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打ち切り作  作者: 新藤陽人
第一章 二人の出会い編
8/13

ティルスVSクラリス、魔術師なりの剣術

噛ませのつもりで出したクラリスが割りと気に入ってきた件について

二人の決闘は家から少し離れた平原で行われる事になった

そしてルールも既に決まり今は戦いの前の準備時間


「剣を主体にして戦うって条件、受け入れてよかったの?」

「問題ない、魔術とは放出系だけではないし彼女は剣士の様だからね。得意な土俵で勝負しないと意味が無いじゃないか」

「何となくそんな気はしてたけどやっぱりクラリスさんの、この時代の騎士の実力が知りたかったってわけ」

「否定はしないよ、けれどそれ以上に彼女からの報酬が魅力的だった」

「はぁ、一体何を吹き込まれたんだか・・・」


今から行われる決闘の勝敗は主に二つの方法で決められる

一つ目はどちらかの投了宣言

二つ目は審判(フェイゼル)が戦闘の続行が不可能と判断した場合


そして互いに致命の一撃となる攻撃は禁止、そしてこれはティルスの提案で今回ティルスは火球などの放出系の魔術の使用を禁止

クラリスは情けを掛けられたと思い渋い顔をしたが彼女の方に遠距離攻撃は無いので主かつ審判のフェイゼルが承諾した事で決まった


「先に言っておくけどあの人の年齢や性別で油断しないこと、若くして皇女の専属騎士になった才能は伊達じゃない」

「心配してくれてありがとう、そして良い感じに私が燃える情報もくれて嬉しいよ」

「別に燃えて欲しかったわけじゃ無いんだけど・・・死んだらダメよ?私はまだ死者蘇生の魔法なんて使えないんだから」

「・・・そうだね、君の実験台になるのはまだまだ先だ」


そんな気安いやり取りをしつつティルスは既に準備万端と言った様子で佇むクラリスに向き合う


「剣はどうした、今回は剣を使った勝負だ」

「ここにあるよ・・・〈聖剣創造〉」


そう呟くのと同時に少年の眼前に様々な素材が現れ光を放ったかと思えば次にその場にあったのは一振りの剣

光を放つその剣の異常性はこの場にいる全員が感じたことだろう、眼前かつ剣の扱いに天賦の才を持つクラリスであれば猶更だ


「神々しさすら感じるその剣、とても一瞬で作った物とは思えん。それも貴様の魔術か」

「その通り、〈錬金術〉も私の研究テーマの一つだった。今の時代でもお伽噺にくらいは出てくるんじゃないかい?」

「お伽噺は所詮お伽噺だ、現実で見る事など決してあり得ない・・・そう、先ほどまで思っていた」


ティルスが聖剣を何振りかして感覚を確かめる間雑談を繰り広げる

相手の調整を待つことなどせず挑みかかって来てもいいだろうに、と思いながらそうしてこなかったクラリスにかつての好敵手を思い起こすティルス


会話が一区切りついた所で審判を務めるフェイゼルが二人の間に立ち言葉を紡ぐ


「二人とも、準備はいい?」

「もちろん、クラリスさんには感謝するよ」

「貴様から感謝された所で嬉しくも無い。殿下、我が剣は常に貴方様の為に振るいます」

「そう、期待してるわクラリス・・・ティルスも、ね」


そんな意味ありげな視線が少女から少年に飛びクラリスが眉を顰める

それを知ってか知らずか不明だが遂にその言葉は放たれる


「それじゃあタルミア皇国が第三皇女フェイゼル=ディア=タルミアの名の元に、この決闘の開始を宣言します‼」

「行くぞ、ティルス=ノーグ‼」


宣言とほぼ同時に恐ろしいスピードで少年に突撃してくるクラリス

背負っていた盾を装備した状態でその速度が出せるのは異常という他ない


「なるほど、その靴に何か仕掛けがるみたいだね」

「たった一撃で終わると思うな‼」

「(フィアナの言葉通り油断して挑めば足元を掬われたかもしれない、が)この時代の剣術を私にもっと見せてくれ」

「その舐めた態度も殿下に対する口調もこの戦いで矯正してやる‼」


ティルスはクラリスを馬鹿にする感情は欠片も無い

だがこの少女の実力をより引き出すにはそれが効果的と判断し思いっきり煽った・・・紛れもない本心でもあるのだが


「どうした、先ほどから一向に攻めてこないが私の剣を読んでいるのか?」

「初めて戦う相手には基本的にこうしているんだ、だが切り結ぶことが望みなら答えよう」


クラリスの剣戟を躱すか流していたティルスが動きを変えて返しの一撃を入れる

それを読んでクラリスも守りの姿勢に入ったのだがその一撃は彼女の想像をはるかに超える物であった


「なっ⁉ただの一撃、しかも返しの攻撃でここまでの重さだと」


防ぐこと自体には成功したがその重い攻撃でティルスとクラリスの間に距離ができる


「放出系は使わないがそれ以外の魔術は使うと言っただろう?〈身体強化〉と〈反射速度向上〉の魔術を使わせて貰った」

「好きにしろ、その上で私が勝つ」

「その意気だ、そうでなければ研究のし甲斐が無い‼」

「何処までも舐めた男だ。貴様を喜ばせるようで癪だが見せてやろう、殿下の外敵を排除する為に鍛え上げた技を・・・【皇国流剣術 三の型 亡者一閃】」


その言葉と共にクラリスの姿は消え、凄まじい風圧が解き放たれた

そして当のクラリスはティルスの背後に佇んでいた


「貴様、今の一瞬で何をした?先ほどの一撃は最低でも剣に身を捧げた者でなければ察知する事すら不可能だったはず」

「そうだね、私が何もしていなければあの一撃で負けていたかもしれない。なら〈模倣〉の魔術を使って私がかつて戦った剣士の力を身に纏えば防ぐことが出来る」

「原理は知らんが剣士を馬鹿にしたような術だ、そんな物で私に勝てると思っているのか?」

「思わないよ・・・何故なら私は剣士ではなく魔術師だからね」

「先ほどよりも重い一撃、これも貴様の魔術か」

「その通り、【絶剣奥義 八岐大蛇】」


それは今ティルスが模倣している剣士が使っていた技の一つ

流れる様な一撃を巧みに使い一瞬の隙も無く八連撃を相手に叩きこむ


相手が並みの相手ならそれで終わっていただろうがクラリスは幾つかの攻撃を受けながらも耐えきり反撃の一閃を繰り出す


「ぐっ、確かその術は模倣だと言ったな?言い得て妙だ、貴様が今使った技は本来の使い手と比べて数段劣る、違うか?」

「・・・その通り、よく分かったね」

「当然だ、例え剣士でなくとも戦いに身を置く者であれば気付いただろう。幾ら貴様が魔術に長けていようとその技は模倣した者が編み出した物、それをただ真似ただけでは本来の力は発揮しない」


模倣という魔術に剣士としての誇りを傷つけられたからかクラリスの一撃は攻撃する度に洗練され、進化していく


「(こうも容易く〈模倣〉の弱点を見抜かれるなんて)・・・面白い、本当に面白いよ」

「この状況でそんな事が言えるとは貴様は余程の馬鹿か狂人の様だ」

「否定できないね、そうでなきゃ一万年後の世界まで来たりしないと思わないかい?」

「なるほど、何もかもを捨て未来に一人向かう男・・・常人の尺度で測れる存在では無いな」


一周回って清々しくなったのか、あるいは心のどこかでこの戦いを楽しんでいるのか

事実は分からなかったがこの時クラリスの口元は少しだけ緩んでいた


「それじゃあこちらも攻めさせて貰うよ、〈聖光〉」

「なっ⁉」


それまで僅かな光を放つだけだったティルスの剣からそれまでとは比較にならない眩しさの光が放たれ直視していたクラリスの視界を奪う

その隙を突きそれまでとは違う動きで一撃を叩き込もうとしたティルスであったがギリギリの所でクラリスの盾に防がれてしまう


「今のを防がれるとは思っていなかった」

「私の立場を忘れたか?私はフェイゼル皇女殿下をお守りする専属騎士、視界を奪われた程度で殿下をお守りできなければとうの昔に死んでいる‼」

「道理だ、ならば私も今できる全力を出そう」

「今の今まで手を抜いていたような口ぶり、とても敬意があるとは思えんな」

「そういう質なんだよ、〈魔術付与〉」


少年の握る聖剣が炎を纏う

持ち主の武具に属性魔術を付与する術

並みの武具であれば数分と持たずに自壊するがそれが今回起きる事は絶対にない


「炎の剣、剣士として少しばかり憧れもあるがこうして切り結べる事に感謝しよう」

「へぇ、凄いね。正直一撃で溶けるかと思っていたのに」

「私の剣は特別性だ、その程度で勝ちを確信しない事だ」

「下手な小細工はやめにしよう、〈重力増加〉〈身体強化〉」

「・・・なっ⁉」


一瞬の隙を突いた一撃、切り結んだのは一瞬だけ

使われた魔術によってクラリスは一瞬で吹き飛びそこに生えていた木にぶつかる事で停止する


「先ほどまでの一撃とは、次元が違うようだ」

「同じ魔術でも使われた魔力の量で威力は変化する、今使った〈身体強化〉で消費した魔力は最初の十倍。単なるごり押しだね」

「先ほどまで小細工を弄してきた相手とは思えん攻撃だったな。この一撃で決めるしかないようだ」


立ち上がったクラリスだったがその足取りはおぼつかない上に手も震えている

明らかに脳にダメージを受けた状態だったが舌を噛むことで何とか意識を集中させる


「・・・【皇国流剣術 一ノ型 神速】


その技は言ってしまえばただ早く、攻撃する一瞬に全ての力を注ぎ渾身の一撃を叩き込む

ただそれだけの初歩の技

けれどそれも極めれば必殺の一撃に昇華する


「(私が最も使ってきた信じる技)この一撃をどう受ける、ティルス‼」

「決まっているさ、【竜虎轟雷】」


誰の模倣でもないティルスの技

より正確に言うならばかつてティルスが好敵手(ヴァルガ)と戦う中で編み出した二人の技

使い手の魔力を一点に集中して放つシンプルな攻撃


そうしてぶつかり合う二人だったが無情にも決着は一瞬で決した


「まさかここに来て貴様自身の技が出てくるとは、な・・・」

「彼以外でこの技を使ったのは君が初めてだ。未来の技術だけじゃない、君自身の力に敬意を表する」

「・・・」


返答は無い、既に彼女の意識は途切れている

それをもって審判を務めていたフェイゼルから声が届く


「勝者、ティルス=ノーグ‼」




フェイゼルとフィアナを除けば護衛の二十人にも満たない観客しか居なかったこの一戦

この戦いはティルスとクラリス互いに影響を与えるだけでなく歴史にも関係してくるのだがそれはまだしばらく先の事だ



短くてすいませんm(__)m

自壊は長くしたい()

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