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革命前夜

「お待ちしておりました。ご案内します」


 サイコルに地図で案内された場所に到着する。

 すると、俺たちの目の前には二階建ての豪邸が待ち構えていた。

 そして門の前には背の小さい黒髪ショートヘアの絵にかいたようなロングスカートメイドが俺たちを待っていた。

そこから、各々の客室まで案内された後、集まれる休憩室のような場所には集まった。


「で、マイケル。お前について聞かせてくれ。お前は一体何者なんだ?」


「そうだな…俺はこういうものだ」


 マイケルは胸ポケットからボロボロの手帳を開き、こちらに見せる。


「CIA……か」


 彼は躊躇うことなく自身の正体を明かした。

 アメリカの中央情報局。

 本物を見るのは初めてだ。


「偽造じゃないぜ。まぁ、証明する手段はないがな」


「それで、貴方はどうやってこの世界に来たんですか?」


「それは、こっちでも分からん。ふとした瞬間、この世界にいた、としか言えねぇな」


 彼はウリエルの問いには答えられないようだ。

 俺たちは机を囲んで、この国の紅茶のような飲料を飲みながら会話している。


「そんでもって俺の能力も『まるで元から持っていたかのように』発現した」


 マイケルはそう言うと右手を前に突き出す。すると、どこからともなく紫色の甲冑が装着される。


「言っておくけど、彼の言葉は嘘じゃないよ~!」


 そこにサイコルがゆっくりと扉を開きながら現れた。


「君たち揃っているね。それでは私から少しいいかな?かなり急ぎのお願いがあるんだ」


 コツコツとハイヒールの音を立てながら、俺の背後で止まり、腕を首の横から胸の前まで回す。


(わざとだよなー。胸当ててるの)


 そんなことを考えていたら右の頬をぺちぺちと軽く叩かれた。

 マイケルは「いいぜ。別に俺の能力はいつでも説明できるからな」と言いながら手甲を消して腕を組んだ。


(随分と、気に入られているね)


 俺の様子を見たウリエルは、ジト目でこちらを見ながらテレパシーで話しかけてきた。


(ああ、びっくらこいてる)


(それで、彼女に協力するんだね)


(ああ。この世界の人々の助けになるなら本望だ。それに、この戦いが非道なものなら介入する)


 テレパシーを送った俺は『聞こえているんだろ?サイコル』と頭の中に思い浮かべながら彼女の方へ目を向けた。

 それを受けた彼女は、ウインクしてから説明をし始めた。


「さぁてこれから説明を始めるよ。マイケル君も大まかな話は聞いていたかな?」


「ああ、クロノからな。たしか…この国を変えるんだったな?ただ、乗るかどうかは具体的な内容次第だ」


「そうだね。それでは具体的な話をしていこうか」


 彼女のメイドが、いつの間にか俺の隣に椅子を移動している。


「私の目的は内務卿の政策を変え税率の軽減を行うこと。さらにそれを、あまり血を流さずに行いたい。決行は明日。なんせチャンスがこのタイミングしかないからね」


「また、目標達成のためには①多忙なキャプラを説得して、②そこを妨害する他の勢力を止める必要がある」


 彼女は俺の目の前で、両手の人差し指を一本ずつ突き出しながら説明し始めた。

 サイコルのメイドは彼女の説明を卓上に広げた紙にまとめており、ウリエルはそれを眺めながら茶菓子をパクパクと食べ続けている、


「キャプラっていうのは保障局局長…じゃ伝わらないね。君たちを捕まえた金髪ダウナーなあの子のことだよ」


 俺と竜神が戦っていた際に、割り込んで俺たちを拘束した彼女だろう、と俺は思い至った。


「彼女だな。あの、鎖の魔法を使う。でも、大丈夫なのか?明らかに体勢側の人間だけど」


「万事心配なしだよ。あの子があちらに立っているのは、親族を人質に取られているからだし」


「なるほど……その人質を解放した上で交渉するんだな。『殴って、蹴って、はい蹂躙』しない時点で高評価だ」


「高評価ありがとう。マイケル君。そしてその通り。この作戦は必要なことの一つとして彼女の家族の安全の確保が挙げられるんだけど…話を戻そう。それで、私が貴方たちに協力して欲しいのは①のキャプラをテーブルに着かせるまでの協力と②だね」


「他の高官たちも家族を人質に取られているから、もちろん敵になる。私がキャプラを説得して内務卿との交渉を終えるまで、そういった勢力を足止めして欲しいんだ。詳しい作戦はこの話に乗ってくれたら話すよ」


「それじゃあ、1ついいか?」


「うん?どうしたの。クロノ?」


 俺の頭の上で説明し続ける彼女に顔を向けずに話しかけた。


「どうしてこんなことを考えたのか。その理由を知りたい」


「それは苦しんでいる人々を助けるため。これ以上の惨劇を起こさないため──なのは建前だね」


 彼女は途中でその言葉を放つ声色を変えた。


「私はさ。結界魔法と心読魔法がすごく得意なんだ。特に後者や厄介でさ。その人を見るだけで感情が理解できる。でも、別に私は潔癖じゃない。多少、負の感情があっても何ともないさ。…でも今のこの国は違う。明らかに人々の恨み辛みが伝播していっている。城下町はまだマシだけどね。郊外はひどいものだったろう?そして、今のタイミングならコレを変えられるかもしれない立場に私はいるんだ。そこを自覚したなら、やるしかないってワケ」


「そうか、なら、俺はこの話、受けよう」


(異論ないか?ウリエル)


「はい。私もこの話、乗ります」


 俺は彼女の理由を聞き終えてからすぐに、この話に乗ることにした。


「俺も、乗るよ。悪事の誘いじゃなさそうだしな」


「ありがとう。それじゃあ、全員参加、ということで。詳しい作戦を紹介するね」


 俺たちの言葉を聞いたサイコルは、目を閉じ俯いて、噛みしめるように喜んでいるようだ。

 俺の後頭部に彼女の顎がこつんと当たる。


「よし……よし……」


 少しの間、喜んでから俺の背後から右隣へ移動し椅子に腰かけると、メイドから無言でペンを渡された。


「必要なのは、キャプラを抑える役とそれを補佐する役だね。キャプラと内務卿への交渉と人質の保護は私がやるよ」


「君たちの仕事を進める上で最も注意すべきなのは、『軍務卿』。彼はこの国で最も強い二人の内の片割れだ」


 メイドは軍務卿の似顔絵らしきものを書き始めた。まるで、現代アートのような作品が作り上げられている。


「もう一人の『特別処刑人』は大丈夫。今は遠征中で遠くにいるから。さて、これからどんどん詰めていこう!」


 その後、俺たちは作戦会議を行っていく。


「クロノは世界を渡る力を使えるんだよね。だったら、保障局局長を移動させて逃げられないようにしてほしい。できれば、話し合いができる状態にもしてほしいな」


「分かった」


「それで、ウリエルちゃんとマイケル君はその援護をお願い。彼女は作戦決行のタイミングには局長室にいるはずだから、その周囲で私がキャプラの説得するまで守ってほしいんだ」


「「了解」」


「……どうしよう。終わっちゃった。うん……作戦は以上。さっき言った通り、作戦決行は明日。よろしくね」


 お開きが宣言された直後にサイコルに話しかける。


「サイコル、相談がある。今良いか?」


「ごめん。今はちょっと難しいかな。後で私の部屋でね♡」


 それを見たウリエルは、またジト目で俺のことを見ていた。

 マイケルはその様子を眺めてニヤニヤと笑っている。


「どういう関係なんだ?お前たち」


「なんだと思う?」


「分かんない……」


 マイケルの問いをサイコルが意味ありげに答えた後に、俺は俺自身の見解を答えた。






 数時間後、暇ができたとの連絡が入ったので、サイコルの部屋にお邪魔した。彼女の部屋の四面は全て本棚で構成されており、びっしりと本が詰まっている。

 そして、俺から見た部屋の一番奥にある椅子に彼女は足を組んで俺を待ち構えている。


「それで、どんな用かな。私にできることならなんでも」


「そうだな。とあることについて教えて欲しい。差し支えなければな」


「もちろん、どんなことでも手取り足取り、教えるよ」

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