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打ち切り作  作者: 新藤陽人
第一章 二人の出会い編
4/13

ティルスの衝撃、働かざる者食うべからず

短くてすいませんm(__)m


「美味い‼」


フィアナが作った夕食を一口したティルスはその日一番の大声を上げた


「いきなり大声上げないで、おばあちゃんの血圧が上がったら大変じゃない」

「心配してくれてありがとう。でもティルス君の気持ちもよく分かるわ、私もフィアナちゃんのお料理を食べる事が生き甲斐だもの」

「おばあちゃん・・・多趣味よね?色々楽しくやっているのは知ってるんだから」

「一番はフィアナちゃんのお料理よ?」

「もぅ、ってさっきから喋らないけど大丈夫?」

「―――すまない、この感動を決して忘れたくなくて心に刻んでいた」

「大袈裟ね、普通の家庭料理なのに」


メニューは鳥の照り焼き、かぼちゃの煮物、卵スープ、サラダにご飯

少女の言葉通り一般的な家庭で食されているメニューと大差はない

作りての拘りは別として、だが


「そんなことは無い、私の時代からは考えられない料理だよ」

「そうなのね、口に合ったのなら良かった」

「あらあら嬉しそうね、フィアナちゃん」

「別に良いじゃない、おばあちゃん以外に作る事なんて殆ど無かったんだもん」

「ティルス君も遠慮せず沢山食べて、沢山食べられるのは若者の特権みたいなものだから」

「では遠慮なく頂こう、フィアナさんご飯のお替りを貰いたい」

「もう食べたの⁉別に構わないけど明日からは働いて貰うわ、働かざる者食うべからずよ」

「勿論だとも、今まで食事にさして興味は無かったが君の料理が食べられるのならドラゴンでも倒してみせる」

「ドラゴンなんて伝説の生物いる訳ないでしょ・・・一万年前には居たってこと?」

「居たよ、珍しい種族だったがドラゴンは体も魔力も大きいから簡単に見つけられた。肉も血も魔術の素材としては最高級品だったから何度も倒させて貰った」

「何度も倒したって・・・もういいわ、少なくともそんな仕事は無いから安心して」

「彼らの肉は私の時代でも数少ない美味の一つだったから君に料理して欲しかったんだが、残念だけど諦めるよ・・・いや、確か一匹残っていたような」

「そんな凄そうな物で作れるわけないじゃない、あんまり私に無茶ばかり言うと夕食は抜き」

「それだけは勘弁してくれ‼君のご飯が食べられない人生など考えられない‼」

「言ってる事が重い‼それとおばあちゃんはその目を止めて」

「ごめんなさい、フィアナちゃんが同年代の男の子と楽しそうにしている姿を初めてみたから。おばあちゃんの寿命が延びたわ~」


ティルスの冗談の様な本気にツッコミを入れつつダイアナの温かいからかいに顔を赤くして抵抗するフィアナだった

そしてその日の夕食は笑いの絶えない空間であったことは語るまでもないことだろう







翌朝、フィアナは少年にあてがわれた部屋の前までやってきていた


「ティルス、起きてる?」

「起きているよ、もしかしてもう朝かい?」

「もう朝って・・・もしかして貴方」


嫌な予感がした少女が少し緊張しつつ扉を開く

そこには書庫から運び出したであろう大量の本が積み上げられていた、否いくつかの本に関しては浮遊している

そして部屋の奥に灰色の髪の少年を見つける


「聞くまでも無いけど徹夜で読んだの?」

「あぁ、一刻も早くこの時代の知識を得たくてね。もちろん君との約束も覚えているから心配しなくていい」

「全く疲れた様子がないものね・・・はぁ」

「何か悩み事かい?私に出来る事なら何でも協力しよう」

「貴方のせい、って何でも協力してくれるのね?」

「魔術師は約束を破れない、と言っても神ではないから全てとは言えない」

「簡単よ、徹夜は本当に必要な時だけ。絶対にするなとは言わないけど頻繁にはしないと約束して」

「・・・分かった、ここに誓う。私は今後本当に必要な時以外で徹夜はしない」


そう呟くと少年の体が少し輝き、すぐに収まる

不思議に思った少女は聞かずにはいられなかった


「ねぇ、今のも魔術?」

「〈制約〉の魔術だ、誓った内容を順守させる」

「そんな魔術もあるのね、色々と応用できそう」

「実際一万年前、〈冬の時代〉では罪人や奴隷に使う事も多かったらしい。因みに制約を破れば心臓が痛み出して最終的には死ぬ」

「そんな恐ろしいのをサラッと使わないで欲しいわ」

「私の悪癖でね、これくらいしないと止まらないんだ。それより私を呼びに来たって事は朝食かい?朝食なんだね?」

「自分の命より朝ごはんなのね、まぁその通り出来たから呼びに来たのよ」

「それは申し訳ないことをしてしまった、早く食べよう」

「・・・私これからこの男と暮らしていくのよね」


悪人ではないし嫌いな訳では無かったがティルスのペースに振り回されて疲れるフィアナであった





それから朝食を済ませたあとティルスはフィアナに連れられて外の畑にやって来ていた


「まずは畑仕事を手伝って貰うわ、一応聞いておくけど経験は?」

「魔術に必要な植物を育てていたくらいだ、それも一瞬で終わらせていたから殆ど無いようなものだけど」

「そう、じゃあ最初から・・・って一瞬で終わったってどういう意味よ」

「〈成長〉の魔術だよ、作物に魔力を送り込んで成長を促進させるんだ」

「便利ね、興味があるから見せてくれないかしら」

「構わないよ。ただこの魔術は私がその作物の成長過程をイメージできるかが重要になってくる」

「それじゃあ無理ね、ここで育ててる作物は一万年も前からあったりは、」

「本に成長過程の写真が載っていたから小麦とじゃがいも、キュウリにトマトなら出来るよ」

「写真でもいいのね、それじゃあ味を比較したいからトマトでやってみて」

「それじゃあトマトは・・・あれだね、〈成長〉」


少年がそう口にしてその手から作物の成長を促進させる魔力を送り込む

それから程無くしてトマトは実らせ、大きさを増していく


「そういえばずっと気になっていたのだけれど魔法って詠唱とかは必要ないのね、お伽噺なんかでは魔法使いが言っていた気がするけど」

「必要だよ、昨日は説明を省いたけど魔術を実行するために必要な術式が不完全だったり雑な魔術師はそれを補う為にイメージとして補強する」

「つまり名前だけで使える貴方はすごいって事?」

「あの時代では一番だったと思う。同じレベルに辿り着きそうな相手も一人しかいなかったから私はあの時代に見切りをつけてこの時代にやってきた・・・それと魔術と魔法を同一視してはいけない」

「違いがあるのね、少し興味があるわ」

「魔術はさっき話した通り人に存在する魔力を術式を使って行使する。魔法は言ってしまえば魔術の上位互換だね、魔術は結局の人の使う術でしかない。例えば魔力を大量に使ったり完璧な術式を編めば不治の病も切断された四肢でも治すことは出来る・・・けれど死者を蘇らせる事だけは絶対に出来ない」

「そう、死者が蘇らないのは理解できるけどその口ぶりだと魔法なら死者も蘇るの?」

「蘇るよ、一度死んだ者がこの世に戻ってくるのはこの世界の法に反する。そんな法を捻じ曲げて使い手の望む結果を作り出すのが魔法なんだ」

「―――ティルスは使えるの、魔法」

「使えるよ、というか私がこの時代にやってきた方法も魔法なんだから」

「そう、それじゃあ、」

「トマトが食べごろみたいだ、この話はまた今度しよう」

「貴方の魔術講義、それなりに楽しかったわ」

「それは何よりだ。それじゃあまずは一口・・・うん、悪くない味になってる」


魔術によって成長したトマトの味は昨夜のサラダで食したものと比べると少し味が落ちるがそれでも不味いものでは無かった

同じようにトマトを口に運んだフィアナの反応も上々だった


「これなら売りに出しても問題なさそう」

「売るんだね」

「何もかもを自給自足で生きていけるわけじゃ無い、畑仕事を済ませたら街を案内するついでに紹介するつもり」

「それは俄然楽しみになったよ、因みに残りの内容は?」

「水やりと雑草があれば抜いたり、後は周囲に害獣の痕跡が無いかの確認もあるわね」

「分かった、それならすぐに済みそうだ・・・〈探索〉」

「ティルス?」

「雑草は生えていないし付近に害獣やその痕跡も無い、あとは水やりだね」

「もう終わったの?逆に不安になってくるのだけれど」

「心配な気持ちも分かるけど大丈夫、それより次は水やりか・・・〈大地に染みこめ、清浄なる水よ〉」

「今のって詠唱?」

「地面に水分を浸透させる魔術は土と水の複合だからね、この広さの畑に均等に撒くならイメージによる補強も必要かと思って」

「そんなに早く街を見たいの?」

「見たい、この時代の人々が暮らす街なんて興味が尽きないよ」


好奇心旺盛な少年の顔を見ていると少女もまた少しだけ頬が緩む

そして今にもその手を引いて街に飛び出していきそうな姿を見てあることに気付く


「・・・あっ」

「何かほかにやるべき事でも思い出したのかい?」

「そうじゃないの、よくよく考えたら貴方の市民証が無いしそもそも身分を証明する物が一つもないの」

「そうだね、けど身分証を発行してもらう訳にはいかないのかな」

「今の時代はほぼ全ての人間が身分証を持ってるものなの。持っていないのは犯罪者関係の人間くらい、つまりこのまま入ろうとすれば、」

「姿を消して君と共に街に入る手もあるが嫌がりそうだね」

「―――それしかないわね」


ティルスの予想通りフィアナは真面目な性格なので誰かをだます方法に抵抗がある

だがそれで誰かが傷ついたりする訳でなければ折れる度量もある、それが今回だった

そんな会話をしている二人に声がかかる


「フィアナちゃん、心配しなくても大丈夫よ」

「おばあちゃん?心配しなくていいってどういうこと?」

「ティルス君の身分証をすぐに用意する事は出来ないけど街に行くのは分かっていたから昨日これを書いていたの」


そう言ってダイアナがフィアナに手渡したのは一通の手紙

その封にはフィアナも見たことが無い紋章が書かれてあった


「多分だけどこれを門番の人に見せれば通して貰えるはず、正式な市民証はあの子にお願いしてみようと思っているわ」

「あの子って・・・協力してくれるかしら」

「そこは分からないけどあの子なら出来るでしょ?」

「それはそうだけど、もういいわ。おばあちゃん、私たちは行ってくるから」

「いってらっしゃい、今までは一人で不安だったけどティルス君がいるなら安心ね」

「話は終わったのかい?それじゃあ早速行こう‼」

「そんなに焦らなくても町は逃げないわよ。それにそれなりに歩くから準備を、」

「〈転移〉」


ティルスがそう呟くのとほぼ同時にフィアナの視界は畑ではなく見慣れた街道にあった


「一度行った場所なら転移できる、だから移動の事は気にしなくてい、」

「いきなり使わないで‼」


もしも周りに人が居たなら驚きそうな大声でツッコむ少女は既に幸先が不安になっているのだった



おばあちゃんの謎

この章の最後に分かるかも?

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