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「・・・」
アラステア副団長が難しい顔をしています。マノンとヨハンも神妙に私の両脇に手を繋いで立ちました。
いつまでも待っていられませんからね、行きますよ。
「あのー。増幅の力は現れなかったのでは?」
「そのようだ」
「ああ」
全員で考え込んでいるアラステア副団長の言葉を待ちます。
「・・・不可解です。ライムント、もう一度測定を」
「分かった」
ぽんと置かれた手からは先程より柔らかくなった光が漏れます。色は変わりませんが、眩しいというか明るいですね。
「弱くなっているな」
「そうですか・・・」
ちょっとー。マノンとヨハンを見ないでよ。文句があるなら私にどうぞ!
「増幅ってそんなに幅があるもんか?」
「無いはずですが・・・。好感度は多少左右できますし、謎が多いのは確かです」
「ふーん。じゃあ、どっちかが吸い取れたってことか?」
騎士団の三人が相談しています。増幅の人がいなかったで良いんじゃないですか?それで。
「それは可能なのか?」
そこですよね。増幅の力の移行か、吸い取れるのか、強弱を操作できるのか。仕方が無い、マノンにもう一回試して貰いますか。
「マノン、もう一回やってくれる?」
大人よ、良く見ておくように。
「うん」
ぺかー。光ります。眩しいよ。さっきと同じくらい。
「同じくらい光っていますよね。ヨハンも良い?」
「うん」
ぴっかりん。光ってます。眩しい。はい、こちらも同様です。
「どうですか?」
「あなたも良いですか?」
ふっ。私もか。
ぺそ。
無反応。
「ふーむ」
これで満足ですかアラステア副団長。
「ライムントも、やってみろよ」
「ああ」
明るい。二回目と同じくらいですね。
「俺もやっていいか?」
自己申告のダンオットー副団長は結構光る。でも、白い中に四色ありますよ。凄い!これは凄いんじゃないですか?
「私も良いでしょうか?」
アラステア副団長も手を置きました。あ。一番暗い。暗いというと語弊がありますが、色がしっかりと判別できますね。水晶の中に色が浮かんでいる感じです。
「お前は変わんねえな」
「ええ。オットー、あなたは強くなっていませんか?」
「ああ。何でだ?」
ヨハンに視線が注がれます。はいはい。落ち着いて下さい。ヨハンが増幅する者ですか?では、もう一度私が。ヨハンと手を繋いでいますからね。
ぽん。はい。何も無し。
「増幅は魔法なのですか?」
無反応の水晶玉から手を離しながら聞いてみます。
「体質だろうとは言われていますが、ほとんどの増幅者は魔法が使えます」
うーん。全く使えないことは無かったと。じゃあ、ヨハンかなー。ヨハンなら私達が盾に取られないように気を付ければ、自分を守ることは出来そうです。
でもなー。ライムント団長の最初が気に掛かりますね。
「ライムントの最初は誰とも接触していなかったんですよね?」
「はい」
「・・・増幅者というのはやたらと聖なる力を使える者に好かれるのです」
「はあ」
「だから、あなたが怪しいのです。ピーターの反応もそのせいです」
「へえ」
対応が段々雑になってしまいましたよ。
「増幅者にいいように操られる者が多数、出た時期がありまして。まだ増幅者のことが知られていなかった時のことでした。聖なる力をよく輩出する家が幾つか没落したり、周りの反感を買ったりしました。貴重な力を持つ者が国外へ出て行ってしまう事態も発生しました。国にとっては至急対策をとるようになりましたが、増幅者のことは未だによく分かっていないのです」
あーあ。ピーターの事情聞いちゃった。けど、そこまで同情は無いかな。逆恨み?そして偏見だよね。