プロローグ
「おはよう、ガスパル。喉が渇いているだろう。」
ルカは手にしていたグラスをガスパルに差し出した。
自分の死神がルカ・バルディーニになることは分かっていた。
ただ、こんなにも早く訪れるとは思っていなかった。
昨夜のことは、ほとんど覚えていない。
だが、かろうじて思い出せる断片だけで、なぜ今自分がルカ・バルディーニと同じ部屋にいるのかを理解するには十分だった。
「どっちの手でやった? 右か、それとも左か?」
ルカはソファから立ち上がり、アイロンをコンセントに差し込んだ。
「右です。」
ガスパルはゆっくりとベッドから起き上がった。
「“やっていない”と否定しないのか?」
ルカはガスパルを見つめた。
「否定したら、本当にやっていないと信じますか?」
ガスパルは、これから起こることを覚悟しながら答えた。
「その通りだ。」
ルカはガスパルに近づき、目の前に立った。
「大勢の中から、なぜ特別にお前をロザリアの護衛に選んだか分かるか?」
ルカはガスパルの目を真っ直ぐに見つめていた。
「分かりません。」
ガスパルはためらいがちに答えた。
「お前は他の連中とは違う。
金のためでも、“俺はルカ・バルディーニの部下だ”と誇示するためでもなく、この仕事をしている。
お前は賢い、ガスパルだ。」
ルカはテーブルの上に置かれたアイロンへと歩み寄った。
「俺を殺すつもりですか?」
ガスパルはその場から動かなかった。
「言う通りにすれば、殺さない。」
ルカはアイロンを手に取った。
「近づけ。
アイロンを持って、順番に両腕に押し当てろ。」
ルカはコンセントを抜かないまま、アイロンをガスパルに差し出した。




