いドレスの生地を握りしめている。


「あそこは不道徳の巣窟に成り下がっている。バルディーニ家はああいう場所を経営しないわ。」

ロザリアの声は一定で、揺るがぬ決意がこもっていた。


ロッコは苛立ちを隠さず立ち上がったが、ロザリアはその反応に驚かなかった。


「ボスが“アルスト”にたった一か月滞在するだけで、俺たちにどれだけの負担がかかるか分かっているのか?」

ロッコの怒りは露わだった。


「一億ドル。」

ロザリアは落ち着いた表情も声の調子も崩さずに答えた。


「そうだ。だがそれは洗浄済みの、クリーンな金だ。ローマ浴場を閉めたら、毎月一億ドルを洗浄するのがどれほど困難になるか考えたことはあるか? “アルスト”はクリーンな資金しか受け取らない。しかも支払いは現金じゃない。奴らの専用銀行へ正式に振り込まれるんだ。」

ロッコはロザリアの前に立ちはだかった。


「ロッコ、行ってローマ浴場を閉鎖して。」

ロザリアの声はさらに鋭くなった。


「かしこまりました、“ボス”。」

ロッコは含みのある返事を残し、部屋を出ていった。


ロッコがルカ バルディーニの右腕である理由は、まさにそこにあった。

聡明で、現実的であること。ロッコはルカと共に働く中で、たとえルカの知らないところで下した判断であっても、その理性と計算に基づく決断が覆ることはなかった。だが、その原則はロザリアとの関係には当てはまらない。


ロザリアはルカと同じ倫理観を共有している。だが問題を解決する方法は、二人でまったく異なっていた。


ロザリアはローマ浴場のカジノを閉鎖することが正しい決断だと信じている。

だが残念ながら、この議論において正しいのはロッコだった。


ロッコの苛立った返事を聞くために、わざわざ扉の裏に隠れる必要はなかった。

彼が部屋を出る前に、私はすでに自室へ戻り、鍵をかけていた。


「さあロッコ、続きを聞かせてもらおうか。」

ガスパールは引き出しから小さな黒い盗聴器を取り出し、イヤホンを耳に差し込んだ。


マッテオがエンジンをかける。続いてドアが荒々しく閉まる音がした。


「本当に閉めるのか?」

マッテオの声が響く。


「もちろん違う。」

ロッコは迷いなく答えた。


「ロザリアには何て言う?」

マッテオはただ純粋な疑問として尋ねる。


「ロザリアは道徳の観点から見ている。それ自体は悪くない。だが今、大ボスが生き延びているのは道徳のおかげじゃない。金のおかげだ。ロザリアにはローマ浴場は閉鎖したと伝え、俺たちは仕事を続ける。今考えるべきは道徳じゃない。ルカ バルディーニをこの状況から救い出すことだ。」

ロッコははっきりとした口調で、自らの決断を告げた。



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